F1デジタルプレゼンターを務めるウィル・バクストンは、ホンダの2021年型F1パワーユニット「RA621H」はV6時代の覇者メルセデスを凌ぐF1におけるベストエンジンに仕上がっている可能性があると指摘し、今季のタイトル最有力候補はレッドブル・ホンダだと予想する。

F1公式YouTubeチャンネルの顔であり、キャリア20年を誇るイギリス人ジャーナリストは「テスト結果を元にした私見」であるとした上で、開幕バーレーンGPを前にした2021年シーズンのプレビュー番組の中で次のように述べ、ホンダが解き放った最新スペックを高く評価した。

「ホンダの新型パワーユニット（PU）は彼らがこれまでに製造した中でのベストだ。異論はあるかもしれないが、現時点ではF1で最高のエンジンになり得るという認識を持っている。数レース後には分かるだろう」

2021年末の撤退を前に、HRD Sakuraの技術力とオールホンダの総力を結集して生み出された新型PUは、パワーと信頼性向上のためにICE（内燃エンジン）、タービン、ERS（エネルギー回生システム）に変更が加えられた。

中でもICEに関しては、設計の根幹に関わるボアピッチを短く変更しバルブ開閉を司るカムシャフトの位置を下げるなどレイアウトが一新されており、エクソンモービル開発の新燃料との相乗効果による性能向上のほか、低重心・コンパクト化によって車体を含めたパッケージ全体の競争力改善が期待されている。

エイドリアン・ニューウェイ率いるミルトンキーンズのエンジニアリングチームが開発したシャシー「RB16B」も進化を遂げた。

ロー・レーキが持て囃される中、ニューウェイとテクニカル・ディレクターのピエール・ワシェは従来通りハイレーキ・コンセプトを継続する事を選び、昨季型「RB16」の弱点であった”予測不可能性”の改善に取り組んだ。実際にマシンをドライブしたドライバーによると、その努力は実を結んでいるようだ。

マックス・フェルスタッペンは「RB16」について、フロアやブレーキダクト、ディフューザー周りの規約変更に伴いダウンフォースが減少する中にあっても「クルマの感触は良く、挙動が予想できる」と述べ、改善の余地はあるとしながらも少なくとも一定程度は問題が解消したとの認識を示した。

ウィル・バクストンもまた「RB16B」が進化を遂げたと考えており、ドライバー達はあらゆる速度域のコーナーにおいて自信を以てステアリングを握っていたと述べ「センセーショナル」と評した。

「彼らのマシンはテストでコースに出るや否や驚異的な走りを見せ、路面にピタリと張り付いているようだった。ドライバー達はブレーキング、中高速コーナー、低速コーナーのいずれにおいても自信を持っていた」

「ロングランでも一貫性があり、燃料が軽い状態での高速走行でも常に上位につけていた」

「RB16Bは前季型マシンで問題となっていたエアロダイナミクスにおける欠陥の全てを克服しているように見える」

「現時点でネガティブな部分は見当たらない」

ウィル・バクストンはアレックス・アルボンに代わって新たにチームに加わったセルジオ・ペレスも「チームに上手く溶け込んでいる」として、メルセデスがチャンピオンシップ争いに加わる事は確かだとしながらも、レッドブル・ホンダがタイトル最有力候補だと主張した。

「ペレスはショートランでもロングランでも、マックスに匹敵していたように見える。要するにレッドブルは過去数年で最高のチームに仕上がっているという事だ」

「私はレッドブルが2021年のタイトル候補だと考えている。疑問の余地はない」