ノリス戴冠の陰に“譲った3点”―ピアストリが語った誇りと「彼はスーパーマンじゃない」来季への闘志、そしてパパイヤ論

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2025年F1最終戦アブダビGPを3位で終えたランド・ノリス(マクラーレン)は、わずか2ポイント差で自身初のタイトルをつかんだ。この薄氷を踏むような勝利は最終戦での攻防だけではなく、言うまでもなくシーズン全体の積み重ねによるものだ。

ただ、結果的にではあるが、シーズン中盤のイタリアGPで僚友オスカー・ピアストリが受け入れた「チームオーダー」が、数ヶ月後の今、決定的な意味を持つことになったのも事実だ。

レース後、マクラーレンのザク・ブラウンCEOは無線を通じてピアストリに万感の思いを伝えた。「君は最高のチームプレイヤーだ」と。

一方のピアストリは、史上35人目のF1ワールドチャンピオンとなったチームメイトに敬意を払いながらも「彼はスーパーマンになったわけじゃない」と語り、来季に向けた静かな闘志をのぞかせる。

数ヶ月越しの「アシスト」とパパイヤルールの是非

ピアストリは今季、誰よりも長い15戦にわたりポイントリーダーとしてシーズンを牽引してきた。8月末のオランダGP終了時点では、ノリスに対して34ポイントのリードを築いていた。だが、続くモンツァで流れが変わる。

チームはピアストリに、2位の座をノリスへ譲るよう指示を出した。ピアストリは明らかな不満を滲ませつつも、これに従った。この順位の入れ替えによってノリスが得た3ポイントがなければ、2ポイント差でのタイトル獲得は成立しなかった計算になる。

ブラウンがレース後の無線で何度も感謝を伝えたのは、シーズン全体を通してピアストリが献身的な姿勢を貫いたためだ。

パルクフェルメでザク・ブラウンCEOと抱き合うオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

パルクフェルメでザク・ブラウンCEOと抱き合うオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

マクラーレンは「パパイヤ・ルール」と呼ばれるチーム内の交戦規定を設け、2人のドライバーを競わせつつも制御する手法を採った。時に批判も浴びたが、ダブルタイトルを獲得した今、ピアストリはそれが正しかったと語る。

「僕らのレースのやり方が正しかったことの証だと思う。拮抗した2人のドライバーを抱えながら、両方のタイトルを争うのは簡単じゃない。でも、それは分かっていたことだ」

「時には緊張も走ったし、居心地の悪い瞬間もあった。でも、お互いに限界までプッシュし合うことで、僕もランドもより良いドライバーになれたと思う。最終的には良いことだったんだ」

「ランドはスーパーマンじゃない」

ノリスが王者となったことで、意識的であれ無意識であれ、来季はチームがノリスを優遇する展開も想像される。だがピアストリは、チーム内の力学が変化するとは考えていない。

「チャンピオンになったからといって、彼との関係性が変わったり、彼との争いが難しくなるとは思わない。何も変わらないと思うよ」

「彼は素晴らしいシーズンを過ごしたし、間違いなくチャンピオンにふさわしい。それでも彼は相変わらずランド・ノリスのままだ。スーパーマンになったわけじゃない。だから、何も変わらないと思う」

チャンピオンに輝いたランド・ノリスを表彰台で祝福するオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

チャンピオンに輝いたランド・ノリスを表彰台で祝福するオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

ピアストリは、来季もチームから対等な扱いを受けられると確信している。

「確かにランドは今年、本当に力強いシーズンを送ったし、最終的にはより良い仕事をした。それでもチームは今後も完全な公平性と平等性を維持してくれると思ってる。それが変わるとは全く思っていない」

誇りと教訓、ジュニアとF1タイトル争いの違い

チームメイトのランド・ノリスをリードするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

チームメイトのランド・ノリスをリードするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

アブダビではスタートでハードタイヤを選ぶ戦略的なギャンブルに打って出たものの、フェルスタッペンには及ばず2位フィニッシュ。タイトル獲得には13ポイント届かなかった。それでもピアストリは、自身の成長に確かな手応えを感じている。

「正直、かなり良かったと思う。今週末は出し切った。もちろん、少し違う結末を望んでいたのは事実だけど、今年はドライバーとして、そしてひとりの人間として、死ぬほど多くを学んだ一年だった」

「厳しい時でさえ、そこから多くを学べたし、将来もっと強くなるためにどうすべきかも理解できた。だから、少しは悔しい気持ちもあるけど、この一年を誇りに思えるし、将来に活かせる教訓もたくさん得たと思う」

レース前グリッドでマネージャーのマーク・ウェバーと話をするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

レース前グリッドでマネージャーのマーク・ウェバーと話をするオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

3年連続でトップジュニアカテゴリーを制してきたピアストリは、F1でのタイトル争いとの違いについて「抱く感情という観点では似ている」と語りつつ、主に2つの点で大きな差があると振り返る。

「違うのはシーズンの長さだね。僕が経験したジュニアカテゴリーで一番長かったのは10戦で、今年はその2倍半。乗り越えなきゃならない期間がまったく違う」

「それに懸けるものの重さも違う。ジュニアではもちろんタイトルを獲りたいし、自分がF1に値することを証明しようとする。でもマックス(フェルスタッペン)が良い例だけど、F1に相応しいことを証明するために必ずしもタイトルが必要なわけじゃない」

「でもF1では、目指すものはただひとつ、チャンピオンになることだけだ。そこはまったく違う部分だと思う。似ているところももちろんあるけどね」

ワールドチャンピオンに輝いたランド・ノリスの母シスカ・ノリスさんと抱き合うオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

ワールドチャンピオンに輝いたランド・ノリスの母シスカ・ノリスさんと抱き合うオスカー・ピアストリ(マクラーレン)、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)

激闘を終えたピアストリの視線は、すでに母国オーストラリアへ向けられている。

「もう一度、サマーブレイク(母国は南半球なので現在は夏)があるのはいいね。オーストラリアに帰って、家族や友だちに会い、毎年恒例の“久しぶり”と“じゃあまた”の挨拶を交わしてくるつもりだ」

「正直、レースから離れる時間を楽しみにしてる。すごく長くてタフなシーズンだったし、世界最速のクルマをドライブできるのは最高だけど、たまの休みって本当にありがたいんだ」

「できればクリケットも観に行きたいね。理想はメルボルンでのボクシング・デーだ。正直、その時まで勝負がもつれていてほしい気持ちと、そうじゃない気持ちが半々だけどね」

マクラーレンにタイトルをもたらした「最強のNo.2」は、来季、間違いなく「No.1」の座を奪いに来ることだろう。

ランド・ノリスのワールドチャンピオン獲得を喜ぶザク・ブラウンCEOとマクラーレンのチームメンバー、オスカー・ピアストリ、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of McLaren

ランド・ノリスのワールドチャンピオン獲得を喜ぶザク・ブラウンCEOとマクラーレンのチームメンバー、オスカー・ピアストリ、2025年12月7日F1アブダビGP決勝レース(ヤス・マリーナ・サーキット)


2025年F1最終第24戦アブダビGPでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が今季最多となる8勝目をポール・トゥ・ウインで飾ったが、ランド・ノリス(マクラーレン)が3位でフィニッシュし、自身初のワールドチャンピオンに輝いた。

史上最多の24戦となった2025年シーズンはアブダビでフィナーレを迎えた。新たな技術レギュレーションが導入される未知の2026年シーズンは、3月6日のオーストラリアGPで幕を開ける。

F1サーカスは決勝後のアブダビテストを経てウィンターブレイクに入るが、その休息は長くない。1月26日〜30日にはバルセロナで非公開の合同テストが行われ、2月には11日〜13日と18日〜20日の2回に分けて公式プレシーズンテストが実施される。

F1アブダビGP特集