「こういう年配」に発言の場を与えるべきではない、とハミルトン…ピケ、エクレストン、スチュワート発言を受け
ネルソン・ピケ(69歳)の人種差別発言、これを擁護するバーニー・エクレストン(91歳)、そして引退を勧告するジャッキー・スチュワート(83歳)。ルイス・ハミルトン(メルセデス)はこうした3名のような旧態依然とした価値観のままの老人達に発言の場を与えるべきではないと何度も繰り返し主張した。
3度のF1ワールドチャンピオンに輝いたピケがハミルトンを人種差別用語で表現した事を受け、F1界隈は一斉に非難する立場を強調した。だが、F1のかつてのドン、エクレストンは、騒ぎ立てるのは大げさだと仄めかし、更にはウクライナ侵略によって罪のない何千人もの人々の命を奪った張本人であるロシアのウラジーミル・プーチン大統領を称賛する発言を繰り返した。
また、同じく3度のF1タイトルを獲得したスチュワートは、新加入のチームメイト、ジョージ・ラッセルに対して全く歯が立たない様子のハミルトンについて「引き際が来た」「今、辞めて欲しい」と引退を勧告した。
F1第10戦イギリスGPを前にFIA主催の公式記者会見に臨んだハミルトンは、価値観のアップデートを行おうとしない「年配の声」にスポットライトが当たる状況に対して疑問を投げかけた。
ピケ、エクレストン、スチュワートという3名の「年配の声」について問われたハミルトンは「僕らはどうして、こういう年配に発言の場を与え続けているんだろうか」「彼らは時代にそぐわず、明らかに変化を望んでいない」と答えた。
「こういった差別や偏見というものは今日の世界では役に立たないどころか、むしろ多くの分断を生み出すだけだ」
「ミシェル・オバマ(アメリカ合衆国史上初のアフリカ系アメリカ人ファーストレディ)は『相手が低俗なら、我々は気高く生きましょう』と言ったけど、僕はこの言葉が大好きで、そうしていこうと思ってる」
「F1だけでなくメディア企業にも言える事だけど、毅然とした態度で以て、こういう人たちに発言の舞台を与えないようにする事が大切だと思う」
「目指している方向が真逆なんだ。ああいった人たちの声は今の僕らのスポーツを代弁するものじゃない」
「未来に目を向け、今の時代を代表する若い人たちに発言の場を提供し、僕らが目指す人物像や方向性を示す必要があると思う」
「つまりこれは一個人の問題でも、単なる言葉の使い方というだけの問題でもなく、もっと大きな視点で考えなければならない問題なんだ」
また、「エクレストンであれピケであれ、前戦以降のあらゆる発言に関して、旧体制に我慢できないといったようなところが見受けられますが…」と問われると「さっきも言ったけど、もうウンザリだ。だからこそ行動を起こさなきゃならないんだ」と返した。
エクレストンが例の発言を口にしたのは、イギリスのテレビネットワーク「ITV」の朝の情報番組「Good Morning Britain」にイビサ島からリモート出演した時の事だった。ハミルトンは同番組には「説明責任がある」として次のように続けた。
「一体それで何を得ようとしているのか、彼らの目的が何なのかは知らないけど、もし英国内に分断を生み出そうとしているのなら、これ以上は必要ない」
「何百万人もの人々が家を失い、何千人もの人々が殺されるような戦争の正当性を信じているような人を支持してるって事なんだろうか? 僕には理解できないね」
「もしも自分達が目指す場所や、そうありたいとする人物像に対して何も貢献できないのなら、彼らに場所を与えてはならない」
案の定、会見での質問はピケ発言に終始した。セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)やフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)、シャルル・ルクレール(フェラーリ)を含むライバル達は口々にハミルトンへの支持を表明した。
「サポートしてくれた全ての人たち、特にドライバーのみんなには心から感謝している」とハミルトンは語った。
「僕らの多くがオーストリアでの開幕戦で膝をついてから2年が経つけど、依然として課題は解決していない」
「僕は長年に渡って人種差別や批判を受ける側の人間だったし今もそうだ。否定的なこと、古めかしい物語、差別的なものや何かに晒されてきた。だがら、今回の事は特に目新しいものじゃないんだ」