ノリスが見据えた実利、快適リードも接触を繰り返してまでギャップを拡大した理由
マックス・フェルスタッペン(レッドブル)が「かなり孤独なレースだった」と振り返ったように、ランド・ノリス(マクラーレン)は2024年F1シンガポールGPで別次元の速さを発揮し、選手権リーダーに20秒もの大差をつけて今季3勝目を飾った。
圧勝の一方で、ノリスには幾つかピットウォールが頭を抱える瞬間があった。
29周目にはターン14でロックアップを喫し、あわやリタイヤかという場面を演じた。幸いにもフロントウイングに軽度の損傷を負ったのみで事なきを得たが、45周目にもターン10の壁を擦った。
既に快適なリードを築いていたにもかかわらず、ノリスは最終盤を除いてレース全体でプッシュし続けた。
ノリスは「危うい場面が何度かあった。中盤には何度かヒヤリとする瞬間もあったね」と振り返る。
「でも全体的にはうまくコントロールできたと思うし、クルマが最高に良かったから、全力でプッシュできた。レース中はずっと飛ばし続けていた。ちょっと落ち着つけたのは、最後になってからだった」
セーフティーリードを築いた後は、少しペースを落としても良かったのでは?との見方もあるだろう。ターン10での一件は、昨年大会でジョージ・ラッセル(メルセデス)がリタイアを喫したクラッシュを彷彿とさせるものであっただけに尚更だ。
実際、ノリスは「少しハードにプッシュしすぎたかもしれない」と認めるが、すべては「ギャップを広げるためだった。必要に応じてレース終盤にピットインして、ファステストラップを狙えるだけのウインドウを開けようと思っていた。ダニエル(リカルド)にそのチャンスを盗られたけどね」と説明した。
また、クラッシュしかけたのは集中力を失ったわけではなく、ラップダウン車両のダーティーエアーとタイヤの摩耗によって突如、「グリップとダウンフォースが少し低下」したことが原因だとも語った。
62周の全てでリードを刻んだノリスは、チャンピオンシップにおけるフェルスタッペンのリードを7ポイント削り、その差を52ポイントに縮めた。
シーズンは6レースと3スプリントを残しており、理論上、獲得できるポイントはまだ十分にあるが、フェルスタッペンはレッドブルの苦手コースを2位でフィニッシュした。さらにレッドブルは次戦アメリカGPでアップグレードを計画しており、逆転タイトルは依然として決して楽ではない。
「まだかなりのポイントを縮めなきゃならない。楽じゃないよ。相手はレッドブルで、しかもマックスだからね」とノリスは語る。
「去シーズン以降、史上最も支配的な組み合わせと相対しているわけで、僕が戦っているのは、F1史上最もタフな競争相手の一人なんだ」
「今は僕らの方がチームとして良い仕事をしている。僕のクルマ、僕らのクルマはレッドブルよりも速い。これはチームの素晴らしい仕事のおかげだ。頭をひねって新しいことに挑戦し、ミニDRSフラップなんかを開発してくれているからだ」
「これがゲームだし、僕らが戦っている相手もそういうことをしているわけで、だからこそ僕も実現に向けて全力で取り組んでいるんだ」