角田裕毅「ステイアウトで合意」固執が招いた転落、戦略的失敗を認めるアルファタウリ
入賞圏内を争いながらも最終15位に終わったF1第14戦オランダGP決勝を終えて角田裕毅(アルファタウリ)は、転落の原因となった第3スティントの戦略について、自身とチームとの間で「レース前に合意」していたものだと説明した。
ルイス・ハミルトン(メルセデス)に対する走行妨害により3グリッド降格の17番グリッドに着いた角田裕毅は、開始直後の豪雨に上手く対応。素早くインターに履き替えた事で、ピットストップの際に大きくタイムを失う場面がありつつもポイント圏内に浮上した。
その後インターからソフトに履き替えた後は、エステバン・オコン(アルピーヌ)とアレックス・アルボン(ウィリアムズ)に対しては追い抜きを許すも、ランド・ノリス(マクラーレン)を相手に見事な走りで順位を死守。72周のレースの42周目に8位を争っていた。
後退劇の始まりはその周の終わりの事だった。角田裕毅を追い抜きあぐねた後方のノリスがピットイン。フレッシュなソフトタイヤに履き替えた。
アウトラップ翌周のノリスと角田裕毅とのタイム差は1.675秒に達した。この時の両者のギャップは18秒。両者の間に並ぶ他車の存在を抜きにすると、11周で追いつかれる計算だ。
ノリスのアンダーカットを防ぐべく、角田裕毅の前方にいたオコンとアルボンが相次いでタイヤ交換に動く中、角田裕毅は事前の戦略に沿ってステイアウト。最後まで粘るアプローチを採った。これが結果的に裏目に出た。
使い古したソフトはペースが上がらず、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)、ジョージ・ラッセル(メルセデス)、アルボン、オコンに追い抜きを許すと、55周目にはノリス、ハミルトン、オスカー・ピアストリ(マクラーレン)の3台に抜かれてポイント圏外12番手にまで後退した。
この戦略について角田裕毅は「レース前にチームとの間で、ソフトタイヤでステイアウトするという戦略について合意しました。最後までいけると考えていました」と説明した。
「グリップはそれほど悪くなかったのですが、新品タイヤは僕らが思っていた以上のアドバンテージがあったため、最終的には報われませんでした」
車両パフォーマンス部門を率いるギヨーム・デゾトゥーは「彼が良いポジションにいたため、彼をステイアウトさせるという賭けに出たが、使い古したタイヤのせいでタイムとポジションを落としていった」として、戦略が「適切でなかった」と認めた。
この日のレースは雨により完全にリセットされた未知の路面でスタートし、その後は序盤の豪雨もあって路面が絶え間なく変化していく展開で、状況を読み取り臨機応変に対応していく姿勢が求められるものだった。開始直後とインターからソフトに替えた10周目の判断が、それにあたる素晴らしいものであっただけに第3スティントが悔やまれる。
デゾトゥーは「一連の判断を見直し、データを分析して、クルマとこの手の状況判断プロセスを改善していく」と誓った。
最終的に角田裕毅はソフトタイヤでの最長50周を記録した。
もはやピットに入ることすらできない状況の中、残り11周で恵みの雨が到来した。1周目にも突然の豪雨があった。角田裕毅は「雨が降ってきてピットインした方がよいと考えました。僕の判断に耳を傾け尊重してくれたチームには感謝しています」と語った。
赤旗により全車がインターミディエイトを装着。タイヤの面でライバルに対してイーブンの状況が生まれたが、12番手から臨んだ最後のスプリントはペースが上がらず、ニコ・ヒュルケンベルグ(ハース)に追い抜きを許した。
角田裕毅は「インターミディエイトでの最終スティントは十分なグリップが得られず、タイヤを温め温度を保つのに苦労しました。少しばかり異例なので調べてみる必要があります」と述べ、デゾトゥーは「ウォームアップが上手くいかず、グリップが低く、ラスト数周は厳しいものだった」と付け加えた。
結果、51周目のラッセルとの接触の責任を問われて5秒ペナルティを受け、13位フィニッシュの最終15位に終わった。失意の週末になった事は疑いないが、それでも得られるものはあると角田裕毅は言う。
「昨日の予選で自分たちのペースを発揮できなかったのは残念ですが、今日は懸命に戦い、決勝でもう少しばかりパフォーマンスを発揮できたので良かったと思います」
「レース序盤はスピードもあって、かなりの数のクルマからポジションを守るなど、何度かエキサイティングな瞬間がありましたので、それについては満足しています」
2023年F1オランダGP決勝レースでは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がポール・トゥ・ウインを飾り、2位にフェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)、3位表彰台にピエール・ガスリー(アルピーヌ)が滑り込む結果となった。
モンツァ・サーキットを舞台とする次戦イタリアGPは9月1日のフリー走行1で幕を開ける。