ニキータ・マゼピン激怒、”図々しい”シューマッハの「本性が出た」
9月4日(土)のF1オランダGP予選を20番手最下位で終えたハースのニキータ・マゼピンは、トラックポジションを巡る僚友ミック・シューマッハの”図々しい”行為に激怒した。
ハースの新人ドライバー達がリングの内外を問わずやり合うのは今回が初めてではなく、イモラやバクー、シルバーストーンでも同じ様に非難合戦を繰り広げている。
今回の対立の原因は予選Q1の最終アタックに際してのトラックポジションに関するものだった。
マゼピンは先行してピットレーンを後にコースに向かったが、その後シューマッハに追い抜かれる事となり、アウトラップの最終コーナーを前にシューマッハを抜き返そうとしたところ横並びとなってセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)の最終アタックを妨害する格好となった。
一件は審議となりセッション終了後、2人はチーム代表者と共に聴取に呼ばれたが、最終的にお咎めなしの裁定が下った。
スチュワードは妨害があった事を認めたものの、ベッテルの「あまりに多くのクルマが一箇所にいた」とのコメントを例に挙げ、当時の状況を考慮するとハース勢の動きは規約で禁止された「不必要な妨害」とは言えないとの判断を下した。
走行妨害が発生した当時、その周辺には少なくとも6台のマシンがスロー走行していた。いずれも時速50km程度で、対するベッテルは時速240kmほど。どうあがいても混乱必至の状況だった。
ロシア有数の大富豪を父に持つマゼピンは一件について、今回はチーム内の事前合意に基づき自身にトラックポジションを決める優先権があったものの、シューマッハが自分勝手にそれを覆したとの考えを示した。
また放送禁止用語を連発しながら、シューマッハが優先権を破ったのは今回が2回目であり「予選での最後のアタックを”故意に”台無しにされた」とも主張した。
「僕が嫌いなのは19番手を争う状況で図々しくあるような人間だ。そういう状況で現れるものは本性だと思っているし、僕はそういうものを大目に見たりはしない」
なぜシューマッハはチーム内のルールに反してマゼピンを追い抜いたのだろうか?
7度のF1ワールドチャンピオンを父に持つ22歳のドイツ人ドライバーは、タイヤの熱入れの観点からアウトラップを速くしたいと思い、チームの許可を得てオーバーテイクに動いたのだと説明した。
「ピットレーンを通過してタイヤの温度が下がってきたから、チームと話し合った上でアウトラップを速く走る事にした」
「そうしたらニキータが低速のアウトラップを走っていたため、僕はオーバーテイクの許可を要求し、OKを貰ってオーバーテイクした」
「タイヤに熱を入れるために彼より速いアウトラップが必要だということはFP3の時からハッキリしていた事なんだ」
「(Q1の)最初の2回のラップはターン13で殆どグリップがなかった。僕はもっと速いラップが必要だったけど、ニキータはそうじゃなかった。だからお願いしたんだよ」
「ニキータの邪魔をしようとしたわけじゃないし、彼の人生をむちゃくちゃしてやろうと思ったわけでもない」
「セバスチャンは…僕が最もブロックしたくないと思っている人だから、本当に申し訳なく思っている。アストンマーチンに対しても同じようにね」
実際シューマッハはチーム無線を通してレースエンジニアのゲイリー・ギャノンにマゼピンをパスして良いかどうかを尋ね、ターン3手前までとの条件付きで許可を得て、それに従っただけだった。
2人の対立についてチーム代表のギュンター・シュタイナーは、今年のハースが他のどのチームとも競争していないグリッド単独最下位に沈むチームである事の影響が多いとの考えを示し、今後も似たような状況が続く事を覚悟している様子を見せた。
「今年は特にだが、後方での戦いは難しいものなのだ。何しろ戦える唯一の相手はチームメイトなのだからね。我々が抱えているケースもそういう事なんだ」
2021年 F1オランダGP決勝レースは日本時間9月5日(日)22時にスタート。1周4,259mのザントフォールト・サーキットを72周する事でチャンピオンシップを争う。