
咆哮を上げるフェラーリ、モナコ好調の理由は何処に? “期待するな”の裏でポール狙い
2025年F1第8戦モナコGPのフリー走行3セッション全てを制したスクーデリア・フェラーリ。週末に先立ち、自らが苦戦を口にしていた低速コーナー主体のモンテカルロ市街地コースで、まさに”本来の速さ”を取り戻した跳ね馬の姿がそこにあった。
地元モナコ出身のシャルル・ルクレールが金曜日のFP1、FP2を連続制覇。だが、単純にトップタイムを記録しただけではない。フェラーリは全タイヤコンパウンド—ハード、ミディアム、ソフト—で最速ラップを刻んだのだ。
土曜日のFP3でもその勢いは止まらなかった。ルクレールが再びセッション最速を記録し、3セッション完全制覇という離れ業を成し遂げた。一体、何が起きているのか。
車高という名の呪縛からの解放
今回のパフォーマンス向上の核心は、車高セッティングの最適化にあると見られる。SF-25は極めて狭い作動領域を持つマシンだ。リアサスペンションとディフューザーの設計的制約により、高速と低速など様々な速度域が混在するサーキットにおいて、理想的な車高を追求することが難しい状況に置かれてきた。
だが、モンテカルロの特殊性がフェラーリに救いの手を差し伸べた。このコースは各コーナーの速度域が似通っているため、SF-25の弱点が露呈しにくく、結果として、マシン設計本来の性能を存分に発揮することができているようだ。
レッドブルのチーム代表クリスチャン・ホーナーは週末に先立ち、縁石やバンプの処理におけるSF-25の高い性能に言及し、フェラーリがモナコの市街地で咆哮を上げる可能性も十分にあるとの見方を示していた。
Courtesy Of Ferrari S.p.A.
パドックを並んで歩くスクーデリア・フェラーリのルイス・ハミルトンとシャルル・ルクレール、2025年5月22日(木) F1モナコGPプレビュー(モンテカルロ市街地コース)
諸刃の剣としてのSF-25特性
SF-25の特性を理解する上で重要なのは、その極端な敏感さだ。わずかな調整やコンディションの変化がパフォーマンスに劇的な影響を与える。特に車高変化に対する反応は異常なほど敏感で、数ミリの差が天と地ほどのパフォーマンス差を生み出す。
最適なウインドウに収まった時の速さは圧倒的だが、そこから外れた瞬間にパフォーマンスは急降下する。モナコでのフェラーリは、まさにこのウインドウの中心に位置している。
予選への不安材料
ただし、手放しで楽観視することはできない。フリー走行を通じてフェラーリが採用していたアプローチからは、燃料搭載量やエンジンモードの選択において、予選本番に近い条件を意図的に再現していた可能性が考えられる。
予選では、他のトップチームも本気モードへと切り替えてくるため、現在見られるパフォーマンス差が大幅に縮まる展開も十分にあり得る。
特にマクラーレンとレッドブルは、予選に向けて着実に仕上げてくると見られており、三つ巴の激戦が予想される。だが、その中心に位置するのは間違いなくフェラーリだろう。
なお、FP3終盤にクラッシュを喫したハミルトンについては、予選開始までにマシンの修復が完了する見込みだ。ノーズ、フロントウイング、右フロントサスペンション、加えて左右のサスペンションとギアボックスを含むリアエンド全体の交換作業が行われている。
狭くテクニカルなモナコの市街地コースで行われる予選では、ドライバーの技量とマシンのポテンシャルが完璧に噛み合った瞬間にのみ、勝利の女神が微笑む。果たして、跳ね馬の雄叫びは再びモンテカルロの空に響き渡るだろうか。