エルマノス・ロドリゲス・サーキットを走るフェルナンド・アロンソ
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マクラーレン・ホンダ、予想外の速さに安堵するも依然として劣勢不可避の厳しい姿勢 / F1メキシコGP《初日》

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マクラーレン・ホンダ解体まで残り3戦となるF1メキシコGP、チーム首脳陣は口を揃えて劣勢を予想していたが、グランプリ初日のフリー走行ではフェルナンド・アロンソが驚きの速さを見せた。現地金曜午前の1回目のフリー走行では8番手タイムでトップ10圏内に食い込み、午後の2回目のフリー走行では3強チームに次ぐ7番手とポジションを上げた。

初日を最速で締め括ったレッドブルのダニエル・リカルドとアロンソとのタイム差は僅かに0.707秒。思いの他の好成績にアロンソは「(6番手)ボッタスとは僅かコンマ2秒差だったから驚きの速さだよ」と上機嫌に評した。ホンダF1の主任エンジニアである中村聡もまた「アロンソのパフォーマンスには勇気づけられた」とのコメントを発表した。

標高2,200mに位置するエルマノス・ロドリゲス・サーキットは、海抜0m地点と比べて2割以上空気が薄い。そのためICE(所謂昔ながらのエンジン)の出力は制限され、それを補うべくターボチャージャーは通常より高い回転数での稼働を強いられる。エネルギー回生を担当するERSにとってのメキシコは、シーズン中最も過酷なコンディション。ホームストレートは1.314kmと長く、ここでの好タイムには十分なエンジンパワーが要求される。信頼性とパワーの両方で不安を抱えるホンダ製パワーユニットが劣勢を強いられるのは不可避と予想されていた。

予想外の好ポジションにも関わらず、マクラーレン率いるエリック・ブーリエは「このコースがチャレンジングな事に変わりない」と語り、依然として厳しい姿勢を見せている。その背景には、度重なるエンジントラブルと、それによって生じたグリッド降格ペナルティの存在が大きい。

スタジアムセクションを駆け抜けるMCL32
© Mclaren / スタジアムセクションを駆け抜けるMCL32

先のアメリカGPでMGU-Hの故障に見舞われ無念のリタイヤとなったフェルナンド・アロンソのエンジンは、メキシコGPに先立って全てのコンポーネントが交換された。これによってアロンソには日曜の決勝で35グリッド降格が見込まれている。アメリカGPでは無事完走したストフェル・バンドーンだが、チームは最終2戦での不要な信頼性トラブルを避けるため、苦戦予想のメキシコで前もってペナルティを消化する”戦略的PU交換”を実施した。

12基目ターボチャージャーとMGU-H、10基目のICE、9基目のMGU-K、そして7基目のESとCEが投入され、アロンソと同じく大規模なグリッド降格を覚悟でFP1に臨んだバンドーンであったが、交換したばかりの最新版PUにトラブルが発生、セッションの殆どをガレージで過ごし僅か3周の走行に留まった。タイム計測すら実施できず、ノータイム最下位という出だしであった。

中村によれば、バンドーンが走行できなかったのはリスクを避けるためにマシンからエンジンを下ろして調査したためだという。予防措置をとった結果、問題は軽微なものである事が判明、パワーユニットにダメージは発見されなかった。バンドーンの代わりとばかりにアロンソが奮闘、いくつかのエアロ相関テストを実施しチームに有益なデータを持ち帰った。

FP2に向けて、ホンダはプールしてあったベルギーGP仕様の旧型エンジンをバンドーンのマシンに搭載した。ブーリエによれば、再度新しいエンジンを新調したわけではないため、バンドーンのペナルティがこれ以上増える可能性はないという。バンドーンはFP2で32周を走り込んだが、砂埃舞う滑りやすい路面に苦労しタイムは15番手と冴えなかった。

2台ともが最後尾スタートとなるのは避ける術もないため、両マシンは予選ではなく決勝を見据えてのセットアップが模索された。アロンソによればまだ決勝での戦略は決定しておらず、タイヤ選択を中心に幾つかの戦略を評価した上で決定される事になるという。

決勝での順位挽回のカギを握るのはホームストレートでのオーバーテイクだが、フリー走行で記録された最高速度ではマクラーレン・ホンダが全20台中最も遅い2台となってしまった。1ストップ作戦が主流と見込まれており、ピットストップでのポジションアップにも限界がある。”驚きの速さ”で初日好発進となったものの、バンドーンとアロンソの決勝の見通しは明るくはない。

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