メルセデスF1、2020年型エンジン開発で足踏み「問題と格闘中」と責任者コーウェル
F1でのダブルタイトル7連覇を目指す王者メルセデスAMGは、2020年型のF1パワーユニット開発において「幾つかの小さな問題」に頭を悩ませており、いささか足踏み状態にあるようだ。
1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンがF1に導入された2014年以降、シルバーアローはエンジンパフォーマンスのベンチマークであり続けたが、開発が頭打ちになるにつれてフェラーリやホンダ、ルノーといったライバル勢が、一気にその差を縮めてきている。
不正疑惑が完全に払拭されたとは言い難いが、昨年のフェラーリはパワーユニット開発で強大な成果を示し、メルセデスを抜き去ってPU性能でトップに躍り出たと評価する声は少なくない。一方のホンダも、トロロッソが自チームを”モルモット”=実験場として提供してくれた事もあり、レッドブルとの提携初年度で目覚ましい躍進を遂げてみせた。
2020年の新車「W11」の発表を10日後に控えた2月4日、メルセデスAMGのパワーユニット部門を率いるアンディ・コーウェルは、来る3月15日に開幕を迎える新シーズンに向けての開発の進捗状況を公表し、幾つかの課題に直面している事を明かした。
「ブリックスワースでは今現在、様々な事が行われており、ERS(ハイブリッド)及び内燃機関(ICE)の双方を含むパワーユニット全体に数多くの改善を施している」とアンディ・コーウェル。
「全てをまとめ上げるために、我々は相変わらず幾つかの小さな問題と戦っている。そのため、適切なスペックを構築して長距離稼働のテストを行い、チームがクルマを始動できるようにパワーユニットを供給するためには、まだ多くの作業が必要だ」
「その後は、実際のトラック上でのテストに向けてハードウェアの準備を整えて、2月14日に新車を発表し、3台のマシン(メルセデス、レーシングポイント、ウィリアムズ)と共にバルセロナに向かい、6日間のテストに臨む。在庫確保のために、既に大量の部品が製造されており、今まさに組み立て作業が行われている」
「そのため今は本当に多忙だ。僅かでもパフォーマンスを向上させ、信頼性を確保するために努力を重ね、大量のハードウェアを世界の裏側にまで届けなければならないからね」
エンジン性能を引き上げるという現状改善の試みにおいて、課題がない事の方が奇跡的である事を考えれば、メルセデスが「幾つかの小さな問題」と戦っているという事実は、ネガティブでもポジティブでもなく極自然と言えようが、徐々に追い詰められつつある状況の中でのプレッシャーが、チャンピオンチームの開発にどのように影響するかは興味深い。