メルセデスのモータースポーツ責任者を務めるトト・ウォルフ
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メルセデスF1、ベッテルのフェラーリ離脱は「当然無視できない」

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メルセデスAMGのトト・ウォルフ代表は、4度のF1ワールドチャンピオンであるセバスチャン・ベッテルがスクーデリア・フェラーリを離脱するという状況は「当然無視できない」として、現行ラインナップの維持が優先事項としながらも、2021年に向けての獲得の可能性はゼロではないと主張した。

イタリアの真紅を纏う伝説的チームは12日(火)、今季末で満了を迎えるベッテルとの契約交渉が失敗に終わった事を明らかにした。ミハエル・シューマッハが築き上げた黄金時代の再現を胸に、2015年に跳馬へと移籍したベッテルの夢は、叶わぬままに潰えようとしている。

蜜月時代の崩壊は昨年始まった。ベッテルはドライバーズランキングで5位に留まり、新進気鋭のチームメイト、22歳のシャルル・ルクレールに先行を許した。シーズン閉幕後のクリスマスに、フェラーリがルクレールとの契約を2024年末まで延長した事が決定的に響いた。マラネッロはルクレールを中心にチーム作りを進めていく事を決めた。

後任として有力視されているのはカルロス・サインツ(マクラーレン)、ダニエル・リカルド(ルノー)、アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)の3名で、ベッテルにはマクラーレンとルノーからオファーが寄せられているとも噂されているが、既に世界の頂点を掴んだドライバーが首を縦に振るような特段の理由は見当たらない。

古巣レッドブル・レーシングは復帰の可能性を除外しているため、ベッテルにとって満足たり得る唯一の移籍先はメルセデスと言えるが、今年7連覇を目指すチャンピオンチームの名は取り沙汰されていない。だがトト・ウォルフ代表は12日(火)にドイツ通信社のインタビューに応じ、ベッテル獲得の可能性について次のように語った。

「セバスチャンは偉大なドライバーというだけでなく優れた人格者であり、あらゆるF1チームにとっての財産だ。将来を検討するに際して、我々はまず第一に現在のメルセデスドライバーにコミットしているが、当然今回の出来事は無視できない」

ルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスの契約は共に今シーズン末までとなっており、理論的にはシルバーアローのシートは2つともが空いている。唯でさえF1のドライバーマーケットは流動的かつ不確実であり、新型コロナウイルスのパンデミックが状況を更に複雑にしている事を踏まえれば、驚きの人事発表がないとは限らないものの、先のトト・ウォルフの発言を重要視すべき積極的な材料は今のところ確認できない。

ハミルトンは2021年以降もメルセデスに残留すると予想されているため、考えられるシナリオとしては、これまで単年契約の更新でシートを繋いできたボッタスとの交代だろう。仮にハミルトンが心変わりして、フェラーリへの移籍を選ぶような事があれば、ベッテルがその後釜に収まるという事もあるかもしれない。

コロナウイルスを巡る危機的状況をきっかけに、ベッテルは一度しかない自分の人生の最優先事項を見つめ直し、時間をかけて将来を熟考するとしている。2021年のF1は、1990年以来初めてドイツ人ドライバー不在のシーズンを過ごす可能性もある。