
F1シンガポールGPで「遅いメルセデス」を駆るのはラッセルか、アントネッリか? エンジン故障のツケはまだ終わらない
メルセデスは2026年F1第17戦シンガポールGPで、2台のマシンを使って新旧2つのパッケージを比較検証する。「遅いW17」をドライブすることになるのは、旧仕様に戻すジョージ・ラッセルか、最新パッケージを継続使用するアンドレア・キミ・アントネッリか。
前戦でのリタイヤによりタイトル争いで大きく後退したラッセルは、アップグレード投入前の旧仕様に戻す。この決定についてラッセルは、パワーユニット(PU)の交換に伴うグリッド降格を踏まえ、「完全に考えるまでもない選択だった」と語った。
マレーシアで開催された第16戦バーレーンGPでラッセルは、レース終盤のエンジン故障によってリタイヤを余儀なくされた。この影響でシンガポールでは、PU交換に伴うグリッド降格ペナルティを受け、後方からスタートする。
優勢は新仕様のアントネッリ?
ラッセルはシンガポールGPの開幕を翌日に控えた10月8日(木)、マシンの仕様を分けてテストを行うアイデアを、前戦の決勝前に自ら提案していたと説明した。
「実は、日曜のレース前から僕の方からこの話を持ちかけていたんだ」とラッセルは明かした。
「トラブルが起きたことで、迷うような話じゃなくなった。レース前の時点では、やるかどうか五分五分だったけど、僕はその時から賛成寄りだった。でも今となっては、まったく迷う余地がない」
ラッセルが使用するのは、第15戦アゼルバイジャンGPで使用したパッケージだ。バクー市街地コースでラッセルは、このスペックでポール・トゥ・ウインを飾った。
メルセデスはその翌戦、5月のカナダGP以来となる大規模なアップグレードを投入。1周あたり0.3秒の改善を見込んでいたものの、結果は散々なものだった。
シミュレーター上では前進が確認されていたものの、いざコースに持ち込んだW17は予想外の挙動を示した。今季を通じて保ってきたストレートでの優位性は失われ、低速コーナーでも苦戦。アントネッリは2位で完走したが、優勝したマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を脅かすことは一度もできなかった。
一方のラッセルは、チェッカーフラッグ目前まで3位を走行していたものの、リタイヤを余儀なくされた。これにより、ドライバーズ選手権で首位アントネッリとの差は84ポイントまで拡大した。
Courtesy Of Mercedes-Benz Grand Prix Ltd.
ヘルメットを着用しグローブを手にピットエリアを歩くリタイア後のジョージ・ラッセル(メルセデス)、2026年10月4日(日) F1バーレーンGP決勝(セパン・インターナショナル・サーキット)
なお、アントネッリによれば、スプリント形式が採用されるため、仮にラッセルの旧仕様の方が高い競争力を示したとしても、週末の途中で旧仕様に戻す選択肢はないという。アントネッリのマシンには、セパンでの投入が見送られた新しいフロントウイングも装着される。
セパン・インターナショナル・サーキットは路面が著しく荒く、気温も高い。想定外の挙動に苦戦したのはメルセデスだけではなかった。一方でレッドブルだけは、これまでの勢力図から外れるほどの優れたパフォーマンスを発揮した。
ラッセルはマレーシアでの低迷について、コース特有のものだったと「かなり確信している」と述べた。
「ペースという観点で今季これまでの他チームとの関係に比べて、レッドブルは明らかにいつも以上の力を発揮していた。僕らのペースをマクラーレンやフェラーリのペースと比べると、これまでと比較してそれほど大きくは違っていなかった。完全に外していたわけじゃない」
ラッセル、残りのシーズンで再び降格へ
ラッセルは今季中にもう一度、PU交換によるペナルティを受ける見込みだ。メルセデスは当初、追加開発・アップグレード機会制度(ADUO)を利用した改良型PUの準備が整った段階で今季最後の交換を行い、ペナルティを受ける計画だった。
だが、前戦でのトラブルにより、その計画は完全に破綻した。
「残りは7戦ある。残念ながらこれは、想定されているエンジンの寿命より長い。つまり、次戦から最終戦までの何処かで、もう一度ペナルティを受けることになる」とラッセルは語った。
2023年のレイアウト変更により、以前よりオーバーテイクの機会が増加したとはいえ、マリーナベイ市街地コースはシーズン終盤戦の中で最も追い抜きが困難なコースだ。
実際、レイアウト変更後もポールポジション以外の位置から優勝したドライバーはおらず、ラッセル自身も「シーズン全体を通して見れば、ペナルティを受ける場所としては、ここはたぶんモナコに次いで下から2番目だろうね」と認めている。