「意図的」との陰謀論、フェルスタッペン vs オコンの接触事故に外野が白熱
ブラジルGPで発生したマックス・フェルスタッペン(Red Bull)とエステバン・オコン(Force India)の接触事故は、FIA計量ガレージ内において小突き合いの激しい口論へと発展したが、外野はこれをさらに助長。陰謀論まで飛び出している。
レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、2台の接触事故が発生したのは、”オコンがメルセデス系のドライバーだから”と指摘。フェルスタッペンから勝利を奪い去る事によって、メルセデスの勝利とタイトル獲得をほう助し、上司のご機嫌取りをしたと考えているようだ。
「2020年にシートを約束されているメルセデスのドライバーが、ラップリーダーにクラッシュしたのだ。信じがたい」とマルコ。ドイツ紙に対してオコンの事を”2020年にシートを約束されているメルセデスのドライバー”と表現。燃料を投下した。「それにも関わらず、このバカ者に10秒ペナルティだけとは信じられない。私なら出場停止処分を出しただろう」
マルコの過激な発言に対し、フォース・インディアのオトマー・サフナウアー代表はただの陰謀論に過ぎないと一蹴。オコンは単にラップバック(周回遅れから同一周回に復帰)しようとしていただけであり、それはルール上認められていることで、オコンにはその権利があったと主張する。
「陰謀論だ」とサフナウアー。「あの動きが2020年のシートを狙ってのものであるはずがない。絶対にね」
「エステバンは無線で、フェルスタッペンよりも自分の方が速いからラップバックしてきても良いかを聞いてきた。我々は”良いぞ、前に出ろ”と伝えた。彼の方が7・8周分タイヤ的に有利だったしね」
「1周あたりコンマ5秒のアドバンテージがある場合、6周だと3秒になる。我々も他のマシンと争う立場なんだ。レースリーダーと言えども、その後ろでボヤボヤしてるわけにはいかない。自分たちのレースを争う以上、そうする必要があった」
メルセデスのトト・ウォルフ代表も「Dr.マルコはそういったモノの見方をするようだが、私はそれに関わるつもりはない」とコメント。”そういったレベルの話に付き合うつもりはない”と、呆れた様子を見せている。
F1に限らずあらゆる分野で陰謀論は常に人気のトピックスだが、F1においては特にセンシティブだ。2008年のF1シンガポールGPでの一件は、関係者やファンに疑う心を植え付けた。そう、いわゆるクラッシュゲートだ。
予選後方に沈んだルノー。フラビオ・ブリアトーレ代表らチーム上層部は、フェルナンド・アロンソを勝たせるためにネルソン・ピケJr.に対して意図的にクラッシュするよう強要。15番グリッドスタートのアロンソは、演出された劇的なタイミングでのクラッシュによって、逆転優勝を飾った。
事の真相は翌年に公に暴かれ、事件を主導したブリアトーレと、技術上級職を務めていたパット・シモンズはチーム離脱。F1とFIA国際自動車連盟が管轄するイベントからの追放という形で幕引きを迎えた。
サフナウアーが説明するように、同一周回を回復させるべくラップリーダーをオーバーテイクする事はルール上問題ない。問題は接触事故の責任を作ってしまったという事だけであり、この点に関してはFIAはレース中のペナルティとしても最も重い10秒のストップ・アンド・ゴーを科している。
「自分にはあのコーナーでの主導権があった」として自身の走行を正当化していたオコンは、事件発生の数時間に自身のSNSを更新。フェルスタッペンに対して謝罪こそしないもの、心境を推し量る趣旨のコメントを添えて、一定程度寄り添う姿勢を見せた。
「マックスにとっては残念な結果になってしまった。周回遅れのマシンとクラッシュするなんて滅多に起こるものじゃないからね」
「でも僕の側の言い分も聞いて欲しい。僕の方がフレッシュなタイヤを履いており彼よりも速かったから、ラップを戻すよう話をされた。もちろんこんな結末を望んじゃいないけど、残念な事にインシデントになってしまった」
「(ストップ・アンド・ゴーについての)FIAの裁定を尊重してる。でも、自分の方が速い場合はラップする事が許されている。今回のレースで僕はターン2の所で7回もオーバーテイクしてるんだ。全部かなりタイトなバトルだったけど、フェアだった」
オコンは来季ウィリアムズのシートが得られない場合、来年はF1浪人として日々を過ごす事になるが、メルセデスからは2020年のシートが約束された立場にある。それが本家メルセデスなのか、フォース・インディアなのか、はたまたウィリアムズなのかは今後決定するものと思われるが、今回の件がオコンとって追い風になるか向かい風になるかは抜きにして、一定の影響を与える事は間違いないだろう。