ウィリアムズのニコラス・ラティフィ、2021年12月10日F1アブダビGPにて
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ラティフィ、アブダビ決戦での事故を経て殺害予告「誰かの役に立てれば…」行き過ぎたSNSの誹謗中傷を非難

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ウィリアムズのニコラス・ラティフィは2021年シーズンのタイトル争いを決定づける事となったF1最終第22戦アブダビGPでのクラッシュの件で、ソーシャルメディアを通して殺害予告を受けたことを明かした。

ラティフィは15位争いをしていたレース終盤に、ミック・シューマッハとの攻防の最中に壁に激突。セーフティーカーが導入された事でマックス・フェルスタッペンとルイス・ハミルトンのタイトル争いの流れが一変した。

FIAレースディレクターを務めるマイケル・マシは残り1周でレースを再開。フェルスタッペンがハミルトンを抜き去りトップチェッカーを受け、グランプリでの勝利と大逆転ドライバーズチャンピオンを手にした。

ヤス・マリーナでの物議のレースから9日を経てラティフィは12月21日(火)、レース後にネットで「憎しみ、嫌がらせ、殺害予告」を受けた事、そして自身にとって「最も身近な人たち」も同様に過激な誹謗中傷を受けた事を明かした。

レース直後にラティフィのソーシャルメディア・アカウントには、公開・非公開のものを合わせて「何千ものメッセージ」が寄せられた。曰く「ほとんどが支持してくれるものだったけど、憎しみや嫌がらせも多くあった」と言う。

ラティフィにとっては「無視する」のも一つの選択であったが、ソーシャルメディアが抱える「より大きな問題」解決の一助になればとの想いから、今回のメッセージ発表へと至った。

「ネット上のいじめや、それが人々にもたらす深刻な影響について、もう一度話し合うきっかけになればと思い、自分の考えを明らかにすることにした」とラティフィ。

「ソーシャルメディアを利用して憎しみや嫌がらせ、暴力による脅しと言った内容のメッセージで誰かを攻撃するのは余りに酷い事で、僕が声を大にして言いたいのはこういう事だ」

「チェッカーフラッグが振られた時点で、ソーシャルメディア上でどういう反応があるのかは予想できた。スマートフォンからInstagramとTwitterを削除した方が良いと思った事自体が、ネットの世界の残酷さを物語っている」

「実際に憎しみや嫌がらせ、脅迫があった。でもこれが今の僕らが生きている世界の厳しい現実であって、僕は特に驚かなかった。世界を舞台に活躍するスポーツ選手は誰もが皆、自分達がすごく厳しい目で見られていることを知っているし、時としてこういう事も起きる」

「でも色んなスポーツで何度も目にしてきたように、悪いタイミングでのインシデントは物事を必要以上に大きくしてしまう。そして、そのスポーツのいわゆる「ファン」と呼ばれる人達の中に最悪のものをもたらす」

「僕がショックを受けたのはヘイトや嫌がらせ、更には殺害の脅迫といったメッセージのトーンが極端だった事だ」

「一件を振り返って僕がリタイヤについて本当に謝罪する必要があったのは、僕のチームに対してだけだった。僕はレース終了直後にそうした。それ以外のことは全て、僕の手に負えるものじゃなかった」

「残りの周回数が少ない中、どうでも良いポジションを争っていたと言う人もいたけど、僕は勝利や表彰台、ポイント、そして仮に最下位争いをしていたとしても、チェッカーフラッグが振られるまで常に全力を尽くす」

「この点、僕はグリッド上の他の全てのドライバーと同じだ。これについて理解していない、あるいは同意しない人がいても、それはそれで構わない。誰もが自分の意見を持つべきだからね」

「でもこういう意見を通して、僕だけでじゃなく、僕の身近な人たちに対して憎しみや嫌がらせ、脅威を煽るようは人は、このスポーツの本当のファンじゃない」

「幸いにも僕は、あるがままの自分でいる事に十分に満足しているし、この世界に長くいるから、どんなネガティブな意見も上手く受け流すことができる。でもネガティブなコメントは常に目立ってしまうし、時には100個ものポジティブなコメントをかき消してしまうほどだと思うのは僕だけじゃないはずだ」

「人は各々が自分の意見を持っている。それで構わない。面の皮が厚い事はアスリートにとって重要な要素の一つだし、特に常に何かと詮索されるような立場であれば尚更だ」

「でも先週、僕が受けたコメントの多くは途方もなく過激なものだった。これと同じレベルの罵詈雑言が自分に向けられたら、他の人がどう思うかが心配だ。誰も少数派の意見に惑わされるべきじゃない」

「先週の一件のおかげで、こうした事が起きないように協力すること、そしてこういう被害に遭った人たちをサポートすることの重要性を実感した」

「僕にこういう態度をとった人たちを説得し、そのやり方を変えさせる事はできないだろうし、このメッセージすらをも僕への攻撃の材料にしようとするかもしれないけど、こういう行動に警鐘を鳴らし、沈黙しない事が重要だと思う」

「こうした状況にも関わらず僕を支えてくれたファンのみんな、そして関係者のみんなに心からお礼を言いたい。たくさんのメッセージを読ませて貰った。本当に感謝してる。こんなにも多くの人達に支えられている事を実感できて嬉しい」

「スポーツには競争がつきものだ。でもそれは人と人を結びつけるものであって、人と人とを引き離すものであってはならないと思う。僕がこうして自分の考えを伝え、行動する必要性を強調する事が誰かの役に立てば嬉しい。たとえそれが一人であったとしても、それだけの価値がある」

ラティフィのメッセージに対しては、メルセデスを含むF1チームやドライバーの多くが支持を表明している。

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