マクラーレン・ホンダのドライバー及びスタッフの集合写真
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勝算は如何に?大きな重圧の中で”最後のF1日本GP”に挑むマクラーレン・ホンダ

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10月6日(金)から3日間の日程で行われるF1日本GP、今季限りで離別するマクラーレン・ホンダにとっては、3度目にして最後の母国レースとなる。直前の2戦でストフェル・バンドーンが7位入賞を果たしチームは勢いづいているものの、プロジェクトを率いる長谷川祐介は、苦手とする日本GPに向けて大きな重圧の中にいる。

「前戦マレーシアではチームにとって前向きな結果を得ることが出来ました。勢いそのままに、我々マクラーレン・ホンダは母国グランプリである日本は鈴鹿サーキットに向かいます。日本のファンの声援にはいつも力づけられています。久しぶりにホームに戻れると思うと安心しますね。ですが一方で、今年こそは良いレースを見せなくては…という大きなプレッシャーも感じています」

自らの本拠地”鈴鹿”を不得意とするホンダ

過去2年間の日本グランプリでの成績は、お世辞にも芳しいものとは言えないものだった。復帰初年度となる2015年はフェルナンド・アロンソが11位でジェンソン・バトンが14位、昨年は16位と18位、いずれもポイント圏外でレースを終えている。鈴鹿サーキットはホンダが1962年に建設した本田技研工業のモータースポーツの本拠地だ。

2016年のF1日本GPにて
© HONDA 2016年のF1日本GP

ホンダが鈴鹿を不得意にしている理由の1つには、エンジン出力不足が挙げられる。1周約5kmのコースには計18のコーナーが備わっている。コーナー数が多ければ、それだけエンジン全開で走る距離が短くなるのが一般的だが、鈴鹿には”130R”や”まっちゃんコーナー”等の全開またはそれに近いレベルで走行可能な超高速コーナーが存在するため、1周の70%弱がエンジン全開区間となる。これはシーズンの平均よりも30%近くも高い数値だ。

苦戦を予想するチーム関係者

コース特性もさる事ながら、今年のF1マシンはタイヤ幅が広くなったことで制動力とグリップ力が大幅に向上している。これにより、マシンはコーナーの手前ギリギリの所まで攻めることが可能となり、結果的にアクセルベタ踏み状態が長くなる傾向にある。

バンドーンは鈴鹿のパワーハングリーな特性に言及し、マレーシアでのレースよりも遥かに難しい戦いを強いられるだろうと予想している。また、マクラーレンのチーム代表を務めるエリック・ブーリエも「鈴鹿が簡単なサーキットではないことは分かっている」と語り、難しいレースになることを認めている。

日本GPでのホンダの勝算は?

エンジン出力の向上が望めないならば、ホンダは今年の鈴鹿をどう攻略するつもりなのだろうか?勝算はあるのだろうか?長谷川は、ドライバビリティを重視したエンジンのセットアップに注力する予定だと明かす。

「エンジニアにとっては、マシンセッティングに頭を悩ませるサーキットですが、大きなやりがいを感じることのできるコースでもあります。マシンバランスが重要になるコースですので、ドライバビリティーを重視したエンジンの設定が重要となります」

長谷川祐介
© HONDA

ラップタイムを左右する”S字”

世界に名だたるテクニカルなコーナーである”S字”を有するセクター1は、右へ左へとリズムよくマシンを操る事が速く走るためのポイントとなる。これを可能にするには、ドライバーが意のままに車を操れることが必要不可欠だ。意図しないところで加速したり、加速度が鈍ったりしてしまうようでは、限界まで攻めることは出来ない。

鈴鹿サーキットのS字コーナー
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鈴鹿のラップタイム短縮の鍵はS字の攻略次第と言われており、S字区間直前の2コーナーを如何に高い速度で通過し立ち上げるかが重要となる。2コーナーは4速160km/h程で駆け抜ける中速コーナー、マクラーレンが自信を持っている領域だ。ブーリエは「セクター1の流れなどテクニカルセクションも存在しますから、そこでは強さを見せられると思います」と自信をみせる。

とは言え、MCL32が得意とするのは中速というよりも低速コーナー、2コーナーは元よりS字セクションの各コーナーは時速250km/hの高速の部類に属している。ホンダが投入した最新型パワーユニット3.7は、低速からの立ち上がり性能は向上しているものの、中高速領域での伸びはイマイチ。総合的に考えて、メルセデス、フェラーリ、レッドブルの3強よりも上のポジションは難しく、上手くいって7・8番手というのが現実的な目標となる。


苦難の3年目を過ごすだけでなく、チーム解体という残念な報告とともに母国のファンの前に立つことになる長谷川にとって、その胸の内は計り知れない。

「今年は、マクラーレン・ホンダとして最後の鈴鹿となります。個人的にも今回のレースに対して強い想いを抱いていますので、何とかして皆さんの記憶に残るようなレースにしたいと思っています」

「記録に残る」と言い切れずに”記憶”という他なかった長谷川、果たしてマクラーレン・ホンダはお膝元鈴鹿で有終の美を飾ることができるだろうか?2017年第16戦F1日本GPは、10月6日(金)10時からのフリー走行で幕を開ける。

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