皮肉たっぷりの「現金は王様」発言…ハミルトンではなくベッテルの意見だった

F1オーストラリアGP FIA記者会見に参加したニコラス・ラティフィ、セバスチャン・ベッテル、ルイス・ハミルトン、ダニエル・リカルドcopyright RENAULT SPORT

いざこざの末にフリー走行開始2時間前になって中止が発表されたF1オーストラリアGPでは、人命軽視の商業主義を皮肉った「Cash is King(現金は王様)」のフレーズが大きな関心を集めたが、これはルイス・ハミルトンではなくセバスチャン・ベッテルの意見であったようだ。

「キャッシュ・イズ・キング」はビジネスや投資ポートフォリオを分析する際に使われる表現で、財務体質の健全性におけるキャッシュフローの重要性を説いたものだが、メルボルンの木曜プレスカンファレンスでのそれは「世の中で最も支配的な力を持っているのはお金。一番大事なのは金」という批判的な意味で理解された。

感染の温床となる可能性があったにも関わらず、現地プロモーターのオーストラリアGPコーポレーション(AGPC)もF1も共に、レースの開催を熱望していた。だが実際には、レースを開催しない事による経済的損失を恐れたがための熱望であったと言った方が的確だろう。

だからこその「Cash is King」であったわけだが、紙面を賑わせた内容とは異なりBBCのチーフF1ライターのアンドリュー・ベンソンは、実際にはこれを口にしたのはルイス・ハミルトンではなくセバスチャン・ベッテルだったと明かした。報道ではハミルトンの発言としてクローズアップされていた。

先の2人に加えてダニエル・リカルドとニコラス・ラティフィが参加した会見では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るう中でレースが開催される事について質問がフロアから飛んだ。アンドリュー・ベンソンが言うには、ベッテルがまず先に「Cash is King」と口にしたものの、マイクがこれを拾えなかったためにハミルトンがベッテルの発言をそのまま繰り返したのだという。

違和感はあった。「Cash is King」というド・ストレートさはハミルトンの意見とは思えなかった。

近年でこそSNSを通して政治的なメッセージを発する事はあるものの、そもそもハミルトンは常に率直に意見を口にするタイプ、あるいは自身の考えに絶対的な自信を持つタイプではない(と思う)。レーシングドライバーとして圧倒的な才能と実力を持ちながらも、ドライビング以外のテーマになると周囲の空気や意見に敏感なキャラクターが魅力的でもある。

ましてや面と向かっての質疑の中で、あのような痛烈な皮肉をとっさに口にする、あるいは口にできるドライバーではない。事実ハミルトンは会見でよく「何と言って良いのか分からない」という表現を口にする。

この時も「Cash is king … I don’t know. Honestly, I don’t know. I can’t add much more to it.」と述べ、「現金は王様だからね」と鋭い言葉を口にしながらも、その後に続いたのは「分からない。正直よく分からないよ。僕にはそれ以上の事は何も言えない」であった。前者と後者はあまりにも別物で、同一人物の発言とは思えなかった。

「Cash is King」という見識溢れる発言は大きな話題と関心を呼んだ。グランプリ中止発表後に行われたF1およびAGPC首脳陣の会見でもこの発言が引き合いに出され、チェイス・ケアリーF1最高経営責任者は「金が支配的なのであれば中止を決断してはいない」との反論を強いられた。

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