2019年インディカー・シリーズ第5戦インディカーGP決勝開始直後のホームストレッチ
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最大出力900馬力…インディカー、2022年よりハイブリッドエンジンを導入。ホンダとシボレー続投

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インディカー・シリーズは、2022年シーズンより運動エネルギーを回生して動力とするハイブリッドエンジンを導入する事を発表した。ハイブリッドシステムは共通パーツとして供給され、ホンダとシボレーが製造する各々の内燃機関と合わせてマシンに搭載される。

参戦マニュファクチャラー及びチームが、長期に安定してシリーズへと参戦出来るように、新しいエンジンレギュレーションは、少なくとも2022年から27年までの6年間に渡って継続される。なお、ハイブリッドを共通パーツとすることで、新たなマニュファクチャラーの参入が容易となるメリットもある。

F1とは異なるハイブリッドエンジン

インディカーに導入されるハイブリッドシステムは、ブレーキシステムからエネルギーを回収するモーター、インバーター、そして蓄電デバイスの主要3コンポーネントで構成される。ホンダは2015年より、1.6リッターV6ハイブリッド・ターボエンジンが導入されたF1に参戦しているが、インディカーが目指す共通ハイブリッドシステムは、ホンダがF1用に開発しているものとは大きく異なる。

F1のパワーユニットは、運動エネルギー(MGU-K)と熱エネルギー(MGU-H)の2つを回生しているが、インディカーが目指すハイブリッドは運動エネルギーのみの回生となる。MGU-Hは複雑極まる代物で、開発コストが極めて高い。

最大900馬力オーバーでも安全性は向上

新しいパワートレインの導入によって、ロード及びストリートコースで使用されるオーバーテイクシステム「プッシュ・トゥ・パス」のパワーも向上する。インディカーは、最大900馬力を超える出力を発揮するとしており、ラップタイムの向上が期待される。また、高出力化するパワートレインの導入に合わせて、これに耐え得る次世代シャシーが合わせて投入される。

ハイブリッドの導入により、新時代のインディカーマシンは始動方法が変化する。現在は外部スターターでエンジンを起動させているが、コックピット内でドライバー自らがスターターを起動する形式へと変更される。

これにより、レース中にマシン停止に見舞われた際、ドライバーは自らマシンを再始動できるため、コーションフラッグやタイムロスの減少などが期待される。また、長時間に渡るコース上でのマシンストップが減ることによって、レース中の安全性がより確保される。

ホンダ、ハイブリッド化に合意

現在インディカー・シリーズへエンジンを供給しているホンダとシボレー双方が、新規約に同意。2022年以降も引き続き、同シリーズへ参戦する事を表明した。

ホンダはカーボンフリー社会の実現を目指し、2030年までに世界の自動車販売の3分の2を電動化することを目標としている。インディカー・シリーズにおけるハイブリッドへの挑戦は、この方針をさらに推し進めるチャンスとなる。

ホンダ・パフォーマンス・ディベロップメントのテッド・クラウス社長は、インディカーのハイブリッド化計画への同意について「レースは、Hondaの新たな技術と人材の発展に、長年大きな役割を果たしてきた。今回の発表は、レースを通じて人と技術の発展を可能にするものであり、将来の自動車ビジネスにとって不可欠なものだ」と語った。