2020年第104回インディ500を制して日の丸を掲げるレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨
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2020年インディ500結果︰佐藤琢磨、世界最高峰2勝目!史上20人目の偉業…アロンソ 見せ場なく21位

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第104回インディアナポリス500マイルレース、通称インディ500が、2020年シーズンのNTTインディカー・シリーズ第7戦として、米国インディアナ州現地8月23日(日)14時30分、日本時間27時30分よりインディアナポリス・モーター・スピードウェイ(IMS)で行われ、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨がトップチェッカーを受けた。

2017年以来の偉業を狙う佐藤琢磨は、11度目のインディ500挑戦に向けて最前列アウト側の3番グリッドからスタート。200周のレースを通して終始トップ3を競うペースを刻み、158周目にスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ)をオーバーテイクして初のリードラップを獲得すると、その後はシリーズ最強王者の誉れ高いディクソンを寄せ付けず、昨年のゲートウェイ以来となるキャリア通算6勝目、2度目のインディ500制覇を果たした。

インディ500での複数勝利は、104年に渡るインディ500の歴史における史上20人目の偉業であり、日本人、アジア人ドライバーとしては初。43歳の元F1ドライバーは真っ向勝負で伝統の一戦を制し、名実ともに世界のレジェンドドライバーの仲間入りを果たした。

2020年第104回インディ500 チェッカーフラッグシーン

佐藤琢磨の2度目のインディ500制覇を喜ぶレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの面々

ホンダ勢圧倒、アロンソは見せ場なく21位

2位は111周のリードラップを重ねたディクソン。3位は佐藤琢磨のチームメイト、グレアム・レイホールという結果となった。トリプルクラウンを目指し3度目のインディ500に挑んだフェルナンド・アロンソ(マクラーレンSP)は、2週間に渡るイベントで一度も見せ場を作れず21位に終わった。

トップ10にはホンダエンジン勢が8台並び、予選同様にシボレー勢を圧倒した。シボレー最上位はジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)の5位。ルーキー最上位は、6位のパトリシオ・オワード(マクラーレンSP)という結果となった。

ポールシッターのマルコ・アンドレッティ(アンドレッティ・オートスポーツ)は存在感を示せず、一度もトップ争いに絡むことなく13位に終わった。史上4人目となる4度目のインディ500制覇に臨んだエリオ・カストロネベス(チーム・ペンスキー)は11位でクルマを降りた。

F1モナコGPとル・マン24時間レースと並び世界三大レースの1つに数えられるインディ500。本大会は当初、5月24日に開催が予定されていたものの、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)大流行のために8月に延期された。5月以外の開催は史上初で、伝統の一戦は無観客レースとして執り行われた。

エントリーは33台。予選落ちはなく、8名のインディ500チャンピオンを含む全てのマシンがグリッドに着いた。1999年以来初めて、女性ドライバー不在のレースとなった。

レース前セレモニーでは、米国空軍所属のアクロバット舞台、通称サンダーバーズによるフライオーバーが行われ、スタートコマンドは、昨年11月に新たにシリーズオーナーとなったロジャー・ペンスキー直々に担当。ジム・コーネリソンが「Back Home Again in Indiana」を歌い上げた。

2020年第104回インディ500 決勝前セレモニーでのフライオーバー

レース展開

日曜のインディアナポリスは晴天に恵まれ、決勝は”ブリック・ヤード”とも呼ばれる一周2.5マイルのIMSを200周、計500マイル(約800km)で争われた。レースは気温29℃のドライコンディションでグリーンフラッグを迎えた。

注目のオープニングラップ。ポールシッターのマルコ・アンドレッティが3番手に後退し、2番グリッドのディクソンがドラフティングを上手く捉えてラップリーダーに、佐藤琢磨は2番手に浮上した。オーバルを得意とするエド・カーペンター(エド・カーペンター)は壁と接触。早々に3ダウンと戦線離脱を強いられた。

2020年第104回インディ500 スタート直後の様子

6周目にはジェームス・デイビソン(デイル・コイン)の右フロントホイールが激しく燃え上がり、早くもイエローコーションが出された。このタイミングでアロンソやシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)ら後方組が一斉に給油のみのピットストップに動いた。レースは13周目にリスタートを迎えた。

2度目のイエローコーションは25周目。8番手を走行していたマーカス・エリクソン(チップ・ガナッシ)がターン1でコントロールを失い外側のセーファーウォールに激突。車体右側大きく破損しリタイアを喫した。ここで、前回のイエローでステイアウトを選択した上位勢が一斉にピット作業を実施。佐藤琢磨はトップオフ組の後に並ぶ9番手でコースに復帰した。

レースは32周目にリスタート。上位勢は64周目に2度目のピットストップを実施した。ディクソンが事実上のトップを維持し、他の追随を許さないペースでリードを築いていったが、85周目にルーキーのダルトン・ケレット(A.J.フォイト)がダーティーエアの影響を受けターン3でクラッシュした事で3度目のフルコースイエローが出され、佐藤琢磨とディクソンを含む上位組が給油とタイヤ交換に動いた。

コーションが長引いた事からトップオフ組も相次いでピットへと動き、全車が戦略を同一として93周目にリスタートを迎えるも、グリーンフラッグと同時に後方でクラッシュが発生。オリバー・アスキュー(マクラーレンSP)とコーナー・デイリー(エド・カーペンター)が各々単独でクルマの制御を失った。

アスキューはコースイン側のセーファーウォールに車体右側から高速で激突。足を痛めたようで、マーシャルの手を借りてエアロスクリーンに囲まれたコックピットから脱出した。

レースは101周目にリスタートを迎え、佐藤琢磨はアレキサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポーツ)とパトリシオ・オワード(マクラーレンSP)にパスされ4番手に後退。ロッシはその翌周にディクソンをオーバーテイクして初のラップリーダーに躍り出た。

両者はその後、数周に渡って相互にラップリーダーを入れ替えながら隊列を先導していたが、平穏な展開は長く続かず、9番手を走行していたアレックス・パロウ(デイル・コインwithチーム・ゴウ)が122周目にクラッシュ。5度目のイエローコーションが出され、各車一斉にピットに動いた。

ピットアウトの際には、ロッシの右リアが佐藤琢磨の左フロントホイールに接触するアクシデントが発生。一件は審議の対象となりアンセーフ・リリースの裁定が下った結果、ロッシには隊列最後尾への後退が命じられた。

コルトン・ハータ(アンドレッティ・オートスポーツ)とサンティノ・フェルッチ(デイル・コイン)も似たような形で軽く接触。アロンソはトラブルに見舞われたようでピットアウトできず、1ラップダウンの26番手に後退した。

レースは131周目にリスタート。パジェノーは前走のライアン・ハンター=レイ(アンドレッティ・オートスポーツ)と接触。幸いにもクラッシュは免れたが大きく失速し、フロントウイング交換のためにアンダーグリーンでの緊急ピットインを強いられた。事実上の2番手を走行する佐藤琢磨はスタートで出遅れ、チームメイトのレイホールにポジションを譲る格好となった。

感情を抑えきれなかったか。怒涛の巻き返しに臨んでいたロッシが144周目にターン2で単独クラッシュを喫し、6度目のイエローコーションとなった。5度目のインディ500挑戦は自身初のリタイヤに終わった。

レースは155周目にリスタートを迎えた。佐藤琢磨は158周目にディクソンを交わし、ここで初のラップリードを獲得。じわじわと順位を上げてきたジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)は3番手に浮上した。

佐藤琢磨は169周目にラストピットインに動き、同じタイミングでピットに入ったニューガーデンを抑えてコースに復帰。その翌周にディクソンがピットに入り、佐藤琢磨の前でコースに復帰してラップリーダーの座を奪い返したが、173周目に好ペースを刻む佐藤琢磨が再びトップに立った。

最終盤はレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの2台がディクソンを挟み込む展開で周回が続いた。残り15周ほどになるとディクソンがコンマ3秒近くにまで接近。ラスト10周を切ると、バックマーカーが佐藤琢磨の行く手を塞ぎギャップが更に縮まったが、佐藤琢磨は残り9周で221.569mphのファステスト・リーダーラップを記録。ポジションを明け渡す事はなかった。

ラスト5周ではスペンサー・ピゴット(RLL)が激しいクラッシュを喫し7度目のフルコースイエローが出され、レースはペースカー先導で静かなるチェッカーフラッグを迎えた。

2020年第104回インディ500 決勝結果

Pos. Start Driver Gap
1 3 佐藤琢磨
RLL Racing
–.—-
2 2 スコット・ディクソン
Chip Ganassi
0.0577
3 8 グレアム・レイホール
RLL Racing
0.0953
4 19 サンティノ・フェルッチ
Dale Coyne
0.3929
5 13 ジョセフ・ニューガーデン
Team Penske
1.6619
6 15 パトリシオ・オワード
McLaren SP
3.2496
7 6 ジェームズ・ヒンチクリフ
Andretti
4.2694
8 10 コルトン・ハータ
Andretti
5.1918
9 20 ジャック・ハーベイ
Meyer Shank
6.8131
10 5 ライアン・ハンター=レイ
Andretti
7.9613
11 28 エリオ・カストロネベス
Team Penske
10.3143
12 14 フェリックス・ローゼンクビスト
Chip Ganassi
13.9668
13 1 マルコ・アンドレッティ
Andretti
16.0657
14 22 ウィル・パワー
Team Penske
17.6439
15 17 ザック・ビーチ
Andretti
19.3960
16 32 JR.ヒルデブランド
Dreyer & Reinbold
20.2342
17 30 マックス・チルトン
Carlin
21.4917
18 29 チャーリー・キンボール
A.J. Foyt
24.7017
19 23 トニー・カナーン
A.J. Foyt
1 lap
20 4 リーナス・ヴィーケイ
Ed Carpenter
1 lap
21 26 フェルナンド・アロンソ
McLaren SP
1 lap
22 25 シモン・パジェノー
Team Penske
2 lap
23 33 ベン・ハンリー
DragonSpeed
2 lap
24 31 セージ・カラム
Dreyer & Reinbold
2 lap
25 12 スペンサー・ピゴット
RLL Racing
6 lap
26 16 エド・カーペンター
Ed Carpenter
13 lap
27 9 アレキサンダー・ロッシ
Andretti
57 lap
28 7 アレックス・パロウ
Dale Coyne
79 lap
29 18 コナー・デイリー
Ed Carpenter
109 lap
30 21 オリバー・アスキュー
McLaren SP
109 lap
31 24 ダルトン・ケレット
A.J. Foyt
118 lap
32 11 マーカス・エリクソン
Chip Ganassi
176 lap
33 27 ジェームス・デイビソン
Dale Coyne
196 lap