3位でチェッカーフラッグを受けたレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨、2019年インディ500決勝copyright Indycar

佐藤琢磨、優勝逃すも「インディ500での3位は”非常に大きい”」見えてきた初のシリーズ王者

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2017年に続く自身2度目のインディ500制覇に向けて、26日の500マイルレースに臨んだレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は、惜しくも優勝には届かなかったものの、このレース最大の大逆転劇を演じた。

佐藤琢磨は、レースファステストを記録するなどスタート直後から好ペースを刻んでいたが、1回目のピットストップの際に作業ミスがあり、序盤に2ラップダウンの31番手に後退。トップ争いの可能性は完全消失したかに思われたが、決して諦めない”ネバーギブアップ”の精神と燃費戦略によって、残り60周を切ったところで不死鳥の如くリードラップに復活した。

2019年インディ500を3位で終えインタビューに応えるレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨
インディ500を3位で終えインタビューに応える佐藤琢磨

「最初のピットストップで右リアホイールがちゃんと装着されておらず、再度ピットに戻ってチェックする必要があったんです」と佐藤琢磨。絶望的な状況にもかかわらず、「後方を走っている時に、トラフィックの中での走り方やタイヤについての理解を深めていた」と言い、腐ることなくチャンス到来に備えていた。

戦いの土俵に舞い戻った後は、ライバルとは異なるシーケンスであった事もあり、前走車のピットストップによって177周目にラップリーダーに浮上した。その直後に、チームメイトのグレアム・レイホールとセバスチャン・ブルデーのクラッシュによってレッドフラッグが発生。幸いにもその数秒前にピットへと入っていたため、佐藤琢磨は形勢逆転の5番手に浮上し、一気に優勝候補に躍り出た。

「リードラップに戻るのに100ラップ以上がかかってしまいましたが、燃料をセーブしてスティントを4・5周ストレッチするなど、チームが素晴らしい作戦を展開してくれたのが功を奏しました。ストラテジーのおかげで、レッドフラッグ前にピットインする事が出来ましたし、あれは本当にチームの戦略のおかげでした」

満席のスタンドのファンの前でインディ500を戦う佐藤琢磨

クラッシュによる赤旗中断から再スタートが切られると同時に、佐藤琢磨はエド・カーペンターをオーバーテイク。その後も追撃の手を緩めずチーム・ペンスキーのジョセフ・ニューガーデンを交わし3位番手に浮上した。とは言え、決して無茶な走りをしたわけではなかったと佐藤琢磨は説明する。

「あの場面では行くしかないですよ! それまでの展開を考えれば夢のような状況ですし、当然無茶はしていません。でも、持てる力の全てを振り絞りました」

ライバルの悲劇によってアドバンテージを得た佐藤琢磨だが、利を得たのはラップをリードするシモン・パジェノーも同じだった。燃費的に非常に苦しい立場に置かれていたため、ラスト20周での赤旗と、その後に続く6周ものコーションラップは、まさに恵みの雨だった。

「3番手に上がった時は、できれば残りの2台も交わしたいと思いましたが、残念ながらそれは叶いませんでした。そういう意味では悔しい思いもありますが、置かれていた状況を思えば、僕を3番手にまで戻してくれたチームへの感謝しかありません」

最終盤はアレキサンダー・ロッシ(アンドレッティ・オートスポーツ)とパジェノーの一騎打ちとなった。リスタート後、両者は3回も順位を入れ替える激しいバトルを繰り広げた後、199周目のターン3でパジェノーが再びトップに浮上。ロッシはインディ500での2勝目を目指し、最終ラップのターン4での立ち上がりにチャンスを見出そうとするも、パジェノーがインディでの初栄冠を獲得した。

2019年第103回インディ500で勝利し雄叫びを上げるチーム・ペンスキーのシモン・パジェノー
勝利し雄叫びを上げるチーム・ペンスキーのシモン・パジェノー

佐藤琢磨は勝利こそ逃したものの、ダブルポイントとなるインディ500での3位とリードラップによって71点を加算。シーズン11戦を残してランキングでの総獲得ポイントを203に伸ばし、絶対王者スコット・ディクソンを抑えて4番手に浮上した。

「優勝は逃してしまったが、シーズン全体を考えればインディ500での3位は非常に大きい」と語る佐藤琢磨。インディカー参戦10年目、初のシリーズ王者獲得の可能性が見えてきたか。次戦ダブルヘッダーのデトロイトGPは、インディ500決勝から1週間後の6月1日と2日に行われる。