カンヌの密会で波紋。ホーナー、中国BYDと「12番目チーム」でF1復帰模索か

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昨年レッドブル・レーシングを追われたクリスチャン・ホーナーが、既存チームの少数株主としてではなく、純資産1250億ドル規模ともされる中国EV大手BYDを後ろ盾にした「12番目のチーム」の幹部として、F1復帰に向けて照準を合わせつつある、との観測が浮上している。

イギリスの衛星テレビ局『Sky Sports F1』など複数のメディアが報じたところによれば、ホーナーは先週末、カンヌでBYDの副社長ステラ・リー氏と複数回にわたる会談を重ねたとされる。BYDが進めているとされるF1参入構想で、ホーナーが中心的な役割を担う可能性が取り沙汰されている。

カンヌでの密会、解かれた足かせ

ホーナーが姿を見せたのは、カンヌ国際映画祭に合わせて開かれたBYDのイベントだった。撮影された写真から、リー氏と接触したことは明らかになっている。

ただ、それ以上に注目されるのは、BYDの最高経営責任者を務める王伝福(ワン・チュアンフー)氏とも面会したとされている点だ。映画祭という華やかな舞台の裏での接触が、両者の連携をめぐる臆測を加速させている。

ホーナーがF1復帰に向けて精力的に動いている背景には、契約上の足かせが解かれたという事情がある。2025年7月、イギリスGPの直後にレッドブルのチーム代表兼CEOの座を解かれた後、ホーナーは競合チームへの移籍を一定期間禁じる非競業条項、いわゆるガーデニング休暇の下に置かれていた。

報道によれば、ホーナーはレッドブルとの和解金を減額する代わりに、復帰までの期間を短縮したとされる。ガーデニング休暇は2026年5月8日に満了したとみられている。

以降、ホーナーはMotoGPやフォーミュラEのイベントに相次いで姿を見せており、その動向にこれまで以上の注目が集まっている。

フォーミュラEのGEN4マシンを視察するクリスチャン・ホーナー(レッドブル元F1代表)、2026年5月16日(土) フォーミュラEモナコE-Prix(モンテカルロ市街地コース)Courtesy Of Formula E

フォーミュラEのGEN4マシンを視察するクリスチャン・ホーナー(レッドブル元F1代表)、2026年5月16日(土) フォーミュラEモナコE-Prix(モンテカルロ市街地コース)

アルピーヌからBYDへ、動く復帰経路

F1復帰を模索するホーナーについては、投資家グループとともにアルピーヌ株24%の買収に向けて、プライベートエクイティのオトロ・キャピタルと交渉を重ねてきた事が判明している。この株式をめぐっては、メルセデスをはじめとする複数の陣営が関心を寄せている。

だが、ホーナーの照準はより野心的な計画へと移りつつある可能性がある。BYDは既存チームの株式取得ではなく、12番目の新チームとしてF1に参入する道を検討している。

ホーナーは単に、かつてのチーム代表兼CEOという役職でのF1復帰を望んでいるわけではない。F1チームに対する指揮権を持ちながらも、出資を伴わなかった以前とは異なり、株式の取得を通じたチーム支配権を伴う立場での復帰を模索しているとみられる。

BYDとの連携は、こうしたホーナーの志向と重なる。

BYD、F1参入に向け「協議中」

BYDがF1への新規参入を計画しているとの事実は、すでに今季の早い段階で明らかになっている。同社のリー氏は、3月の中国GPの週末、上海でF1のステファノ・ドメニカリCEOと会談したことを認めている。

「私たちは常に密に連絡を取り合っています」とリー氏はイタリアのスポーツメディア『SportMediaset』に語った。「私はF1が好きです。なぜならF1は情熱、文化であるからです。人々はF1に加わることを夢見ています。それは私達の技術を試す真の機会なのです」

リー氏はまた、F1参入の可能性について「協議しています」とも述べている。

一方、F1側の受け止めには温度差がある。ドメニカリは新規チームの参入に慎重な姿勢を示してきた。「我々が評価するのは、極めて大きな意義を持つ参入案だけだ。すでに余地のない地点に達していると考えているからだ。物流面でも限界にある」と語っている。

これに対し、FIA会長のモハメド・ベン・スレイエムは中国からの参入に前向きな立場を維持している。ベン・スレイエムはかねてより、グリッド上にアメリカと中国それぞれのチームが存在する構図を望むとの考えを示してきた。

キャデラックの前例が示す高い壁

BYDの参入は、制度上は可能だ。現行のコンコルド協定は、グリッド上に最大12チームの枠を認めている。2026年にキャデラックが新たにグリッドに加わったが、それでもなお1枠が残っている。

ただし、その道のりは平坦ではない。アンドレッティやキャデラックがグリッド入りまでに長く厳しい交渉を強いられた経緯を踏まえれば、BYDが本気でF1参入を目指すとしても、なお長い道のりが待ち受けていると考えるべきだろう。

加えて、2026年の新たなレギュレーションの下で、F1未経験の自動車メーカーがゼロから競争力あるチームを築き上げる事のハードルの高さも指摘すべきだろう。BYDが豊富な資金力を持つことは確かだが、資金が直ちに競争力に結びつくわけではない。

現時点では、当事者のいずれからも正式な確認は取れておらず、ホーナーとBYDの連携、そして12番目のチームという構想が今後現実的なプランとして公になるのかどうか、確定的なことは明らかになっていない。

それでもなお、BYDが新チームを立ち上げてF1への新規参入を計画する場合、そのパートナーとしてホーナーを選ぶことは、レッドブル・レーシングの成功の歴史を踏まえれば、驚くべきことではないだろう。