マシンを見つめるホンダF1の田辺豊治
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ホンダの新型スペック3エンジンは、鈴鹿F1日本GPの開幕までに間に合うのか?

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ホンダの最新型パワーユニット”スペック3″は、鈴鹿で開催されるF1日本GPに間に合うのだろうか? 第16戦F1ロシアGPで満を持して投入された改良型エンジンは、ソチ・オートドロームで有望なパフォーマンスを示しながらも、車体とのマッチングに関して課題が見つかったため、土曜以降のセッションで封印される事となった。

新型を搭載して臨んだ2回目のフリー走行では、ピエール・ガスリーが最速のルイス・ハミルトンに対して1.752秒遅れの101.88%に迫ったが、旧型にロールバックして臨んだFP3では、2.058秒遅れの102.21%へと後退。具体的な数値は別として、確実に戦闘力を向上させていた。参考:ホンダのスペック3エンジンはどの程度進化した?

結果的に予期せぬ形で古いパワーユニットへの載せ替えを強いられたものの、実際のトラック上で新旧パワーユニットの比較が出来た点については不幸中の幸いであったと言える。

キャブレターを用いて機械的にエンジンを制御していた時代とは異なり、今は電子制御がエンジンをコントロールする時代。性能を100%引き出しつつ信頼性を確保し、実戦での使用に耐えうる状態に仕上げるためには、キャリブレーション=システム全体のマッチング作業が欠かせない。

馬力と信頼性の向上を図った新型パワーユニットはチーム関係者を満足させるだけの成果を上げた一方で、ホンダが想定していた以上のバイブレーションが発生。ドライバビリティも若干悪化したとの事で、自信を持って”レースディスタンスに耐えうる”とは言えない状態だったようだ。

バイブレーション=振動と言えば、昨年のホンダエンジン「RA617H」がマクラーレンの車体側と共振(オシレーション)を起こし、マシントラブルの原因となっていた事が記憶に新しい。シャシー側から発生する振動周波数に対して最適化出来ていないと思わぬトラブルを招きかねない。

不運な事にロシアGPと日本GPはダブルヘッダーとなっており、ホンダが問題の解決にかけられる時間は1週間に満たない。ホンダは日本GPが開幕する10月5日(金)までに、英ミルトンキーンズのファクトリーに在庫してある同じ最新仕様のパワーユニットをダイナモにかけ、キャリブレーションを取る事を目指している。

「テストデータを評価しなくてはなりません」田辺TDは英Autosportに対して次のように語った。「キャリブレーションを最適化するために、新スペックエンジンをダイナモでテストする計画を立てています。レース使用に耐えうるレベルでの最適化が確認できれば、その時点で実際に導入するかどうかを判断します」

キャリブレーションはハードウェア側ではなくソフトウェア側の問題であり、制御パラメータなどを変更して調整を行う事を指す。そのため、実際のキャリブレーションを行う場所が遠く離れたイギリスであっても問題はない。最適化されたデータを日本に送り、現地にあるパワーユニットに適用すれば良いのだ。

仮に、期限までに作業が完了しない、あるいはGOサインを出せるレベルに達しない場合はどうなるのだろうか?何しろ日本グランプリまでは時間がなく、猶予は限られている。田辺はお膝元の母国レースに間に合わせる事は可能だと考えている。

「数日の間にキャリブレーションを最適化する作業は非常に簡単というわけではありませんが、かといって不可能でもありません」

ホンダとしては、自身がタイトルスポンサーを務める鈴鹿での30回目の記念大会で2台揃ってマシントラブル…という最悪の事態は避けたいところだろう。万が一作業が完了しない場合は搭載を見送ると考えるのが妥当だ。だが、もし初日金曜に間に合わなかったとしても、土曜以降に載せ替えという事も考えられる。

F1日本グランプリ1回目のフリー走行は10月5日金曜午前10時から三重県鈴鹿サーキットで行われる。

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