速読:ハースF1「VF-23」先代比較で何が変わった? フェラーリ化の影にレッドブルの思想
テクニカル・ディレクターを務めるシモーネ・レスタによれば、2023年型ハース「VF-23」は先代のコンポーネントを引き継ぎつつも「大規模な手直し」が行われており、その柱は「空力パフォーマンスの改善とコンポーネントの軽量化および品質向上」にあるという。
2月11日に英国シルバーストン・サーキットでシェイクダウンが行われた事で「VF-23」の真の姿が幾らか見えてきた。2022年型「VF-22」と比較しながら駆け足で新車を見ていきたい。
密接な技術提携を背景に多くのコンポーネントを供給している関係上、ハースのマシンはスクーデリア・フェラーリのマシンを予想する上でも興味深い材料だ。
フェラーリ化の影にレッドブルの思想
サイドポッドは昨年後半採用のフェラーリ型を継承した。インレットの形状は上面よりも下面が長く、またサイドポッド上面に深いくぼみが設けられており、更なるフェラーリ化が図られたことは明らかだ。
と同時に目立たないながらも、インレットとベンチュリートンネルの入口が昨年よりも若干後方に配置されている。これはレッドブルが採った手法だ。
ベンチュリートンネルの入口をより前方に配置してトンネルの長さを優先した方がピークダウンフォースを追求できる。だがその反面、コーナリング時の空力バランスが悪化する傾向にある事が知られている。
エンジンカバーのフィンには段差が設けられ、サイドポッドの吸気口から取り入れられた空気の出口、アウトレットのラインは曲線を描きつつ、ノコギリの刃のような突起が付けられている。
フロントにプッシュロッド、リアにプルロッドというサスペンション形式に変更はないようだが、フロントウイングやエンドプレート、ダイブプレーンの形状や位置に違いが見られる。
アップグレード方針転換へ
2021年シーズンを完全に捨てて新しい技術規定に取り組んだ甲斐もあり、昨年のハースはコンストラクターズ選手権8位と、2018年以来の好成績を収めた。
これは前半戦での逃げ切りによるところが大きく、総獲得ポイントの9割以上は最初の11戦で掴んだものだった。逆に言えば、後半戦はどのチームよりも競争力で劣っていた。
後半戦の失速の要因の一つは、メジャーアップグレードがハンガリーGPでの1回に留まった事だろう。悪いことにそれはパフォーマンスの引き上げには繋がらなかった。
他方ライバル達はハースよりも頻繁にアップデートを持ち込み、シーズンを通して進化を見せていった。2023年のハースは昨年とは異なるアプローチを採用することになりそうだ。
レスタは「間違いなく、昨年よりも強力なアップグレードプログラムを用意する事になるだろう」と述べ、シーズンを通したマシン開発の強化をほのめかしている。