ジュエリー装着禁止に取り組むFIAに対して、大量のアクセサリーを身に着けFIA会見に臨んだメルセデスのルイス・ハミルトン、2022年5月6日F1マイアミGP
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GPDA会長ブルツ、F1ジュエリー禁止令を支持…34年前の富士での全焼エピソードを披露

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GPDA(F1ドライバー組合)の会長を務めるアレックス・ブルツは34年前の富士スピードウェイで起きたクリス・ニッセンの事故に関わるエピソードを披露し、ジュエリー着用禁止ルールの取り締まりを強化する国際自動車連盟(FIA)を支持する立場を明らかにした。

渦中にいるのはルイス・ハミルトン(メルセデス)だ。すぐには取り外せないボディピアスがあるとの事で、統括団体は5月29日のモナコGPまでに対処するよう猶予期間を設けた。従わない場合、罰金に加えてチャンピオンシップ・ポイントが剥奪される可能性もある。

だが37歳のイギリス人ドライバーは3つの時計と8つの指輪、4つのネックレスと2つのイヤリングを身に着けてF1マイアミGPの金曜公式会見に臨み、FIAへの対立姿勢を鮮明にすると共に、マイアミでの週末に免除された事を受け、残りのシーズンも免除を受ける気でいる。

そんな7度のF1ワールドチャンピオンの態度は誤りだと考えているのがブルツだ。

ロイターによると、宝飾品禁止令についてオーストリア出身の48歳は「正当な理由によるルール」だと指摘し、1988年に富士のターン1でクラッシュを喫してマシンが全焼し、全身に大火傷を負ったデンマーク出身のレーシングドライバー、ニッセンのエピソードを披露した。

「彼は自分の体を見せて『これを見てくれ』と言ったんだ」とブルツは説明した。

「事故後に最も辛かったのは、パンツのゴムが皮膚に焼き付いた事だったそうだ。炎に晒されていたのは大した時間ではなかったのにね」

「それは何年にも渡って彼を苦しめ、苦痛を与え続けたそうだ。私はその話を聞いて考えを改めたんだ」

「当時私は、パンツを脱ぐという些細な事をせずに、そういう結末になるのはゴメンだねって言ったんだ。ジュエリーも同じ事さ。これは正当な理由によるルールなんだ」

トヨタ・ガズーレーシングのアレックス・ブルツ、2015年FIA世界耐久選手権(WEC)第8戦バーレーン8時間レースにてCourtesy Of TOYOTA MOTOR CORPORATION

トヨタ・ガズーレーシングのアレックス・ブルツ、2015年FIA世界耐久選手権(WEC)第8戦バーレーン8時間レースにて

競技中のジュエリーや被服に関しては以前から明文化されてきたが、マイケル・マシに代わって今季よりF1レースディレクターを務める事になったニールス・ヴィティヒが取り締まりを強化する方針を示した事で今季の論争の一つとなった。

FIAはジュエリーの着用によって防炎服の性能が低下するだけでなく、火災時に火傷を負うリスクが高まる可能性があると指摘すると共に、オーバーオール等の被服がスムーズに脱着できず、レスキュー作業や事故後の診断・治療の妨げになる可能性があると説明している。

ブルツはFIAが推し進めるジュエリー禁止の取り組みに反発するハミルトンは態度を改めるべきと考えているようだが、同時にFIAのやり方にも問題があったと指摘した。

「メッセージの伝え方という点に関して、私としてはもう少し違ったアプローチが望ましかったと思っている」とブルツ。

「手を上げたり、罵声が飛び交うフットボールに行き着く事は望んでいない。共に取り組むべきケースだと思うし、個人的にはそういうスタイルの方が良いと思う」