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F1を含む国際自動車連盟(FIA)管轄下のシリーズに参戦するドライバー、チームは今後、事前の許可なしに中立的ではない「政治的、宗教的、および個人的な声明や意見」を表明する事を禁止される。
12月19日に公開された「2023年国際スポーツ競技規則」で明らかになった。同規則は「モータースポーツの統制、振興および発展」を目的とするものだが、FIAが来季に向けて検閲強化とも受け取れるルールを制定していた事が分かった。
問題の一文は「規則違反」について定めた第12条2項に追加された。
それには「国際競技会についてはFIAが、国内競技会については関連するASNが各々、文書で事前承認しない限り、FIAがその規約に基づき推進する中立性の一般原則に著しく反する政治的、宗教的、及び個人的な声明や意見の一般的な作成および表示を行うこと」を禁止する旨が記されている。
既に似たような条項はあるものの、それは以下のようにマシンの広告掲載に限ったものだった。
「国際競技会に参加する競技者は、自らのマシンに政治的、宗教的、またはFIAの利益を害するような広告を貼ってはならない」
現地プロモーターが北キプロス・トルコ共和国のメフメト・アリ・タラートを「大統領」と紹介した2006年のF1トルコGP以来、FIAが「政治性」を問題視する騒ぎは殆どなかったものの、コロナ以降はルイス・ハミルトン(メルセデス)とセバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)を筆頭に、F1ドライバーが自らの信念に従って政治的な発言・アクションを採る場面がしばしば見られた。
ムジェロ・サーキットで開催された2020年のF1トスカーナGPでは、ハミルトンが「Arrest the cops who killed Breonna Taylor(ブレオナ・テイラーを殺した警官を逮捕せよ)」とのメッセージが描かれたTシャツを着用して表彰台に上がった。
これは米国ミネソタ州ミネアポリスで起きた白人警官による黒人のジョージ・フロイドさん射殺事件に対する強い抗議の意味を表すもので、これに関連して所属先のメルセデスF1チームは同年から2年に渡って、人種差別に反対する姿勢を示すべくマシンを黒塗り仕様とした。
一件を受けFIAは同年のロシアGPでルールを改定。表彰台およびレース後インタビューでのドライビングスーツ着用を義務付けた。
2021年のハンガリーGPでは、ベッテルがレース前セレモニーで胸に「SAME LOVE」のメッセージが描かれたレインボーカラーのストライプTシャツを着用。手続き違反があったとして叱責処分を受けた。
レインボーはLGBTQ(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、クィア及びクエスチョニング)運動を象徴するもので、ベッテルはハンガリーで成立した反LGBTQ法に反対の意思を表明していた。
またカナダGPではアルバータ州での採掘事業のあり方を問題視し、「Stop mining tar sands – Canada’s climate crime(タールサンド採掘を止めろ。カナダの気候犯罪)」と書かれたTシャツを着用した。
FIAはまた「FIA選手権に向けて行われる競技会における公式セレモニーに関連し、その任命と参加に関するFIAの指示に従わないこと」があれば罰則を科す可能性があるとの条項を追加した。
「あらゆる人と国が達成しなければならない共通の基準」とされる、いわゆる「世界人権宣言」が国際連合総会で採択されたのは1948年の事だった。これには「宗教又は信念を表明する自由」に加えて「意見及び表現の自由に対する権利」が定められている。