「際限なきFIA会長時代」への懸念浮上…ベン・スレイエム、任期制限撤廃含む”物議の規約改定”を提案

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F1を含む6つの世界選手権シリーズを統括する国際自動車連盟(FIA)の会長モハメド・ベン・スレイエムが、会長職の任期制限を撤廃する規約変更を提案していることが、英公共放送「BBC」の報道により明らかになった。

現行のFIA規約では、会長の任期は1期4年で、再選は2回までに制限されている。つまり、同一人物が務められるのは最長3期(12年)までだ。だが、この提案が可決されれば、理論上は12年を超えて何度でも再選することが可能となり、際限のない長期政権への道が開かれることになる。

この規約変更案は、6月26日にマカオで開催されるFIA総会で議論および採決される予定であり、現状ではそのまま可決される見通しだという。

トッド時代に導入された任期制限

現行の最大3期制は、ベン・スレイエムの前任者であるジャン・トッドの時代に、ガバナンス透明化の一環として導入された。

トッドの前任であるマックス・モズレーは、1993年から2009年まで16年間に及ぶ長期政権を築いた。だが末期には、バジェットキャップ(予算上限)の導入を巡ってF1チーム側と激しく対立し、新シリーズ設立の分裂危機を招く事態に発展。最終的にモズレーが再出馬を断念することで、チーム側と合意したという背景がある。

FIAの広報担当者は今回の提案について、「FIA内の各組織の役職における在任期間方針を一貫させるためのもの」と説明している。だが、方針を一貫させるのであれば、逆に全ての役職に任期制限を設ける方向性もある。

任期制限が存在しない役職に制限を設けるのではなく、すべての役職で任期制限を撤廃することにした理由について問われた広報担当者は、具体的な回答を示さなかったと報じられている。

一般的に、国家や巨大組織において多選制限が設けられるのは、権力の腐敗防止や独裁化の回避、定期的なリーダー交代による民主主義の維持が主な目的とされている。

対抗馬を阻んだ「副会長候補リスト」の壁

事態をさらに複雑にしているのは、今回の変更案に会長職の立候補者に関する規則の厳格化も含まれている点だ。

新たに候補者には「FIA加盟団体またはFIA機関で十分な経験を示すこと」が義務付けられる。さらに、出馬に必要な副会長候補リストの提出期限が、現行の「選挙日の49日前」から「100日前」へと大幅に前倒しされる。

これらの変更は今後の選挙において、打倒ベン・スレイエムを目指す候補者が立候補する際のハードルを一層引き上げる可能性があると指摘されている。

昨年の会長選で、選挙規則の壁に阻まれベン・スレイエムへの対抗立候補を断念したティム・メイヤー氏は、任期制限の意義をこう力説する。

「これは良きガバナンスの根本的な安全装置であり、権力の集中を防ぎ、リーダーシップの刷新を確保し、組織が奉仕すべき相手に対する説明責任を維持するために不可欠なものとして認識されている」

無投票再選の背景と法廷闘争

現在64歳のベン・スレイエムは2021年12月に就任し、昨年12月の選挙で再選を果たしたが、この時は対抗馬が存在しない無投票再選だった。その裏には、制度上の問題があった。

FIAの会長選に出馬する候補者は、世界6地域、つまりアフリカ、アジア、ヨーロッパ、中東、北米、南米のそれぞれから副会長を選び、リストとして提出しなければならない。これらは、FIA世界モータースポーツ評議会(WMSC)が管理する適格者リストの中から選ぶ必要がある。

だが昨年の選挙時、南米地域で要件を満たす唯一の候補者であったファビアナ・エクレストン(元F1最高権力者バーニー・エクレストンの妻)は、すでにベン・スレイエム陣営に名を連ねていた。そのため、対抗馬側は南米の副会長候補を用意することができず、出馬の要件を満たすことができなかった。

会長選のスタートラインにすら立てなかった候補者の一人であるローラ・ヴィラーズ氏は現在、この選挙プロセスに異議を唱え、フランスの裁判所で訴訟を起こしている。