2020年型F1マシンの風洞実験50%スケールモデルのリアcopyright Formula One World Championship Limited

F1、予算上限引き下げや”画期的”な空力ルールを正式承認…競争力平準化に向け歴史的一歩

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チーム間競争力の平準化および、持続可能なスポーツとしてのあり方を実現するため、F1が歴史的な一歩を踏み出した。国際自動車連盟(FIA)は5月27日(水)に世界モータースポーツ評議会(WMSC)を開催し、電子投票を経てバジェットキャップの更なる引き下げや、空力テストの制限に関する画期的なルールを批准した。

2020年、2021年、そして2022年の競技・技術・財務の各レギュレーションへの追加修正は、F1チームの満場一致の支持を得て正式に承認された。以下、各規約毎にその概要を見ていく。

テクニカルレギュレーション

コスト削減のために、2020年および2021年シーズンは特定コンポーネントの開発が凍結される。リストにはシャシーやギアボックス、その他多数のメカニカルコンポーネント、そして衝撃構造が含まれている。

その一方でトークン制での開発が許可される。非常に限られた数ではあるものの、各々の競技者のニーズに応じて一部改造が認められる。例えばルノーからメルセデスへとエンジンサプライヤーを変更するマクラーレンは、このトークンを使って調整を行う事になる。

2020年シーズンはパワーユニットのアップグレードが制限される。2021年シーズンについてはダウンフォースの増加を抑制するためにプランビュートリムが変更されると共に、リアタイヤ前方のフロアが簡素化される。また最低重量が749kgに引き上げられる。

マシン開発の大部分が凍結されるため、2021年シーズンは必然的にダウンフォースが増加する事になる。現行のピレリタイヤは2019年に導入されたものであり、1周あたり0.5秒のゲインが予想される2021年シーズンのマシンの負荷に耐えきれない可能性がある。そのため、フロアに手を入れてダウンフォースを意図的に削減する。

スポーティングレギュレーション

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として実施が計画されている無観客レース(クローズド・イベント)と、観客を入れて行われるオープンイベントが規約の中で明文化された。

2020年に関するものとしては、新スペックのタイヤの承認が必要な場合にフリー走行2回目のセッション中にテストを許可する旨の規定が加わった点と、風洞を使った空力テスト(ATR)及びパワーユニットのテストベンチの制限が挙げられる。

2021年に向けては、前年のチャンピオンシップの順位に応じて空力テストを制限する画期的なルールが組み込まれる。コンストラクターでの順位が低い弱小チームほど、翌年のマシン開発でより多くの風洞実験が許可され、相対的にアドバンテージを得る事が出来る。

従来は空力開発に制限はなく、一部のチームはコンマ1秒のゲインのために24時間年中無休で風洞を稼働させ続けていたが、これには莫大な資金が必要で、小規模資本チームとのパフォーマンス格差を生み出す一因となっていた。現在は週65回までに制限されているが、来季からはコストキャップの導入に合わせて更に制限が加えられる。

前年順位 2021年
今季比テスト可能量
2022-25年
今季比テスト可能量
1位 90% 70%
2位 92.5% 75%
3位 95% 80%
4位 97.5% 85%
5位 100% 90%
6位 102.5% 95%
7位 105% 100%
8位 107.5% 105%
9位 110% 110%
10位以下 112.5% 115%

フィナンシャルレギュレーション

2021年シーズンより導入が決定していたバジェットキャップについて、上限金額が更に引き下げられた。2021年は1億4500万ドル、2022年は1億4000万ドル、そして2023~2025年は1億3500万ドルに制限される。なおこの上限金額から除外される項目にも修正が入った。以下の通り。

  • 1,200万ドルを上限とする年末ボーナス
  • 従業員給与における社会保障費の13.8%分
  • 上限を100万ドルとする福利厚生費
  • 全従業員が利用可能な医療給付分の費用
  • 環境問題への対処のためのコスト
  • 出産・育児・養子縁組を理由とする休暇の際に支払われる給与
  • 病欠理由で支払われる給与
  • FIA支援のためのプロジェクト費用

メルセデス、フェラーリ、レッドブル・ホンダら大規模チームにとっては、人員削減を含めて大きな影響があるため、単年で一気に1億3500万ドルまで削減する事が難しい。そのため、こうした段階的な措置が取られる事となった。