険しい表情を浮かべるレッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューウェイ、2020年F1バルセロナテスト3日目copyright Getty Images / Red Bull Content Pool

鬼才ニューウェイ、2021年以降の”制限的”F1レギュレーションに不満「不愉快なほど残念」

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F1の商業権を持つ米リバティ・メディアと国際自動車連盟(FIA)は、F1を抜本から作り直して2021年より新たな物語を紡ぎたいと目論んでいる。統治者主導のもと、技術、競技、商業の草案が作られ、その内容が明らかになりつつあるが、マシンデザイナーという立場で言えば、新しいテクニカルレギュレーションは歓迎できるものではないようだ。

「後方乱気流が後続車両の接近を妨げ、これがオーバーテイクを阻害している」現行の技術規約の問題点をこのように定義したF1は、複雑なボディーワークを一掃してアンダーボディの空力効果が増強する方向性の規約案を作り上げた。だがこの内容は、エアロダイナミスト達の仕事の幅を狭めかねない。

F1で最も著名なデザイナーとして知られるレッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューウェイは、inewsとのインタビューの中で「新しい物事を理解する良い機会だから色々な意味でレギュレーションの変更を楽しみにしてるが、私が気に食わないのは、一連の規制がより厳格化される傾向にあることだ」と語った。

今回と同じ様に、F1は2009年にもオーバーテイク促進を目的としてレギュレーションに大鉈を振った。ニューウェイはこの変化を上手く利用し、セバスチャン・ベッテルと共にF1世界選手権4連覇の偉業を成し遂げた。”空力の鬼才”は2009年と2021年のルール変更の違いを次のように説明する。

「2009年に行われた前回の大規模変更の際は、制限が従来よりも厳しくなる事なく、その点がすごく評価できた。だが、2021年の新しいルールは非常に制限的で規範的だ。私に言わせれば、これは不愉快なほど残念なことだ」

時を同じくしてバーニー・エクレストン統治下にあった当時のF1は、マックス・モズレー元FIA会長との関係悪化が直接の引き金となり、FIAの管轄から離れた独立シリーズの設立を検討した。それは「GP1」と呼ばれていた。ニューウェイは、新しい規約はF1をGP1化させる恐れがあり、このスポーツのDNAを奪いかねないと懸念する。

「これはこのスポーツを少しばかりGP1のように変えてしまう事になる。あれは私の考えるフォーミュラ1のあるべき姿ではない」

新しいレギュレーションに不満を持っているパドックの人間は少なくとも一人ではない。ニューウェイは「人々がどう思っているかなどお構いなしに物事が突き進んでいる」と述べ、新しい規約に苛立ちを感じているのは自分だけはないと主張し、次のように付け加えた。

「このスポーツにとって良いことなのかそうでないのかは、時が経てば分かる」

ホンダとの提携を機にF1での業務に本格復帰したとされるニューウェイは現在、2021年型F1マシン「RB17」の開発に集中しているとみられる。だが、”制限的なレギュレーション”が施行されたF1を見放す事はないのだろうか? 果たして本当にレッドブルでの仕事に関与し続けるのだろうか?

パワーユニットの性能がリザルトに直結する状況に嫌気が差したニューウェイは、2015年の「RB11」を最後に現場を離れ、アメリカズカップのレース用ヨットやアストンマーチンとコラボハイパーカー「ヴァルキリー」の開発に従事するなど、一時はF1と距離を置いていた。