2021年以降のF1マシンのレンダリングCG
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F1、規約の”グレーゾーン”を突く行為を全面禁止…2021年に向けてレギュレーションを変更

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F1のDNAの一つに「ルールのグレーゾーンを突く」という文化があるが、規約が一新される2021年以降は、露骨なまでに”抜け穴”を利用する行為は全て禁止されるようだ。F1のスポーティング・ディレクターを務めるロス・ブラウンが明らかにした。

2021年はF1新時代の幕開けであり、スポーツ、テクニカル、ファイナンスの全てのレギュレーションが全面的に改定される。ロス・ブラウンはこの改革の一環として、チームがルールの抜け穴を見つけた場合、FIAとF1がこの穴を迅速に塞げるようにスポーツの運営方法に微調整を加える予定であると述べた。

現行レギュレーションにおいては、シーズン中にルールを変更する場合、参戦する10チームすべての同意を取り付ける必要がある。抜け穴を突いているチームが賛同するはずもないため、穴を塞ぐには次のシーズンを待たねばならない。だが、2021年以降は問題発覚と同時に、穴が塞がれる事になる。

「過去のガバナンスは、変更に際して全員の同意が必要だった。そのため我々は、より迅速に変更できるようなガバナンスを推進している」とロス・ブラウン。F1公式サイトとのインタビューの中で、対策を進めている事を明かした。

「今は不可能だが、今後は抜け穴を利用した場合、次のレースでシャットダウンされる可能性がある。例えばダブル・ディフューザーの場合は、偶然にも3チームが採用していたため、来季のルールであったとしても禁止される事はないがね」

「だが、ある一つのチームが想像だにしないソリューションを採用して際立ったパフォーマンスを示し、原則全体を破壊するような状況が発生した場合、新たなガバナンスにおいては、他チームからの十分なサポートを得てこれを禁止する事が可能となる。これは従来とは全く異なる考え方だ」

ロス・ブラウンは、2008年末を以てF1撤退を表明したホンダをMBO(マネジメント・バイ・アウト)する事で、2009年のF1世界選手権にブラウンGPを誕生させた。この年、トヨタやウィリアムズと並んで革新的なディフューザーを搭載したブラウンGP「BGP001」は、破竹の快進撃でチャンピオンシップを圧倒。ジェンソン・バトンをF1ワールドチャンピオンに導いた。

F1は”世界最先端の実験場”を自認するスポーツだが、この仕組の導入によってイノベーションが削がれる恐れはないのだろうか? ロス・ブラウンは次のように述べ、その可能性を除外する。

「我々は、レギュレーションを最も深く理解した者に一番になって欲しいと考えている。チームは我々とFIAを信頼しなければならない。我々が素晴らしいアイデアを持つ人々を罰したりはしないのだという事をね。むろんこれは主観的なことだ」

「だが、レギュレーションの誤った場所を利用するという行為が、褒め称えられるべき最高のアイデアと言えるだろうか? 私はそうは思わない。それは弁護士が法律を多様な方法で解釈するようなものではないだろうか? 私が考える素晴らしいアイデアとは、(ルール設計者が)意図していた事を看破して、実際に行使できると気づく事だ」