フェラーリF1、メルセデスPU不正疑惑は静観の立場…レッドブル・ホンダに加わらず
吸気冷却系に関するメルセデス製F1パワーユニットの不正疑惑についてレッドブル・ホンダが国際自動車連盟(FIA)に明確化を求めている一方、スクーデリア・フェラーリは現時点で静観を決め込んでいる。
シルバーストーン以降のW12が低速からの加速性能を大幅に向上させた事から、パドックではインタークーラーとプレナムチャンバー周りにそのトリックがあるとの見方が広まった。
コンプレッサーで圧縮された空気はインタークーラーで冷却された後、プレナムを経てエンジンへと送られる。プレナムは一時的に空気を溜める事で安定した空気をエンジンに送り込む役割を持つ。
プレナム内の温度については技術規則の第5条6項8で「周囲温度よりも10℃以上高くなければならない」と定められているが、ライバルはメルセデスが当該規定値よりも低い温度の空気をエンジンに送り込んでいるのではと疑っている。
チャンピオンシップを争うライバルであるレッドブル・ホンダは、これに関して統括団体のFIAに対して明確な説明を求めていると考えられているが、2019年にエンジン不正疑惑で吊し上げられたフェラーリは現時点でこの論争に加わっていない。
イタリア版モータースポーツドットコムによると、跳馬のマッティア・ビノット代表は一件についてレッドブル・ホンダと同じ様に疑問視しているものの、現時点ではFIAに説明を要求していないと説明している。
「いいや、我々はリクエストをしてはいない」とビノット代表。
「すべてのチーム、メーカーはライバルの動向を常に理解しようと努めるものであり、我々も画像やGPSデータを用いて分析を行っている」
「幾つか疑問点があったためレッドブルと話し合いを行い、個人的にはその件についてクリスチャン・ホーナーと話をしたが、説明を求める書簡をFIAに提出したという事実はない」
2019年のフェラーリには、違法な手段で燃料流量センサーを欺き不当にエンジンパワーを得ているとの疑惑の目が向けられた。当時の論争は広く紙面を賑わせ大きな注目を集めたが、今回の件はあまり公に語られておらず水面下で議論が行われている。
ビノットは今回のメルセデスPUの疑惑を抜きに「フレキシブルウイングや技術指令書によるタイヤの空気圧に関する件について話したい」とした上で「2019年に他のチームがフェラーリに対して行ったような形で非難を始めるのは間違っていると思うが、当時の出来事と現在起こっている事には何も違いはなく、こうした事は常にF1で起きてきた物事であると強調することが重要だと考えている」と語った。
なお、メルセデスのトト・ウォルフ代表はレッドブルが疑いの目を向けている事について「彼らにとってそれが気晴らしになるのであれば、それはそれで良い事だ。この手の事には慣れているし、通常営業といったところだね」と歓迎する姿勢を示している。