フェラーリのロゴをバックにマイクを握るマッティア・ビノット代表copyright Ferrari S.p.A.

ホンダやメルセデスを55馬力凌駕? フェラーリ製F1エンジンに隠された”スーパーモード”の秘密

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ホンダやメルセデスAMG、ルノーといったライバルチームは、スクーデリア・フェラーリの2019年型パワーユニット「Ferrari 064」の速さに手を焼き、その合法性に疑いの目を向けている。55馬力ものアドバンテージを誇るとも噂されるマラネロ製エンジンの秘密とは?

地元モンツァで投入されたスペック3

フェラーリは地元モンツァで、最新型スペック3エンジンの真価を見せつけた。マラネロは新型エンジンをシャルル・ルクレールとセバスチャン・ベッテル、そしてキミ・ライコネン(アルファロメオ)の3台に投入。レース中に使用可能な新たなモードが搭載されたものとみられている。

アップグレード版エンジンを搭載した跳馬一年生のルクレールは、カレンダー屈指の高速サーキットとして知られるモンツァでポール・トゥ・ウインを達成。ホンダやメルセデス、ルノーらライバルチームに付け入るスキを与えず、イタリアの熱狂的フェラーリファンを歓喜させた。

2010年ぶりのモンツァでの優勝に歓喜するスクーデリア・フェラーリの面々
© Ferrari S.p.A. / 2010年ぶりのモンツァでの優勝に歓喜するスクーデリア

メルセデス陣営はチャージ不足を誘発すべく、前を行く赤いマシンを執拗に追い回したが、この試みが成功する事はなかった。ルクレールはホームストレートから第2シケインまでの区間を全開で走行していたが(当然第一シケインは除いて)、残されたラップだけでバッテリーを十二分に充電。スリップストリームとDRSの双刀を手にしたハミルトンを全く寄せ付けなかった。

スペック3に搭載された新しいシステムは、オーバーテイクを強力に促進する類のものではないようだが、バトルの際にライバルからポジションを守るのに有効利用できるようだ。だがライバルが注目し、疑いの目を向けるのは、予選を含めた特定の状況でのみ発動するエキストラパワーだ。

パワーブースト直前の奇妙な低速ラップ

フェラーリエンジンは奇妙なパワー・ブーストを備えている。これは特定の条件が揃った時にのみ作動するもので、これまでのところ、予選ラップとスタート直後のオープニングラップ、そして再スタートの直後にのみ観察されている。

このことから、フェラーリがエキストラパワーを引き出すためには、その直前に低速ラップを周回する必要があると考えられており、融通が利く万能アイテムとはみなされていない。だが、このスーパーモードによる瞬間的なブーストは55馬力(41KW)に達すると噂されている。

例えば、レース中にオーバーテイクを仕掛ける際や、後続車両の攻撃を交わすために作動させる、といった使い方はできない。それは、セバスチャン・ベッテルが、スパのケメル・ストレートで襲いかかるルイス・ハミルトンに対して、何も対抗策がなかった点からも伺える。

決勝で消滅するフェラーリのエキストラパワー

フェラーリ製F1パワーユニットの秘密

ライバルがフェラーリF1エンジンの合法性に疑いの目を向けるのも無理はない。メルセデスのトト・ウォルフ代表が語るように、メルセデスとホンダ、そしてルノーの3つのエンジンサプライヤーの性能は拮抗し収束つつあるが、フェラーリのみが頭ひとつ飛び抜けているからだ。

メルセデスはフェラーリの秘密を突き止めるべく、シーズン序盤から分析作業に取り組み続けてきた。トト・ウォルフ代表はモンツァにおいて、その秘密を掴んだ事を仄めかしたが、公表する事はしなかった。独AMuSはパドックで出回っている噂として、次の3つの仮説を挙げている。

  • 仮説1:ある条件下において、バッテリーからシステム側に120kWではなく160kWを供給。ただし、バッテリーをフル充電するために、直前に低速ラップが必要。
  • 仮説2:アクティベート前の低速ラップにおいて、流量測定ポイントと高圧ポンプとの間に燃料を移動。その翌周でこれを使い余計に燃料を使用。
  • 仮説3:エンジン前方のプレナムチャンバーをオイルで冷却し、この一部を燃焼に流用。

ただし、上記仮説はいずれもレギュレーション違反とみなされ得るため、AMuSはいずれの可能性も疑わしいと考えているようだ。