交渉の余地なし…F1が開催候補地に要求する驚愕の条件
リバティ・メディア体制のF1は新たなグランプリの開催候補地に、最低でも10年、という驚くべき長期の契約条件を提示しているようで、これに関して交渉の余地はないとされる。
F1の商標を管理するフォーミュラ1ライセンシング社が1月19日(金)、米国特許商標庁に「F1シカゴGP(FORMULA 1 GRAND PRIX OF CHICAGO)」を含む4つの名称を出願した事でアメリカ国内4レース目の開催の可能性が浮上した。
商標の出願は必ずしもF1シカゴGPの開催を約束するものではないが、既にF1とシカゴ市との間で初期の話し合いが行なわれたとの見方もある。
2017年に米国企業のリバティ・メディアに買収されて以来、F1はアメリカでの存在感を拡大している。当初はオースティンで1レースが行なわれていたのみであったが、買収以降はマイアミとラスベガスが立て続けにカレンダーに加わった。
米国でのF1人気の高まりと市場拡大を背景に、今回「シカゴGP」の商標出願の事実が明らかになったわけだが、ブライアン・ホプキンス市議会議員は、F1側の条件が厳しく、現時点でシカゴGPの実現の可能性は低いと考えている。
地元紙「シカゴ・サンタイムズ」とのインタビューの中でホプキンス市議会議員は「F1では通常、最低10年の契約が必要だと聞いている。これに関して交渉の余地はないようで、(市との)会話はそれ以上、進まなかった」と語った。
「最低10年」というF1側の要求について議員は断言したわけではないが、最近新たにカレンダーに加わったマイアミやロサイルも10年の長期契約で、先月、2026年からのF1スペインGP開催が発表されたマドリードでの契約期間も10年だった。
10年という長期契約は、開催地の経済・観光に対する長期的な投資の要求を意味する。また、今後新たに開催を目指す場合、年間5,000万ユーロ(約80億円)未満の開催権料で契約を結ぶのは難しいとも見られており、当座の思いだけで誘致を目指す開催地は門前払い、という方針のようだ。
シカゴでは昨年、NASCAR初の市街地レースが開催された。アメリカ第三の都市にあるグラント・パーク周辺を使ったシカゴ市街地コースは全長3.5kmと、F1サーキットとしては短く、コーナー数も12と少ない。
転用するのも一つの方法かと思われるが、ブレンダン・ライリー市議会議員は「我々がNASCARでやったこと、つまりマンホールの蓋を溶接して道の凹凸を滑らかにしてそれをコースと呼んだことは、F1では通用しない」と述べ、F1とNASCARの両方に対応する事は難しいとの見解を示すとともに「もっと複雑になる分、費用もかさむ」と付け加えた。
シカゴでは昨年9月、レッドブルが「RB18」を持ち込みマディソン・ストリートでショーランを行なった。また2019年にはF1公式ファンイベント「F1シカゴ・フェスティバル」が開催されている。