レッドブルF1予算違反、この後どうなる?監査報告後の3つのプロセスとペナルティ
F1シンガポールGPの週末より突如、飛び交った激しい憶測を経て、取り沙汰されていたように2021年の選手権を制覇したレッドブル・レーシング及びアストンマーチンの財務規定違反がFIAより指摘された。
一件はこの後、どのようなプロセスを経てペナルティが決定されるのだろうか?
1、違反是認(ABA)
監査報告を受け、両チームはまず「違反是認(ABA)」を締結するかどうかを決める必要がある。これはFIAの指摘、つまり財務規定違反があった事を認め、制裁をFIAコストキャップ管理局に委ねるというものだ。
ABAを締結できるのは手続き上の違反か、予算上限の5%未満の超過、いわゆる「軽度予算違反」の場合のみで、5%以上超過した場合の「重度予算違反」の場合は対象外だ。
財務規定第6条の各項によるとABAを締結した場合、チームは定められた費用を負担し、制裁措置および強化された監視を受け入れ、更にはFIAコストキャップ管理局の決定に対する異議申し立ての権利を放棄することになる。
これだけであれば締結のインセンティブはなくABAの存在意義がないが、当然、そこにはメリットも用意されている。
軽度予算違反の場合の罰則は以下の5つが定められているが、ABAに同意した場合、以下の2、5のペナルティが科される事はなくなる。
- 戒告処分
- ドライバー及びコンストラクター選手権ポイントの減点
- 1回以上の競技会の出場停止
- 空力を含む何らかのテスト制限
- 予算上限額の削減
つまり、科される可能性があるのは「戒告処分」か「1回以上の競技会の出場停止」、または「空力を含む何らかのテスト制限」という事になる。
2、コストキャップ裁定委員会
チームがABAに同意しない場合は財務規定第6条30項の定めに従い、以降のプロセスはコストキャップ裁定委員会に引き継がれて審理が行われる事になる。
重度予算違反の場合はABAのプロセスなく、いきなりコストキャップ裁定委員会に引き継がれる。
コストキャップ裁定委員会はFIA総会にて選出された6名から最大12名までの審査員で構成されるもので、財務規則違反の疑いのある案件の審理を行う。
審査員の任期は4年で、2回まで更新する事ができる。また2年毎に審査員の中から審問委員長と副委員長が選出される。
聴取を経て多数決で裁定が下される。決まらない場合は審問委員長に追加の1票が与えられる。機密情報を除き、コストキャップ裁定委員会は決定内容とその根拠を公表する。
3、ICAへの控訴
コストキャップ裁定委員会の決定に不服の場合、チームはFIA国際控訴審判所(ICA)に控訴する事ができる。
フランス・パリに設けられているICAは、FIAの諸規則に関連する紛争や対立を裁定する最後の審判で、異なる国々から選ばれた18名の正委員と、それと同人数かつ同国籍の代理委員から成る。