アイザック・ハジャー(レーシング・ブルズ)、ガレージ内で準備を進める様子、2025年3月14日(金) F1オーストラリアGPフリー走行(アルバート・パーク・サーキット)

勢力図は変わる? 全チームのF1開幕アップグレード詳細―角田裕毅のレーシングブルズは限定的

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2025年シーズンの幕開けとなるオーストラリアGPに向け、プレシーズンテストで好調だったマクラーレンを筆頭に、トップチームからミッドフィールドまで、全チームが改良パーツを携えメルボルンに乗り込んだ。

国際自動車連盟(FIA)が発表したアップグレード情報を元に、各車の変更点を以下にまとめた。ただし、FIA発表の内容には不明瞭な点があり、一部のチームは昨年の最終戦アブダビGP以降の変更点を、マクラーレンやウィリアムズなどはプレシーズンテスト後の変更点のみをリストアップしているようで、情報の一貫性に欠ける点があることに注意が必要だ。

マクラーレンMCL39

マクラーレンMCL39のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

マクラーレンMCL39のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

昨年のコンストラクターズ選手権王者、マクラーレンの変更は限定的。発表された内容的に、プレシーズンテスト後の変更点だろう。

今回のアップデートは主に、アルバート・パーク・サーキットの特性に最適化する目的で実施されたもので、空力性能の向上を狙った変更はフロントブレーキダクトのウイングレット形状のみとなっている。

また、チームはリアのビームウイングに関して、シングルエレメントとダブルエレメントの両バージョンを準備。状況に応じた調整を可能とした。

フェラーリSF-25

フェラーリSF-25のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

フェラーリSF-25のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

フェラーリは今季に向けて、フロントサスペンションをプッシュロッドからプルロッドに変更した。これにはフロントウイングとの相互作用を高め、後方に流れる気流を最適化する狙いがある。

これに合わせて、サイドポッドを側面・上面の両方でよりコンパクトに設計。さらに、エンジンカバー中央のルーバーを含む冷却排気口を最適化し、フロアやフロアエッジ、さらにはリアエンドとの相互作用を向上させた。

また、改良型ビームウイングを含む新しいリアウイングが導入されており、車体全体の空力効率の向上が期待される。

レッドブルRB21

レッドブル・レーシングRB21のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

レッドブル・レーシングRB21のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

昨年型RB20はバランスとセットアップウインドウの狭さに課題を抱えていた。これを受け、レッドブルは車体全体を大幅に見直した。公表されたアップデートの数は、13箇所のハースに次ぐ全チーム2番目の多さだが、これはRB20からの変更点と推測される。

フロント側では、フロントウイングを再設計。各エレメントにかかる荷重を再分配し、ダウンフォースを向上させつつ、気流の安定性を確保した。合わせてノーズも改良。ウイングエレメントとの接合部の形状を変更した。さらに、フロントサスペンションの形状変更を通して、ローカルロード(局所的なダウンフォース)を増強した。

圧力分布を最適化し、ダウンフォースを向上させつつ気流の安定性を維持すべく、フロアは全面改訂された。サイドポッドの形状がわずかに変更されたのは、内部の冷却コンポーネントの配置変更に伴う措置で、空力的ゲインを追求した結果ではないという。

ボディワークの変更に合わせてリアサスのフェアリング形状、ビームウイング、リアウイングにも調整の手が加えられた。

メルセデスW16

メルセデスW16のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

メルセデスW16のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

メルセデスはサイドポッドのインレット形状を改良し、冷却性能と床下のエアフローを強化。加えて、フロントサスペンションのトラックロッドの位置を下げ、フロアへの空気の流れを改善した。

また、サイドポッドのアンダーカットを拡大。ビームウイングの断面形状も再設計した。
さらに、効率的なダウンフォース生成を目指した新型リアウイングを導入した。

アストンマーチンAMR25

アストンマーチンAMR25のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

アストンマーチンAMR25のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

発表されたアストンのアップデート数はレッドブルと同一の12箇所に及んだ。変更内容はプレシーズンテスト後ではなく、昨シーズン最終戦以降のものとなる。

ノーズを2024年型よりも長くし、フロントウイングの前方エレメントに接続。ウイングの荷重分布を改善し、周囲のエアロパーツとの相互作用を向上させ、全体的なパフォーマンスを向上させた。

また、ブレーキダクトのスクープ形状を変更することで冷却効率を向上させているが、これは同時に局所的なダウンフォースの増加を狙ったものでもある。

後方へ流れる気流の改善を目的に、サイドポッド・インレットおよび冷却ルーバーを改良し、フロア全体の形状変更に合わせて4本のフロアフェンスを再配置。さらに、リアサスのフェアリングを変更することで、後方のダウンフォースを強化するとともに、新型リアウイング&ビームウイングの組み合わせで空力効率を向上させた。

アルピーヌA525

アルピーヌA525のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

アルピーヌA525のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

アルピーヌは、サイドポッドのインレット位置を上方に移動し、エアフローの改善を図った。また、リアウイングの翼端板を調整し、空気の流れを最適化。同様に、リアサスペンションのフェアリングにも手を加えた。

フロアボディの変更は単にダウンフォースの増強を目的としたものではなく、エアロバランスの最適化を追求しつつ、空力効率の向上を実現した。

ハース

ハースVF-25のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

ハースVF-25のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

ハースは後方へと流れる空気を最適化すべく、フロントウイングおよび翼端板を変更し、フロア全体のパフォーマンス向上を目的にフロアデザインも刷新。これに伴う調整のためにフロアエッジにも手を加えた。

サイドポッド・インレットは空気抵抗低減のために前方に移動され、アンダーカットは車体側面後方まで延長された。また、エンジンカバーもコンパクト化された。いずれもリアへ流れる気流の最適化を狙ったもので、これに合わせてリアウイング翼端板の開口部も拡大されており、ドラッグ低減への努力が垣間見える。

レーシング・ブルズVCARB 02

レーシング・ブルズVCARB 02のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

レーシング・ブルズVCARB 02のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

角田裕毅擁するレーシング・ブルズの改良は限定的だ。発表されたアップグレードのエリアは3箇所のみと少ないが、これは昨年最終戦以降の変更点と見られる。

サイドポッドの曲線形状を変更し、オーバーバイト型のインレットを採用。フロアやリアウイングのダウンフォース効率を高めるべく、フロントウイングのメインプレーンとフラップ、翼端板も改良し、よりクリーンなエアフローを実現した。

新しいエアロパッケージに合わせて、アームの角度・向きを変更するなどフロントサスペンションも調整されており、ダウンフォースを増強しつつも空気抵抗の増加を抑え、空力効率を高めることを目指した。

ウィリアムズFW47

ウィリアムズFW47のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

ウィリアムズFW47のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

新しい冷却ルーバーパネルとエンジンカバーは、暑いメルボルンの気候に対応するためのもので、パフォーマンス向上を狙ったアップデートは3箇所に留まる。

フロントウイングの細部に調整が加えられ、翼端板はより直線的な形状となった。これによりウイングから発生する直接的なダウンフォースを向上させたが、これは同時に、床下の空力効率を高めるエアフローを形成し、車体全体のダウンフォースの底上げを図るものでもある。

サイドポッドのアンダーカット形状を見直すとともに、サイドポッド全体の幅を拡大。リアウイングやフロアエッジ周辺の空力効率の向上を図った。

ザウバーC45

ザウバーC45のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGPcopyright Formula1 Data

ザウバーC45のアップデート箇所、2025年F1オーストラリアGP

コンストラクターズ選手権最下位脱出を目指すザウバーは、エンジンカバーとフロアデザインを全面改良し、ダウンフォースの安定性を改善。前後ウイングの形状も変更し、エアロパッケージ全体との統一性を高めた。

ハンドリング性能とメカニカルグリップの向上に向けて、フロントサスペンションを全面的に刷新。また、冷却システムのレイアウトを見直して冷却効率の向上を実現するとともに、ギアボックスケースの設計変更などを通して軽量化を達成した。

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