隊列をなしてホームストレートを走行する2019年のF1マシン、バルセロナ合同テストにて
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空力規約変更の成果は?2019年のF1は本当にオーバーテイクが増えるのだろうか?

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2019年シーズンのF1の注目点の一つは、トラック上でのオーバーテイクが増加するかどうかだ。F1とFIA国際自動車連盟は、接近戦が減少している現状を打破すべく、エアロダイナミクス関連のレギュレーションを改定した。

規約変更の核となるのは、マシン後方へと吐き出される後方乱気流の抑制と、DRS効果の向上だ。アウトウォッシュと呼ばれるダーティーエアが、後続車両のグリップレベルを低下させている事に気づいたワーキンググループは、これを減らすべく、フロントウイング周りを中心にマシン全体のエアロを変更。更に、ドラッグ・リダクション・システム=空気抵抗削減デバイスの機能効果を上げるため、リアウィングのフラップ可動域を増加させた。

2019年マシンを実際にコース上で走らせたドライバー達はどの様に感じているのだろうか? カタロニア・サーキットで開催されたF1バルセロナ合同テストでステアリングを握ったドライバー達は、一部を除き、総じて良い感触を得ているようだ。

「今年のクルマは走っていて本当に凄く楽しい」ハースのケビン・マグヌッセンは、規約変更の効果は絶大との認識を示した。「前のマシンを追いかけることが出来たし、昨年よりも遥かに気分が良かった」

「多くの人が大した違いはないはずだと言っていたし、確かにその通りではあるんだけど、僕は実際に前のマシンに接近して走る事ができた。前走車よりかなり速く走れていたし、最終的に捕らえて追い抜かす事が出来た」

「多分僕のほうが2秒位速かったはずだから、このレベルであれば昨年でもオーバーテイク出来たと思うけど、他の車の後ろで走っている時の感触が全然違うんだ」

「マシンの感触には一貫性があり、そして安定していた。これが他のサーキットでも同じかどうか興味深いね。コースによって要素が違うから、他のトラックではまた違った状況になる可能性がある。でもファーストインプレッションは良い」

マグヌッセンと同じ様に、レーシングポイントのセルジオ・ペレスもまた、レギュレーション変更の成果を強調。追従走行の際のフロントのグリップ低下に歯止めがかかっているという。

「ダウンフォースの損失が少なくなったのは間違いないと思う。現時点ではルール変更は意図通りに機能してると思うし、この点に関してF1は見事な仕事をしたと思う。DRSの効果が大きくなり、加えて前のクルマに接近出来るのであれば、オーバーテイクに必要となるペースがこれまでよりも少なくて済む」

マグヌッセンとペレスがポジティブな反応を示した一方で、ルノーR.S.19に乗るダニエル・リカルドとニコ・ヒュルケンベルグは懐疑的な姿勢を見せている。

「2018年と比べるとフィーリングが良くなってるのは確かだけど、現時点ではあまり期待し過ぎない方が良いかなって思ってる」とリカルド。良い手応えは得ているようだが、先の二人と比べると慎重だ。「(効果が出ているのかどうかがハッキリするのは)これからだからね。でも改善している証拠だと思いたい」

「他のクルマの後ろについて走る事はできなかった」とヒュルケンベルグ。「何回かスリップストリームを使える機会があったけど、オーバーテイクするのは難しいという感触を持ってる」

F1と同じ様に、オーバーテイク回数の増加を目指した米インディカーシリーズは昨年、ダウンフォースの大部分をフロアで稼ぐ仕様の全車共通のエアロパッケージを導入した。その結果、総ダウンフォース量は2割近く下がったものの、追い抜きの阻害要因となるマシン後方への乱流が減少。2018年の開幕戦では366回ものオーバーテイクが生まれ、インディカーの新記録を更新している。