フォーミュラE選手権に参戦するアウディ・スポーツ・アプト・シェフラーのダニエル・アプトcopyright Formula E

ダニエル・アプト、替え玉スキャンダルでアウディ契約解除…問題行動へと至った理由を説明

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ダニエル・アプトは5月26日(火)夜にビデオメッセージを公開し、フォーミュラE選手権公式のバーチャルレース「Race At Home Challenge」でのスキャンダルを謝罪すると共に、”ゴーストドライバー”を使うに至った理由を説明した上で、アウディ・スポーツとの契約を事実上打ち切られたと示唆した。

プロのシムレーサーに参戦を依頼

フォーミュラEのシムレース「Race at Home Challenge」の第5戦で競い合うストフェル・バンドーンとダニエル・アプト

27歳のドイツ人ドライバーは5月23日に行われた第5戦ベルリンでの仮想レースで、自身の代わりにプロのシムレーサーであるロレンツ・ホーリングにステアリングを握らせた。文字通り、これまでとは”別人”のパフォーマンスを発揮したアウディ66号車は、3位でチェッカーフラッグを受けた。

シミュレーションゲームの世界は独自の論理と物理法則で成り立っており、如何に現実世界のトップドライバーであっても、シムレース界のトップドライバーに太刀打ちすることは難しい。

突如として競争力を付けた66号車について、ストフェル・バンドーンやジャン=エリック・ベルニュは替え玉ではないかとの疑念を表明。調査を終えたスチュワードは、実際にレースに参加していなかった事を突き止め、アプトに対して失格処分を言い渡すと共に、任意の慈善団体に1万ユーロを寄付するよう命じた

これを受けてアウディは26日(火)に声明を発表。「誠実さ、透明性、そしてルールへの一貫した遵守性はアウディの最優先事項だ」として、5シーズンに渡って苦楽を共にしてきたアプトを停職処分とした事を明らかにした。

騙す意図なし…ファンを楽しませたかった

アプトは14分42秒に渡る映像の中で、Race At Home Challengeの目的は「ファンを楽しませることにあった」と強調。バーチャルレースのリザルトは自身にとって「全く重要ではなく」、決して視聴者やライバルたちを欺こうとしたものではないと主張した。

自身に代わってホーリングを走らせた理由については、シムレーサーがリアルなプロドライバー相手に何が出来るかを示す事でファンを楽しませたかったと説明。更に「1000人の視聴者を前に、ストリーム上でこのアイデアを明かしていた」として、隠したり騙す意図はなかったと釈明した。

更にアプトは「行き過ぎだった。振り返ってみると、状況の深刻さと結果について十分に考えていなかった。大きな間違いを犯した。僕は自分の過ちを認め、受け入れ、自分がしたことの結果について全て責任を負う」と述べ、改めて謝罪の言葉を口にする一方で「シムレースは現実のレースと何の共通点もなく、アクシデントも多く、誰もが好き勝手に走り、ゲーム上のエラーがあった」とも語り、”勘違い”を誘発する土壌があったと主張した。

一時の過ちとは言え、このイベントがフォーミュラEの”公式イベント”として行われ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに係る国際連合児童基金(ユニセフ)の活動支援の一環であった事が、事態をより深刻な問題へと変貌させた。

アウディからの停職処分については「もはやフォーミュラEで共にレースをする事はない。協力関係は終わった」と述べ、実際には停職ではなく事実上の契約解除だと仄めかし、「人生において人は間違いを犯すものだ。多分これが底辺だろう。僕はまた立ち上がる」と述べ、再起を誓った。

アウディの処分に疑問を呈するドライバー達

アウディ・スポーツ・アプト・シェフラーのダニエル・アプトとルーカス・ディ・グラッシ
アウディ・スポーツ・アプト・シェフラーのダニエル・アプトとルーカス・ディ・グラッシ

アプトを停職処分とするとの厳しい声明発表に対して、2度のフォーミュラEチャンピオンであるベルニュは、ソーシャルメディアを通じて「深刻に受け止められるべき問題ではあるものの、結局のところこれはゲームだ」と述べ、アウディの対応は過剰だと非難した。

DSテチーターからフォーミュラEに参戦するアントニオ・フェリックス・ダ・コスタもアウディに批判的なようだ。ダ・コスタはアウディの発表を受けて「さよならTwitch、さよならストリーム…。僕は抜けるよ。もう二度と使わない」と投稿した。

シムレースでの軽率な行為が問題となった事例には、インディカーの「iRacing Challenge」最終戦でのランド・ノリスに対するシモン・パジェノーのアクションが記憶に新しい。「インディ500王者の走行妨害に批判集中…“紛い物”にされたシムレース」で言及したように、本件もまた”認識の相違が生み出した誰にとっても不幸な状況”である可能性がある。

結果として不正行為を働いたアプトに対し、アウディが事実上の契約解除を行使した事は、シムレースが世界的認知獲得へと至る過程において生じたエポックメイキングとして歴史に刻まれる事だろう。

本来「ジャン=エリック・ベルニュ」とすべきところを「ルーカス・ディ・グラッシ」とした箇所がありました。訂正してお詫び申し上げます。(5月27日12:00 編集部)