レッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンと父ヨス・フェルスタッペン、2021年12月9日F1アブダビGPにて
Courtesy Of Red Bull Content Pool

2世F1ドライバーとしてのフェルスタッペンの優位性を指摘するデイモン・ヒル

  • Published:

1996年のF1ワールドチャンピオン、デイモン・ヒルは、2世ドライバーであるが故に持つマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)の優位性を指摘する。61歳の元F1ドライバーは父ヨス・フェルスタッペンの存在を重く見ている。

フェルスタッペンは17歳166日という史上最年少記録でF1デビューを果たし、僅か1年後にはダニール・クビアトと交代する形でレッドブルに昇格。その初戦スペインGPを制してF1史上最年少優勝を飾った。

18歳227日というF1史上最年少優勝記録を打ち立てたレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンと父ヨス・フェルスタッペン、2016年5月15日F1スペインGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

18歳227日というF1史上最年少優勝記録を打ち立てたレッドブル・レーシングのマックス・フェルスタッペンと父ヨス・フェルスタッペン、2016年5月15日F1スペインGP

大雨に見舞われた同じ年のブラジルGPではただ1人、まるでドライ路面を走っているかの如き神がかった走りを披露し、2年目にしてレジェンド、アイルトン・セナの再来とまで高く評価されたものの、V6ハイブリッドはメルセデスの支配下にあり、タイトル獲得には8年を要した。

フェルスタッペンの天性の才については様々な指摘があるが、ヒルは元F1ドライバーである父ヨスの厳しい指導を幼少の頃から受けてきた事がF1での成功要因の一つだと考えている。

ヒルはSky Sportsの中で「レーシングドライバーになるというファンタジーや夢を信じるのはとても簡単だが、ヨスのような厳しい現実を知っている人が周りにいる事が必要だと思う」と指摘した。

レッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューイと談笑するデイモン・ヒル、2011年7月3日グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

レッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューイと談笑するデイモン・ヒル、2011年7月3日グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードにて

ヒルはフェルスタッペンと同じ2世F1ドライバーだが、2度のF1王者、グラハム・ヒルが飛行機事故で亡くなった際、デイモンは15歳で、レーシングドライバーとしてのキャリアを歩み始めたのは父の死後の事であった。

だがそれでも、幼少の頃から父グラハムの周りにいたドライバー仲間に囲まれるという他では得難い環境で育った。こうした指摘はヒルならではと言えるだろう。

なおフェルスタッペンもまた、度々家族旅行に行くなど父と深い親交があったミハエル・シューマッハをF1ワールドチャンピオンと知らず、親切にしてくれる一介の「おじさん」と慕うなど、トップドライバーに囲まれ少年期を過ごした。

ヨス・フェルスタッペンは都合8シーズンに渡って100戦以上のF1グランプリに参戦したものの、表彰台は2回、ランキング最高位はデビューイヤーの10位と、目立った記録を残す事はなかったが、息子に対する時に冷酷とも言える厳しい独特な教育はよく知られるところだ。

実際フェルスタッペンは父の教育法について「当時は少し厳しいと思ったけど、昔はみんな、あんな感じだったんだと思って気にしてないし、今となっては笑い話だよ」と述べ、父親のスパルタ教育は自身にとって「必要」なものだったと回顧している。

2014年8月22日のF1ベルギーGPフリー走行を見学に訪れたマックス・フェルスタッペンとヨス・フェルスタッペン、トロロッソのガレージ内にてCourtesy Of Red Bull Content Pool

2014年8月22日のF1ベルギーGPフリー走行を見学に訪れたマックス・フェルスタッペンとヨス・フェルスタッペン、トロロッソのガレージ内にて

フェルスタッペンが最終周でルイス・ハミルトン(メルセデス)を抜き去り、ドラマティックな逆転タイトルを掴んだ2021年のアブダビGPでは、最終盤のセーフティーカー解除に際してFIAレースディレクターを務めるマイケル・マシが重要な役割を果たす事となった。

メルセデスはマシに公然と怒りをぶつけ、FIAは2022年に向けてマシを解任し、後任にエドワルド・フレイタスとニールス・ヴィティヒを据える新しい人事を発表した。

また「バーチャル・レース・コントロール・ルーム」の設置を含むレースディレクター支援のための体制が整備され、外部からのプレッシャーを排除して公平な意思決定を確保すべく、チームがレース中にレースディレクターと直接無線でコミュニケーションを取る事が禁止された。

マシの解任についてはフェルスタッペンを含むレッドブル陣営に加えて複数のドライバーが批判的な声を上げているが、ヒルもまた、ポッドキャスト「Beyond the Grid」の中でFIAの決定に疑問を投げかけた。

ヒルは個人的な意見として、問題は「彼の仕事を取り巻く状況や構造、外野が彼に期待した仕事のやり方」にあったと指摘。更に「一部のチームのボスがプレッシャーをかけていたことは明らかだった」として「それが修正されたのなら、マイケルを排除する必要があったのかどうか分からない」と語った。