タイヤスモークを上げるレッドブルのマックス・フェルスタッペン、2022年3月20日F1バーレーンGP決勝レースにて
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フェルスタッペン、”残酷”なDNF前から問題激発のレッドブルRB18…ピットではトラックロッドが

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燃料供給に関わるメカニカルトラブルによって2022シーズンの開幕バーレーンGPで衝撃のリタイヤを喫する前から、レッドブルのマックス・フェルスタッペンは幾つものトラブルに苦しんでいた。

タイトル防衛戦に臨む24歳のオランダ人ドライバーは3月20日(日)のシーズン開幕バーレーンGPの決勝レースで終始2番手を走行していたものの、残り3周というところでパワーを失い、惰性でピットへと吸い込まれていった。

結果、シャルル・ルクレールは悠々とポール・トゥ・ウインを飾り、カルロス・サインツが2位表彰台と、スクーデリア・フェラーリに1-2フィニッシュを許す事となった。

決勝レースに備えてレッドブルRB18に乗り込むマックス・フェルスタッペン、2022年3月20日F1バーレーンGPCourtesy Of Red Bull Content Pool

決勝レースに備えてレッドブルRB18に乗り込むマックス・フェルスタッペン、2022年3月20日F1バーレーンGP

燃料供給障害で”残酷”な結末に

これには今季より義務付けられた10%のエタノールを含むE10燃料が関連しているのではとも取り沙汰されているが、チームは燃料ポンプのトラブルが疑われると発表した。

チーム代表のクリスチャン・ホーナーはSky Sportsとのインタビューの中で「リフトポンプなのか、コレクターなのか、そのラインに沿った何かなのか、まだ正確には分からない」と述べ、レッドブル・レーシングのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、2台共に十分な量の燃料がエンジンに供給できない問題を抱えていたと説明した。

燃料トラブルはフェルスタッペンに留まらず、チームメイトのセルジオ・ペレスから2位表彰台を奪い去った。ホンダ製F1パワーユニット技術を採用する2台は揃って同じ問題に見舞われ、チェッカーフラッグを受ける前に姿を消した。

「我々にとって残酷なレースになってしまった。まとまったポイントが見えていたものの、最後の数周で蒸発してしまったわけだからね」とホーナーは付け加えた。失ったポイントは計30ポイントに相当する。

トラックロッドの破損

ピエール・ガスリー駆るアルファタウリAT03の炎上に伴い導入された最終盤のセーフティーカー(SC)ラップ中には、フェルスタッペンから「ステアリングが重い」と無線報告が飛んでいた。当初は油圧系統のトラブルかと思われたが、そうではなかった。

ホーナーによれば、SC導入に伴い実施したピットストップでクルマをジャッキから下ろした際にトラックロッドが破損した可能性があると言う。フェルスタッペンは次のように述べ、詳しい状況を説明した。

「なぜそうなったのか完全に理解しているわけじゃないけど、タイヤを履き替えて走り出した後にそうなったのは間違いない」

「ステアリング・ホイールが重くなったわけじゃなく、ステアリングが切れなくなったんだ」

「スピードが上がれば上がるほど、クルマの反応が遅れているように感じられたから右にハンドルを切ってみたんだけど、やっぱり反応するまでに暫く時間が掛かった」

「おかげでリスタートも上手くいかなかった。スロットルを踏み込みたいのにステアリングが切れないんだからね」

ステアリングを戻せなければアクセルを踏み込むことは出来ない。リタイヤする直前にサインツに追い抜きを許したのは、燃料供給の滞りによるパワーダウンに加えて、ステアリングの問題で思うようにドライブできていなかったためだった。

バーレーン・インターナショナル・サーキットのターン1でシャルル・ルクレール(フェラーリ)をオーバーテイクするレッドブルのマックス・フェルスタッペン、2022年3月20日F1バーレーンGP決勝レースにてCourtesy Of Red Bull Content Pool

バーレーン・インターナショナル・サーキットのターン1でシャルル・ルクレール(フェラーリ)をオーバーテイクするレッドブルのマックス・フェルスタッペン、2022年3月20日F1バーレーンGP決勝レースにて

バランスとブレーキにも問題が…

フェルスタッペンが抱えていた問題は燃料フローとステアリングに留まらなかった。ルクレールとのバトルの過程でペースを緩めたのはブレーキの冷却に問題を抱えていたためで、更にはマシンバランスにも問題が発生していた。

レッドブルは日曜のレースペースに絶対的な自信を示していたが、結果としてはフェラーリからポジションを奪うに十分な速さはなかった。これについてフェルスタッペンは「ペースそのものが金曜の段階で期待されたものとは違っていたんだ」と語った。

「でも、こういうことは起こり得るものだし最初のレースウイークエンドだから、思うようなバランスが得られないこともあるかもしれない。それでも僕らは2番手にいたわけで、戦略的にもっと良い仕事ができたんじゃないかとも思う」

「結局はステアリングに問題が出て、ブレーキにも問題が出て、アタックするとオーバーヒートしてしまうから、シャルルを先に行かせるしかなかった」

「ステアリングの問題もあってクルマの挙動が不自然だったからフィーリングが掴めず、ドライビングしにくかったのもある」

「でも何よりも深刻なのはその後に起きた問題だった。燃料がエンジンに供給されず、全てが止まってしまったからピットレーンに戻らなきゃならなかった」

「テストや週末が好調だっただけに、こういう事態は避けたい」

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タイトル争いの最終戦を同一ポイントで迎えた昨シーズンを経て、獲るべき時に獲る事の重大さを身を持って知っているだけに、フェルスタッペンは「最終的に一番大きな問題は、競争力あるクルマがありながらもゼロポイントに終わった事だと思ってる」と付け加えた。

フラストレーションが溜まる結末となったが、フェルスタッペンはフェラーリを3年ぶりの1-2フィニッシュに導いた開幕ウィナーのシャルル・ルクレールを笑顔で祝福した。

次戦サウジアラビアGPの開幕までは後5日しか残されていない。チームは超高速のジェッダ市街地コースでの戦いまでに一連の問題を解決できるだろうか?

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