レッドブル・リンクでトラックウォークを行うレッドブル・ホンダのアレックス・アルボンcopyright Pirelli & C. S.p.A

“不確実性”はレッドブル・ホンダにとって大きなチャンス、とアルボン

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開幕戦の狼煙が上げられようとする一方で、2020年のF1カレンダーは8レースを載せた暫定版のままであり、シーズンを通してどれだけの数のグランプリが行われるのか、そしてその全てが確実に実施できるのか等、あらゆる事柄が流動的で先を見通す事が難しい。

これはフィジカル及びメンタルの調整という点でドライバーにとって大きな課題であり、各々の週末でのオペレーションやマシンの開発計画・物流といった領域において、チームの各担当者の頭を悩ませる事になるが、アレックス・アルボンは、こうした不確実性が高い状況下でのシーズンはレッドブル・ホンダにアドバンテージをもたらすと考えている。

以下、イギリスでのロックダウン生活や、連戦続きのシーズンの戦い方、フィットネスの重要性など、レッドブル・リンクでの開幕戦に先立って行われたアレックス・アルボンのインタビューを紹介しよう。

オーストラリアGPの突然の中止について

個人的には、オーストラリアでの状況は非常に特異なものだったように思う。

ウインターテストを通して、マシンだけでなく自分のメンタルやチーム全体としても準備を整える事ができていたし、あらゆる事柄が前向きだった。メルボルンでのフリー走行に向けて、興奮した気持ちのままにホテルで眠れない夜を過ごし、翌朝食事していたら「帰りの飛行機を予約したよ」って言われたんだ。一体何のためにここまで来たのかって思ったよ。

オーストリアでの開幕を待ちわびていた。ロックダウン生活を経てファクトリーに戻った初日は、休み明けの登校日のような気分だった。長い期間を経て、ようやくレースに復帰できる事になり本当に嬉しいよ。

英国でのロックダウン生活

シーズンが中断されている間、イギリスに戻って最初にしたことは、チームとして状況を確認することだった。パドックで感染が起きていたから、チームは安全を第一に自己隔離を行った。だからレースに向けた準備としては殆ど何もできなかった。

長く家に籠もる事になったわけだけど、自宅にはジムの器具がなかったからファクトリーのスタッフに集めてもらったんだ。トレーニングに必要なものは全て揃えた。健康面には問題なかったけど、遊びに行くこともできずに毎日を過ごしていたから、集中力が落ち、モチベーションを維持するのは難しかった。

クリスチャン(ホーナー代表)から電話やメールで最新の情報を貰っていたけど、チームとしての動きはその位だった。僕らはアスリートだから、自分たちの仕事として、いつでもレースができるように準備を整えていた。7歳の時にレースを始めて以来、これほど長くレースから離れた事はなかった。本当に異常な状況だった。

最も恋しかったのは?

F1マシンのスピード感や、ラップを完璧にまとめて限界までプッシュする感覚だね。自宅では味わえないから。フィルミングデーではその速さに改めて驚いたよ。「これはすごい速さだ!」ってね。

初戦で100%の準備を整える事の重要性

空白だった状態から、突然今まで経験したことがないほど忙しいスケジュールになった。レース関係者全員にとって、大変な日々になるだろうね。

レースの雰囲気も異なるだろう。このスポーツの醍醐味でもあるファンが会場にいないことも、その原因の一つだ。毎週のようにレースが続くことはチーム全員にとってタフだけど、最初の数戦をしっかりとスタートすることが重要だ。

オーストラリアは直前で中止になり走ることができなかったから、どのチームもまずは情報収集に取り組む事になると思う。最初にレースのリズムに乗ったチームが勝つだろうね。初戦に際して可能な限り多くのエネルギーを以て臨んだチームが、その後も強さを見せるはずだ。

気分はどう?準備は万全?

ブランクが長い分だけ、例え経験豊富なドライバーであっても何が起こるか分からない。鈍った腕を戻すためにフィルミングデーでドライブできて良かったよ。誰もが再開の時を待ち望んでいた事と思う。空白の期間が長く続いていたけど、F1を愛しているからこそ誰もががこれを懐かしみ、早くレースを始めたいと思っている。

同一コースでの連戦、戦い方にどう影響する?

第1レースの週末ははいつもと変わらないだろうね。FP1、FP2、FP3といったフリー走行もいつもと同じだし。大きく違うのは、最初の週末との直接比較という絶好のチャンスが得られる第2レースの週末だと思う。

リスクが高くて通常の週末には試せないような事にトライできると思う。同じサーキット、そして同じ気候。色々なことを試せるという点で、どのチームも2戦目の週末はリスクを顧みずに臨むだろうね。うまくいかなければ、開幕戦の仕様に戻せば良いんだから。

第1レースと第2レースは似た結果に終わる?

もし初戦でトップになったチームと差が大きければ、そのラップタイムを取り戻すのは難しいだろうね。そうは言っても異なる結果になる可能性も十分にあると思う。だからこそ僕らのようなトップチームは、データを分析してドライバーのフィードバックを最大限に活用し、第一レースを終えた後も改善作業に集中する必要がある。

未確定のカレンダー、どう取り組む?

まだシーズンの途中までのレースしか確定しておらず、何レースするのか、どんなサーキットに行くのか等、分からない事はあるけど、僕らの仕事に変わりはない。毎週末に最大限の力を発揮すること、それが仕事だ。

シミュレーターを使って準備を進めるような通常の週末と異なり準備にあてられる時間が少ないけど、これは僕らにとってはチャンスだと思ってる。

素晴らしいチームの条件は高い柔軟性にあると思う。これはドライバーも同じだ。優れたチームはマシンについてもコースについても素早く理解する。レッドブルは伝統的に迅速なデータ分析とスピードアップに長けたチームだ。こうした状況は、僕らにとって素晴らしいチャンスになるはずさ。

連戦におけるフィットネスの重要性

ドライバーの体力がパフォーマンスに影響することは間違いなくあると思う。最初の2戦はコーナーが少なくて楽なサーキットだし長いストレートの合間には息抜きの時間も多いから、それほどではないと思うけど、ハンガリー戦以降は状況は変わるだろうね。

もちろんレースを重ねることでスムーズに取り組めるようになる領域もあると思うけど、レースは3週間連続だから休みは殆どないだろうし、ハンガリーはフィットネスが必要とされるコースだから、影響が出るかもしれない。

レッドブル・リンクでの予選の重要性

このコースはコーナー数が少なく、マシンの性能を最大限に活用して差をつけることが難しいから、予選は例年拮抗している。それと同時に、過去2年間のマックス(フェルスタッペン)が示してきたように、決勝では何が起こるか分からない。

良いマシンがあればタイヤを温存できるし、気温が高いのも普段通りだから、これまでと比べて今年のレースに特別な点はないと思ってる。冬のテストではマシンの感触も良かったし、フィルミングデーでも全てが良い状態だったから、あとは走って確認するだけだ。

COVID-19対策の新たなプロトコルについて

非常によく準備されているように思う。かなり複雑になりそうだけど、ファクトリーのスタッフは皆、すでに適応できている。チームの努力には目を見張るものがあるね。

僕らは共に多くの国を転戦する事になるわけで、その間は外部との接触を可能な限り避けるための小さな”バブル”の中で生活する。全員が常にすべてのことに気を配る必要がある。


昨年のグランプリでは2番グリッドのマックス・フェルスタッペンが後続を3秒引き離してトップチェッカーを受け、2015年よりF1に復帰したホンダに13年ぶりの勝利の美酒を授けた。2位はシャルル・ルクレール(フェラーリ)、3位はバルテリ・ボッタス(メルセデス)という結果だった。

2020年シーズンの開幕F1オーストリアGPはレッドブル・リンクを舞台として、日本時間7月3日(金)18時からのフリー走行1で幕を開ける。

F1オーストリアGP特集