裏にアウディ…眉をひそめるボッタス「手に負えない」あまりに”唐突”なレースエンジニア交代、練習1度のみのマイアミで
5月3~5日のF1第6戦マイアミGPより急遽、新しいレースエンジニアと組まなければならなくなった事をバルテリ・ボッタス(ザウバー)が快く思っていないのは明らかだった。
ボッタスは2022年にメルセデスからスイス・ヒンウィルのチームに移籍して以来、アレックス・チャンとコンビを組んできたが、急速な”アウディ化”を背景に為す術なく、相方の交代を受け入れざるを得なかったようだ。
ボッタスが一層、不満に感じているのは交代のタイミングだった。スプリント・フォーマットが採用されるマイアミではプラクティスが僅か1時間しかなく、その上、レースが2回も行われる。
F1ドライバーにとってのレースエンジニアはコース上で最高のパフォーマンスを発揮するために不可欠な存在だ。単に技術的な知識を有するだけでなく、優れたコミュニケーション能力と戦略的思考を持ち合わせている必要があり、ドライバーとの間に深い信頼関係が求められる。
レースエンジニアの交代の理由について問われたボッタスは「んー…それはチームに向けられるべき質問だと思う。…本当に突然の変更だった」と答えた。
「スプリント週末だから、新顔と一緒に仕事をするのは、、楽じゃない。もちろん、手を尽くすつもりだし、彼は多くのサポートを受けているけど、かなり唐突だった」
チャンに一体何が起きたのだろうか?
今回の人事変更は自身の了承を得て行われたものなのかと問われたボッタスは「チームにとっての再構築の一環だと思う」と返し、次のように続けた。
「何人か人が去り、何人かが加わったりしている。これらの決定の多くは僕の手に負えないものだ。つまり、僕が決定したわけじゃない」
舞台裏の混乱の背景にあるのはアウディだ。
ザウバーは今も、スウェーデンの億万長者フィン・ラウジングが75%を保有する筆頭株主で、アウディが保有しているのは25%に留まるが、今年3月の完全買収合意を経てアウディは着実にその影響力を行使し始めている。
アウディの介入により、自身が望まない形で組織が変わっていく事についてどう感じているのか?と尋ねられたボッタスは「幾つかの変化は明らかに長期的な視点で行われたものだ。知っての通り、変化が起きている」と語った。
「さっきも言ったように、全ての決断の裏にある理由を知っているわけじゃないけど、人々が出ていったり入ってきたりしている。そんな感じだよ」
アウディの影響力行使は、4月というシーズン早期にも関わらず発表されたニコ・ヒュルケンベルグの起用にも表れている。
「もちろん、タイミン的にかなり早いし少し驚いたけど、ドライバーマーケットは動き始めているし、ある意味、理に適っていると思う」とボッタスは語る。
「彼はドイツ人だしね。アウディはドイツ人ドライバーを望んでいると明言していた」
ボッタスの契約はチームメイトの周冠宇と同じく2024年末で満了を迎える。有望な選択肢はそう多くはない。
自身の将来について問われたボッタスは「分からない。複数のチームと話をしたところ幾つかの話し合いが進んでいる事は分かってるけど。どうなるか見守ろう」と答えた。