頭を抱えるダニエル・アプト
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ゲームか否かは問題に非ず…アウディ「ダニエル・アプト追放は当然の帰結」

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フォーミュラE選手権に参戦するアウディ・スポーツは、ダニエル・アプトを追放処分とした理由をフォローアップし、ゲームか否かは問題に非ず、論点は「コンプライアンス違反」と「意図性」だと説明し、残念ではあるものの解雇は当然の帰結だと主張した。

国際連合児童基金(ユニセフ)支援の一環として開催されたバーチャルレース「Race At Home Challenge」の第5戦ベルリンでアプトは、オリバー・ローランド(日産e.dams)とストフェル・バンドーン(メルセデスベンツEQ)に次ぐ3位フィニッシュを果たしたものの、実際にステアリングを握っていたのはシムレースで生計を立てているプロゲーマーであった事がレース後の調査で発覚した。

スチュワードはアプトに失格処分を言い渡すと共に、任意の慈善団体に1万ユーロを寄付するよう命じた。アウディは「誠実さ、透明性、そしてルールへの一貫したコンプライアンスの厳守はアウディの最優先事項」であるとして、アプトの停職処分を26日(火)に発表したが、実際には事実上のチーム追放、ないしは契約打ち切りである事がアプト本人から明らかにされた。

解雇に等しい厳しい処分を受けたアプトは全面的に謝罪する一方で「騙す意図はなく、単にファンを楽しませたかった」と弁解。一部からは「ただのゲーム。行き過ぎた対応」といったアプトを部分的に擁護し、アウディの対応に疑問を投げかける声も上がった。

おそらくはこうした反応を受けての対応とみられるが、アウディは27日(水)に再び声明を発表し、アプトの事実上の解雇を公式に認めると共に、その理由についてより詳しく説明した。

「ダニエル・アプトは2014年9月のレーシングシリーズデビュー以来6年に渡って、我々のフォーミュラEチームの一員として、また、2017年秋からはアウディの公式ファクトリードライバーとして計63レースを戦ってきたが、これを以てフォーミュラEでのアウディドライバーとしての活動を終了する」

「メキシコとホームラウンドのベルリンでの2戦でアプトは素晴らしい勝利を収め、計10回の表彰台を獲得した。ダニエルと我々は成功を祝福し合い、フォーミュラEで大きな飛躍を遂げた。一時を共に過ごせた事に感謝しているし、それを誇らしく思っている」

「だがアウディでは、誠実さ、透明性、そしてルールへの一貫したコンプライアンスが何よりも重要視される。我々は過ちを許すという文化を堅持しているが、Race at Home Challengeで起きた事件はミスではなく、意図的なルール違反であった。この2つはアウディにとって大きく異なる。そのため残念ながら、出場停止以外の選択肢はあり得なかった」

表現上の誤りという可能性もありそうだが、興味深いことに声明の中でアウディは「アプトはもはやフォーミュラEでアウディのためにドライブする事はない」と述べており、フォーミュラEを除く他のレースカテゴリーでの起用については含みを残している。

アプトの後任には、アウディ所属の2度のDTMチャンピオン、レネ・ラストや、スイス出身でジオックス・ドラゴンからフォーミュラEに参戦しているニコ・ミュラーらの名が取り沙汰されている。