ニューウェイ代表就任で高まる“ホーナー加入”の現実味―アストンで進む旧レッドブル再結集の兆し

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エイドリアン・ニューウェイが2026年からアストンマーチンのF1チーム代表に就任するという発表は、一見すると不可解な人事だ。F1史上最高の空力設計者が、なぜ管理業務に時間を奪われるポストに就くのか。

だが、この人事の裏には、より大きな画が隠されている可能性が高い。ニューウェイの”チーム代表就任”は、クリスチャン・ホーナーのアストン入りに向けた”序章”ではないか――そのようなシナリオを以前の記事で記したが、その可能性がより高まった。

ニューウェイはカタールのパドックで、チーム代表職への就任は設計業務の妨げにはならないと明言した。

「設計に専念する」と断言するニューウェイ

「それ(デザイン)こそが、私が本当に取り組みたいことであり、取り組むべき仕事だ。それが私が毎朝、ベッドから起きる原動力なんだ。だから、関与を減らすつもりはない」

ニューウェイのこの発言こそが、今回の人事の本質を示している。チーム代表でありながら「設計に専念する」というのは、一見すれば矛盾する。

実際、チームはニューウェイの役割について「トラックサイドでのマシン運用を含む技術チームの指揮」と説明している。示唆的なのは、この説明が技術面に”限定”されている点だ。

スポンサー対応、メディア業務、組織全体のマネジメントといった一般的なチーム代表の仕事には触れられていない。つまり、これらを一手に引き受ける強力なリーダーが必要なことは明白だ。

ホーナーが求めるのは「CEO」レベルの権限

グリッド上で会話するクリスチャン・ホーナー(レッドブル・レーシングチーム代表)とバーニー・エクレストン(F1グループ名誉会長)、2019年12月1日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)Courtesy Of Red Bull Content Pool

グリッド上で会話するクリスチャン・ホーナー(レッドブル・レーシングチーム代表)とバーニー・エクレストン(F1グループ名誉会長)、2019年12月1日(日) F1アブダビGP(ヤス・マリーナ・サーキット)

ニューウェイの代表就任により、以前から囁かれていたホーナーのアストン入りは消滅した――そう考えるのは早計だ。実際には、むしろその可能性は高まったとも言える。

ホーナーが望むのは単なる「チーム代表」の職ではない。彼がレッドブル離脱後に関心を寄せてきたのは、チームオーナーに近い権限を伴う“CEOレベルの統治権”だ。

現代F1において、CEOに代表される「経営職」と「チーム代表」の分業が機能している例は珍しくない。マクラーレンではザク・ブラウン(CEO)がビジネス面を統括し、アンドレア・ステラ(チーム代表)が技術面とレース運営を担う。アウディではマッティア・ビノット(COO兼CTO)が技術面を統括し、ジョナサン・ウィートリー(チーム代表)がレースを指揮する。

アストンでも同様の体制が構築されつつあると見られる。ニューウェイが技術面に専念し、ホーナーがCEOレベルで組織全体を統括する――そんな青写真が透けて見える。

ニューウェイに限らず、ある種の職人仕事においては、如何に没入できる環境を整えるかが、その人材の真価を引き出せるかどうかに影響する。彼をスポンサーへの挨拶回りやF1コミッションの会議、チーム内政治といった雑務で忙殺させるのは、アストンにとって自殺行為に等しい。

自発的にホンダ連携を志願したカウエル

2018年F1スペインGP金曜会見に出席したルノーのレミ・タフィン、メルセデスのアンディ・カウエル、フェラーリのマッティア・ビノット、ホンダの田辺豊治Courtesy Of Renault

2018年F1スペインGP金曜会見に出席したルノーのレミ・タフィン、メルセデスのアンディ・カウエル、フェラーリのマッティア・ビノット、ホンダの田辺豊治

では、現チーム代表のアンディ・カウエルはどうなるのか。彼は来季より最高戦略責任者(CSO)に転身する。これは2026年から始まるホンダとのパワーユニット(PU)パートナーシップを成功させるための戦略的な配置転換とされている。

今回の人事の背景には、ニューウェイとカウエルの対立があったとされているが、ニューウェイは、カウエル自らがこの役割を申し出たと説明する。

「2026年のPUという課題に関しては、ホンダ、アラムコ、そして我々の三者間の連携という点で、彼のスキルセットがそれに完全に合致していることは明白だった。そこで彼は非常に寛大にも、”2026年の前半”を通してその業務に深く関わることを申し出てくれたんだ」

かつてPU部門の責任者としてメルセデスの黄金時代に貢献したカウエルが、ホンダとの連携に専念する。これは、日本のF1ファンにとっても心強い。

ニューウェイは、カウエルの異動が最初に決まり、その結果として代表の席が空いたため「どうせ序盤は全戦に帯同するつもりだったし、特に仕事量も変わらないから、その役割を引き受けることにした」と語った。

つまり、代表という肩書きは形式的で、実態はこれまで通り技術統括に集中するということだ。

旧レッドブル軍団、着々と集結?

F1ワールドチャンピオン獲得記念撮影に臨むマックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダのメンバー、イギリス・ミルトンキーンズのファクトリーで行われた2021年12月15日の凱旋祝賀会にて (1)Courtesy Of Red Bull Content Pool

F1ワールドチャンピオン獲得記念撮影に臨むマックス・フェルスタッペンとレッドブル・ホンダのメンバー、イギリス・ミルトンキーンズのファクトリーで行われた2021年12月15日の凱旋祝賀会にて (1)

水面下では、旧レッドブル軍団の再集結が進んでいるようだ。

アストンは今月、レッドブルで17年間にわたり生産・サプライチェーン&ロジスティクス部門の責任者を務めてきたポール・フィールドを最高執行責任者(COO)として迎え入れた。これはニューウェイの肝入り人事と見られている。

フィールドは、レッドブル黄金時代のマシン生産とロジスティクスを支えた実力者であり、彼の加入はニューウェイが“かつての勝ちパターン”を再現しようとしている証拠と言える。

そして、その成功の方程式に欠かせなかった”相棒”との関係修復も進んでいるようだ。

ニューウェイのレッドブル離脱の背景には、ホーナーとの関係悪化があったとされる。だが、この夏、二人が英ロックバンド「オアシス」の再結成コンサートを共に訪れる姿が目撃されたと伝えられている。さらに、ニューウェイは自身のチーム代表就任発表前夜に、ホーナーをアストンマーティンのファクトリーへ案内したとも報じられている。

これらのエピソードは、二人の関係が修復に向かっていることを示唆するだけでなく、アストンでの「最強タッグ再結成」という可能性に現実味を添える。

エイドリアン・ニューウェイとクリスチャン・ホーナーCourtesy Of Red Bull Content Pool

エイドリアン・ニューウェイとクリスチャン・ホーナー

2026年シーズン中盤に合流か

ホーナーは、レッドブルとの契約条項により一定期間、他チームで働くことができない。だが、2026年シーズンが本格化する頃には、その制約も解ける。

もしホーナーがアストンに加わるとすれば、タイミングは2026年シーズン中盤以降となるだろう。その頃には、ニューウェイが設計したマシンが既にサーキットを駆け抜け、カウエルがホンダとの連携を深め、フィールドが生産体制を整えている。

そこにホーナーがCEOレベルで加わり、組織全体を統括する――この構図が実現すれば、アストンは「旧レッドブル軍団」による最強体制を再現することになる。

そして、もし2026年のレッドブルRB22が競争力不足に陥り、解除条項を使ってフェルスタッペンが移籍してくるようなことがあれば――。

緑色のウェアを着た「かつての最強タッグ」がピットウォールに並ぶ日は、決して遠くないかもしれない。一方で、マクラーレンの元チーム代表アンドレアス・ザイドルや、今年初めの再編で実質的に降格となったマイク・クラックが、ニューウェイを補完する役割を担う可能性も残されている。

いずれにせよ、今回の人事は単なる序章に過ぎず、さらなる体制発表が行われる可能性は高いと言える。

アストンマーチンのマイク・クラック代表、2023年2月23日F1プレシーズンテストにてCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンのマイク・クラック代表、2023年2月23日F1プレシーズンテストにて

レース前のグリッドに立つマクラーレンのアンドレアス・ザイドル代表、2022年7月31日F1ハンガリーGPCourtesy Of McLaren

レース前のグリッドに立つマクラーレンのアンドレアス・ザイドル代表、2022年7月31日F1ハンガリーGP

F1カタールGP特集