
鬼才ニューウェイ、アストンF1チーム代表に就任―カウエルとの確執を経て全権掌握…2026年ホンダ時代へ新体制
アストンマーチンF1チームは、第23戦カタールGPを週末に控えた2025年11月26日、チームのマネージング・テクニカル・パートナーを務めるエイドリアン・ニューウェイが、2026年シーズンより新たなチーム代表に就任すると正式発表した。
「空力の鬼才」と称されるF1史上屈指のデザイナーが、技術畑の枠を超えてチーム運営のトップに立つ――英国シルバーストンのチームは、この異例の体制でホンダとのワークス参戦初年度に挑む。
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
英国シルバーストンに位置するアストンマーチンF1チームのファクトリー「AMRテクノロジーキャンパス」の外観
背景に「方向性の不一致」
今回の組織改革の背景には、現CEO兼チーム代表アンディ・カウエルとの間で生じた“方向性の相違”があったと見られている。
ニューウェイは今年3月の加入後、チームの現状に率直な評価を下してきた。モナコGPではシミュレーション設備が「基準以下」だと公然と指摘し、その筋の専門家であるジャイルズ・D・ウッドを招聘するなど、改善点を示すだけでなく、具体的な改革にも踏み込んだ。
内部プロセスの見直しを進め、抜本的な変革を求めた結果、空力ディレクターのエリック・ブランディンを含む上級スタッフ7名が離脱する事態にも発展した。
成功のためにはチーム首脳陣が一枚岩であることが不可欠であり、カウエルとの対立が体制変更を後押ししたと見られる。
カウエル、ホンダ連携を担うCSOへ
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited
ピットウォールからガレージを見守るアストンマーチンのアンディ・カウエルCEO、2025年10月3日(金) F1シンガポールGPフリー走行(マリーナベイ市街地コース)
ニューウェイの就任に伴い、過去14ヶ月にわたりチーム代表を務めてきたカウエルは同職を退き、新たに最高戦略責任者(チーフ・ストラテジー・オフィサー/CSO)に就任する。
事実上の降格とも取れるが、メルセデスでパワーユニット部門を率いた経歴を考えれば“適材適所”の人事とも言える。カウエルは今後、新たなエンジンパートナーであるホンダや燃料サプライヤーのアラムコとの協業強化に専念する。
カウエルは「フルワークス体制に向けて必要な組織改革を進め、エイドリアンと共に基盤を築いた今、CSOという別の役割を担うのは適切な決定だ。チーム、ホンダ、アラムコ、バルボリンの技術パートナーシップの最適化や、新しいPU、燃料、シャシーの円滑な統合に向けた取り組みを進めていく」とコメントした。
一方でニューウェイは、チーム代表の役割を担うことを「楽しみにしている」としつつ、「アンディが担う新しい役割、つまり3つの主要パートナーとの間で新しいPUの統合に集中する仕事は、この歩みにおいて極めて重要なものになるだろう」と述べた。
ストロール、”ニューウェイ代表”に期待
カウエルの後任を巡っては、元レッドブル代表クリスチャン・ホーナーや、元マクラーレン代表アンドレアス・ザイドルといった大物の名も取り沙汰されていた。だがアストンマーチンは最終的に、ニューウェイ本人に指揮権を委ねる決断を下した。
チームオーナーのローレンス・ストロールは「アンディ・カウエルは今年、素晴らしいリーダーシップを発揮してくれた」と称えながらも、「この変更はチームの利益を第一に考えて双方が合意したものだ」と説明。そして代表就任によってニューウェイは「その創造的で技術的な専門性を最大限に生かせるはずだ」と期待を寄せた。
2026年、アストンマーチン・ホンダは、名実ともに「ニューウェイのチーム」として走り出すことになる。