アストンマーチンF1「AMR22」2022年2月11日シルバーストン・サーキットでのシェイクダウンにて (16)
Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンF1「AMR22」 シーズン中にコンセプト変更もあり得る!?柔軟性確保のマシン設計

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驚くべき事にアストンマーチンF1チームは、既に発表済みの新車「AMR22」の空力コンセプトが誤りだと判明した場合、2022年シーズン中にそのアプローチを変更する事も辞さない姿勢を見せており、これに備えて設計上の”柔軟性”を確保しているという。

チームは先週の木曜に2022年シーズンの新たなチャレンジャーを発表した。それはレッドブルのような新たなリバリーを施しただけの偽物ではなく、テストと開幕に向けた完成された正規のマシンで、マクラーレンに先んじて実車発表第一号となった。

英国ゲイドンのアストンマーチン本社で開催された2022年2月10日の新車発表イベント風景 (1)Courtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

英国ゲイドンのアストンマーチン本社で開催された2022年2月10日の新車発表イベント風景

チームは早くも英国シルバーストン・サーキットでシェイクダウンを行いデータを収集すると共に、セバスチャン・ベッテルとランス・ストロールは10日後に迫るバルセロナテストに向けて既にその感触を確かめている。

搭載されるのはメルセデスAMG F1の最新作「M13」だ。アストンマーチンはトランスファラブル・コンポーネント規定を利用して、パワーユニットだけでなくギアボックスとリアサスペンションもメルセデスから購入した。フロントサスペンションは自前だ。

AMR22で特に目を引くのはサイドポッドだ。冷却システム全体を持ち上げる事でフロアとの間に空間(アンダーカット)を設けた。更に、ハースVF-22やマクラーレンMCL36のようなリアに向けて幅が狭くなる近年を踏襲するティアドロップ形状ではなく、後方まで幅を保った新鮮なデザインを採用した。

2022年型F1マシン比較 サイドポッド~テールエンド、ターニングベーン:ハースVF-22、マクラーレンMCL36、アストンマーチンAMR22copyright Formula1 Data

2022年型F1マシン比較 サイドポッド~テールエンド、ターニングベーン:ハースVF-22、マクラーレンMCL36、アストンマーチンAMR22

現時点で実車をお披露目しているのはマクラーレンとアストンマーチンの2チームのみであり、両者とは全く別のアプローチを採る第3のチームが存在し得るという点でどちらのレギュレーション解釈が正解か?という問いを立てるのは筋違いだが、それは何もアストンマーチンの空力哲学が誤りではないという事を意味するわけではない。

Motor Sport Magazineによるとチームの最高技術責任者(CTO)を務めるアンドリュー・グリーンは、ライバルチームのコンセプトの方が優れていると判明した場合に備えて、現行の空力コンセプトを変更するための準備を整えていると明かした。

「サイドポッドのデザインに関しては幾つかの方法がある。その上で我々はその中の一つを探求する事にした。無論、他にも多くの手法がある事は分かっている」とグリーン。

「このクルマの設計要件の一つは柔軟性を持たせる事にあった。開発の袋小路に入ったようなクルマを設計したくはなかったのだ」

「つまり今年は比較的自由に展開して様々な分野を追求できるようにしたかったんだ。2022年はラジエーターのレイアウトやサイドポッドを変更できる余地を残してある」

気になるのはシーズン中の開発予算だが、フォース・インディア/レーシング・ポイント時代とは異なり、アストンマーチンはローレンス・ストロールの投資によって十分な資金をプールしている。故に金の面での制限はないものの、開発の方向性が適切か否かを判断するために必要となるようなリソース、ツールは今も不足しているという点がやや気がかりだ。

アストンマーチンF1チームの2022年型マシン「AMR22」のフロア・サイドポッド周りCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチンF1チームの2022年型マシン「AMR22」のサイドポッド周り

テクニカルチームの指揮官は、これから発表されるライバルチームのマシンがバラエティに富んだものになる可能性を指摘しつつも、成功したアイデアはすぐに模倣され、各車の差は急速に収束していくだろうと予想した。

「グランドエフェクトである以上は全く新しいコンセプトが導入されたというわけではない。ただ、ルールの条項や適用方法はこれまでとは全く異なっている」

「以前は多くの場合、特定の決められた箱の中で何を描いても良かった。高さと幅と長さが決められた中で、好きなようにやる事ができた」

「だが今や、そういったレギュレーションは過去のものとなり、あらかじめ定義されたサーフィスに沿って作業をしなければならない」

「レギュレーションの解釈として許される偏差は以前と比べて大幅に減少している。故に私は、各チームが比較的早く収束すると考えている」

2022年シーズンのレギュレーション改訂はF1史上最大級の変化とされている。今シーズンのフィールドは誰も足を踏み入れた事のない未開拓地だ。

グリーンは「我々はこれまでに見たことのないような急激な開発曲線の中にいる。過去数ヶ月の間にパフォーマンスが50%も向上したんだ。これは過去に例がない」と付け加えた。