データが示す事実…アルファタウリ・ホンダ勢、エンジン全開でバクーの事故現場を疾走
Published: Updated:
元F1ドライバーのジョリオン・パーマーが公開したデータによって、角田裕毅だけでなく、アルファタウリ・ホンダのチームメイトであるピエール・ガスリーもがエンジン全開で事故現場を走行していた事が明らかとなった。
角田裕毅はF1第6戦アゼルバイジャンGPで見事なレースを戦い、自己最高位となる7位フィニッシュを果たし、ガスリーはキャリア3度目の表彰台に上がる快挙をやってのけたが、FIAレースディレクターがマイケル・マシでなければ別の結果に終わっていたかもしれない。
バクー市街地コースでのレース最終盤にマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がタイヤブローによってクラッシュを喫した際、アルファタウリ・ホンダの2人が事故車両とデブリが飛散するメインストリートをエンジン全開で駆け抜けた事は事実とみて間違いなさそうだ。
F1公式サイトでコラムを執筆するなど第2の人生をアナリストとして活動しているパーマーは、フェルスタッペンがメインストリート脇のバリアに激突した直後の各車の速度及びスロットル開度に関するデータを紐解き、アルファタウリ・ホンダの2人が一切リフトしていなかった事実を示した。
事故発生の数秒後にフィニッシュライン脇のマーシャルがイエローフラッグを振ると同時に、まずはセルジオ・ペレスとルイス・ハミルトンが通過。これに続いてセバスチャン・ベッテル、ガスリー、角田裕毅、ランド・ノリスの順に事故現場を駆け抜けた。
パーマーが開示したデータによるとベッテルは時速302.8km、ルクレールは時速297.1kmと共に若干アクセルを戻して減速したものの、アルファタウリ勢はアクセルを全く緩めず、エンジンの不調を抱えていたガスリーは時速310.5km、トウを得て車速を上げていた角田裕毅は時速321.2kmというフルスロットルで事故現場の脇を通過した。
角田裕毅の後方を走行していたノリス擁するマクラーレンは、レース中盤のランス・ストロールの事故の際にも角田裕毅がリフトしていなかったとして、チームマネージャーを務めるポール・ジェームスがマシに一件を報告した。
結局マシは聞く耳を持たなかったが、パーマーはマクラーレンが報告を挙げたのは当然だと指摘し、事故発生現場がカレンダー最速のコースの一つであるバクーのメインストレートであった点に触れて、「危険地帯を平然と通過」したアルファタウリ・ホンダのドライバー達はペナルティが科せられてもやむを得ない走りをしていたとの認識を示した。
なお、アクセルをしっかりと戻して時速261.8kmにまで減速したノリスについてパーマーは「データを見る限り、ランド・ノリスはよく減速し、(他のドライバーよりも)責任ある行動を取っていたように見える」と指摘した。
レギュレーションは黄旗の際の減速義務に関して明確な数字を示しておらず、線引きが曖昧であるためこれまでに度々議論を引き起こしているが、全く減速していないのであれば話は別だ。
違反の代償は重く、2017年のF1ベルギーGPでは当時フェラーリに所属していたキミ・ライコネンがダブルイエロー無視によって10秒のストップ・ゴー・ペナルティを受けている。
結果的に違反を見逃す形となった今回のケースは、後々マシ本人を悩ませる事になるかもしれない。以降のレースでドライバー達は、バクーでの一件を引き合いに出して矛盾を突き付ける事が可能となる。なんであの時はペナルティが科されず、今回だけ科されるのか、と。
角田裕毅とガスリーは、黄旗を認識してなおアクセルを踏み続けたのか、それともイエローフラッグや事故車両の存在を知らないままにエンジンを回し続けたのか。
いずれにせよ、こうした二次被害のリスクとなるような事態が起こり得るものであった事は少なからず明白で、ストリートサーキットでは今後、クラッシュが確認され次第、黄旗ではなく即時バーチャル・セーフティーカーを導入する事などを検討していく必要があるのかもしれない。
バクーでの2件のインシデントを巡っては、セーフティーカー導入の判断があまりに遅かったとして複数のドライバー達が懸念を表明しており、ルクレールは次戦フランスGPのドライバーズ・ブリーフィングでマシに問題提起する意向を示している。