バクー市街地コースを走行するアルファタウリ・ホンダの角田裕毅、2021年6月6日F1アゼルバイジャンGP決勝レースにて
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SC問題のみに非ず? 資質問われるマイケル・マシ、角田裕毅を審議にかけず

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アルファタウリ・ホンダの角田裕毅は第6戦アゼルバイジャンGPで2度に渡ってダブルイエロー無視の疑いがかけられたものの、FIAレースディレクターはスチュワードに報告せず、審議がなされる事もなく罰則を免れた。

バクー市街地コースでのレースは今年も荒れに荒れ、中盤にはランス・ストロール(アストンマーチン)が、そして最終盤にはマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)がタイヤブローによってクラッシュを喫した。

いずれのインシデントに際してもダブルイエローが振られ、フェルスタッペンの事故に関してはその後、赤旗が振られる事態となった。

黄旗には1本を振るシングルイエローと、2本を振るダブルイエローの2種類が存在する。ダブルイエローはより厳しい制限を指示するもので、オーバーテイクは禁止され「大幅な速度低下」が要求される。

マクラーレンのランド・ノリスはストロールがクラッシュした際、「ユーキはリフトさえしていない。彼はエンジン全開だった。おかげで僕はかなりのタイムを失った」と角田裕毅が減速していない事をチーム無線で報告した。

その後、フェルスタッペンの事故によってレースが中断されると、マクラーレンのチームマネージャーを務めるポール・ジェームスは、角田裕毅がいずれのダブルイエローの際にもスロットルを一切戻さなかったとして、FIAレースディレクターのマイケル・マシに報告を挙げた。

「マイケル、いずれのインシデントにおいても、角田はスピードを落とさなかった。だから我々は、一件が調査されていない事に驚いている」

するとマシは「非常に単純な話だ。私はレギュレーションに従ってダブルイエローで減速しなかったフィールド全体にペナルティを課すべきだと思っている」と返した。

これに対してポール・ジェームスが「だが、彼のは明らかだ、マイケル。彼は一切アクセルを戻していなかった」と続けると、マシは「私にとっては、どれも明らかだ。少し戻しただけでは不十分だ。これについては次のミーティングで全ドライバーに伝えるつもりだ」と憤慨した様子を見せた。

世界最速と称されるストリートサーキットでの決戦で、ドライバーが「少し」ではなく「大きく」アクセルを戻す事は果たして安全なのだろうかという疑問もさる事ながら、誰もがルールを破っているから各々を審議する必要がないというスタンスはレースディレクターのあり方として適切であったのだろうか?

実際に罰則を科すべきか否かはさておき、事実関係を確認する上でもスチュワードに報告を挙げるべきところだが、マイケル・マシは一件を無視。一般にダブルイエロー無視のペナルティは非常に重いが、かくして角田裕毅が審議に掛けられる事はなかった。

マシはドライバー達にダブルイエローの遵守を徹底するよう指導するとしているが、ドライバー側もマシに対し、次戦フランスGPでのミーティングにおいて物申す意向だ。

4度の王者セバスチャン・ベッテル(アストンマーチン)やカルロス・サインツ(フェラーリ)ら複数のドライバー達が懸念を表明していたのがセーフティーカー導入タイミングの遅さだ。

フェルスタッペンが高速で壁に激突した際、ダブルイエローが出されるまでにも時間がかかったが、セーフティカー(SC)の出動には1分半近くを要した。ストロールの際も似たようなもので、SCが導入されたのは30秒近く経った後だった。

シャルル・ルクレール(フェラーリ)は、大破したフェルスタッペンのマシンを横目にメインストリートを駆け抜けた後でさえレースが続行されているとチームから聞かされ「一体何の冗談だ」と呆れ、ジョージ・ラッセル(ウィリアムズ)も「SCは何処にいるんだ?」と疑問を投げかけた。

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