バーレーン・インターナショナル・サーキット、2022年3月17日F1バーレーンGPにて
Courtesy Of Alfa Romeo Racing

F1チーム序列予想:角田裕毅のRB浮上か、2024年開幕バーレーンGPに向けたパーマーのランク付け

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グランドエフェクトカー規定導入3年目を迎える2024年シーズンの開幕バーレーンGPに向けて、元F1ドライバーで引退後の現在はコラムニスト、解説者として活躍するジョリオン・パーマーがチームの序列を予想。ランク付けした。

2022年からコースサイドでバーレーンテストを観察してきたパーマーはF1公式チャンネルの中で、特にターン4やターン11の進入において例年以上にアグレッシブなラインが見られるなど、今年は全てのチームがパフォーマンスを上げていると指摘した。

2023年10月29日のF1メキシコGPで発生した角田裕毅(アルファタウリ)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の接触事故を検証・分析するジョリオン・パーマーcopyright F1 TV

2023年10月29日のF1メキシコGPで発生した角田裕毅(アルファタウリ)とオスカー・ピアストリ(マクラーレン)の接触事故を検証・分析するジョリオン・パーマー

フィールド全体の競争力が底上げされたという事はチーム間の争いが激化するということでもある。それだけに各チームの競争力を予想する事は余計に難しい。

テストと同じバーレーン・インターナショナル・サーキットを舞台として行われる初戦に向け、パーマーが予想したチーム別の順位を彼のコメントと共にかいつまんで以下に紹介する。

パーマーの見立てによると初戦の段階で、昨年のコンストラクター選手権より良い位置にいるのはフェラーリ、マクラーレン、そして角田裕毅擁するRBの3チームだ。

10位:ハース

ハース「VF-24」をドライブするニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット (2)Courtesy Of Haas

ハース「VF-24」をドライブするニコ・ヒュルケンベルグ、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット (2)

直感だが、ハースはスタートで最後尾になると思う。チーム代表はギュンター・シュタイナーから小松礼雄に代わった。全てのチームがそうだがドライバーに変更はない。

彼らは昨年のオースティンで大規模なアップグレードを導入したが上手くはいかず、そのせいで開発が遅れてしまい、当人たちは出遅れると考えている。

クルマは特段、生き生きとしているようには見えない。ヒュルケンベルグは昨年を含めて過去にバーレーンで素晴らしい予選を見せてきた。今年もそれを再現できれば驚きだ。

9位:ザウバー

ピットレーンからコースに向かうザウバーC44を駆るバルテリ・ボッタス、2024年2月22日F1プレシーズンテスト2日目Courtesy Of Sauber Motorsport AG

ピットレーンからコースに向かうザウバーC44を駆るバルテリ・ボッタス、2024年2月22日F1プレシーズンテスト2日目

9位はキック・ザウバーだ。テストが良かっただけに、少し厳しいと思われるかもしれない。周回数も稼いでいたし、クルマは本当にまともに見える。リアエンドは安定しているが、全体的にダウンフォースがあるのかどうか分からない。

特に3日目の終盤がそうだが、彼らは何度かトップタイムを刻んだ。ただテストでの彼らは伝統的に燃料を少し軽くして走る傾向がある。

クルマは良さそうに見えるが、僕はフィールド全体が前進していると考えている。つまり良いポジションを確保するにはそれだけでは十分ではない。

8位:ウィリアムズ

バーレーン・インターナショナル・サーキットでウィリアムズFW46をドライブするアレックス・アルボン、2024年2月23日F1プレシーズンテストCourtesy Of Williams

バーレーン・インターナショナル・サーキットでウィリアムズFW46をドライブするアレックス・アルボン、2024年2月23日F1プレシーズンテスト

ザウバーとウィリアムズは、どちらがどの順位になってもおかしくないと思う。

シェイクダウンを遅らせたウィリアムズには個人的にかなり期待していた。ジェームズ・ヴァウルズがオフシーズンをフルに担当するのはこれが初めてだし、チームには大きな期待と希望があった。

でも、いざコースインしてみると、やはり幾つかの欠点が見て取れた。それは彼らが根絶しようとしていたものだ。

ウィリアムズの特徴であるストレートでの速さは健在だ。それはモンツァやスパといった特定のコースで成果を上げてきた。こういったコースでは今年もアレックス・アルボンがポイント争いを繰り広げてくれるはずだ。

だがクルマは依然として風に対してかなり敏感で、少しばかり不安定なように見える。リアエンドの安定性は良いクルマの基準だが、彼らのクルマは少し不安定に見える。ローガン・サージェントはテストの2日目に派手なスピンを喫していた。

だからウィリアムズは8位。彼らも今週の出来には少しガッカリしているんじゃないかな。

7位:アルピーヌ

エステバン・オコンがドライブするアルピーヌA534、2024年2月23日F1プレシーズンテスト3日目Courtesy Of Alpine Racing

エステバン・オコンがドライブするアルピーヌA534、2024年2月23日F1プレシーズンテスト3日目

アルピーヌは7位だ。テストでのアルピーヌは今年も本当に注目されていない。あまりパフォーマンスを見せるような事はやっていないだろうから判断は難しいが。

2日間に渡ってかなり重いクルマを走らせ、両ドライバーともに多くの走行距離を稼いだ。チームは再びクルマのコンセプトを変更し、そのデザインはRB19に向かっていっているが、チームは少し時間が必要だと言っている。

前進していく上でアルピーヌが十分なことをしているとは僕には思えない。せいぜい6位をキープするのが精一杯だろう。何しろ多くのチームが競争力を増しているからね。僕が間違っている可能性もあるけど。

エンストンの皆は良いクルマを作る方法を知っている(※アルピーヌはF1時代のパーマーの所属チーム)けど、昨年の今頃ほど良い位置にいるとは思えない。

6位:RB

角田裕毅がドライブするRBの「VCARB 01」、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキットCourtesy Of Red Bull Content Pool

角田裕毅がドライブするRBの「VCARB 01」、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット

ダニエル・リカルドと角田裕毅がドライバーである事に変わりはないが舞台裏はすっかり変わった。ピーター・バイエルが加わり、チーム代表にはローラン・メキーズが就任し、レッドブルとの関係がより緊密になり、レッドブル製のコンポーネントを手にした。

上手くオフシーズンを過ごしたと思う。昨年はシーズンを通じてクルマにアップグレードを投じた。2人のドライバーは僅差の中団争いで最初からポイントを狙っていると思う。

リアエンドも安定感があったしクルマは良さそうだった。リカルドは初日から良い走りをしていたし、角田裕毅もソフトタイヤで良いラップを刻んでいた。安定感も出てきたし、もっと上位に食い込んでいけると思う。

5位:アストンマーチン

アストンマーチン「AMR24」をドライブするフェルナンド・アロンソ、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキットCourtesy Of Aston Martin Lagonda Limited

アストンマーチン「AMR24」をドライブするフェルナンド・アロンソ、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット

RBの前の集団は本当に本当にタイトだ。僕はかなり真っ当にテストを過ごしたアストンマーチンを5位に挙げたい。

トラクションがしっかりしていてクルマは良さそうに見えた。フェルナンド・アロンソは自分が望むラインで正確にクルマを走らせる事ができたんじゃないかと思う。

ロングランもかなり力強かった。これはフェルナンドが得意とするところだ。昨年の今頃、リア・リミテッドのバーレーンでそうだったように、今年も依然として強みになると思う。

分からないのは今年のアストンが高速コーナーでどの程度やれるのかってことだ。ここにはあまりないからね。だから良い進歩を遂げたとは思っているけど、真価が問われるのは彼らが少し弱みとしていたより速いコースだろう。

4位:メルセデス

ジョージ・ラッセルがドライブするメルセデス「W15」の上面写真、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジョージ・ラッセルがドライブするメルセデス「W15」の上面写真、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット

新しいフロントウイングに、ルイス・ハミルトンが12ヶ月間に渡って求めてきたコックピットの後方移動を含めて、ローンチのメルセデスについては色んな話題があったが、1ラップペースに関しては絶対的な進歩があったとは見ていない。

クルマについて言うと、最初の2日間は少しナーバスに見えた。ミッドコーナーでのスタビリティは優れているように見えなかった。これは彼らが過去2年に渡って課題としてきた部分だ。

ダウンフォースは間違いなくあるだろう。クルマを改善する余地は十分にあると思う。ベースとしては去年よりも遥かに良いけど、1ラップペースに関してはシーズンを始める上で、ライバルと比べて競争力がないのではと心配している。

とは言え、ドライバー達はレースペースにかなり手応えを得ているみたいだ。ジョージ・ラッセルとルイス・ハミルトンは今の状況に満足している。

間違いなく遥かに良い位置にいると思うし、このコンセプトならシーズンを通して発展する余地があると思うけど、予選で十分な結果を残せるかどうかは分からない。

3位:マクラーレン

マクラーレン「MCL38」をドライブするランド・ノリス、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

マクラーレン「MCL38」をドライブするランド・ノリス、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット

その点でマクラーレンは逆の事が言えるかもしれない。

ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは初日にマイレージを稼ぎ、クルマはコースに出るやいなや、とても速そうに見えた。柔らかめのコンパウンドは履かず、本当に几帳面にテストプログラムを厳格にこなしていた。

マクラーレンは昨年、開発を通してシーズン中に大きく前進したチームだ。当然、去年のバーレーンと比べて良い位置にいるのは明らかだ。彼らが望んでいるのは、今のところ未勝利のドライバーのどちらかが、今年のグランプリで1勝できるようなポジションを得ることだ。そうなるかもしれない。

だが僕が懸念しているのは、今日(3日目)の午後にクルマに乗り込んだオスカー・ピアストリのレースランが完璧ではなかったことだ。酷いデグラデーションがあったわけだけど、これは彼が昨年、抱えていた課題だった。1ラップペースは良かったけど、レースランは良くなかった。

そして問題はランド・ノリスがレースシミュレーションをしなかったことだ。彼は20周に留まった。昨日の午後もロングランをやらなかった。クルマの信頼性に少し不安がある。だからマクラーレンには疑問符がつく。

予選ペースはすごく良いと思うけど、レースペースはどうだろう? それがどれほど重要かは誰もが知るところだ。

2位:フェラーリ

フェラーリ「SF-24」をドライブするシャルル・ルクレール、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキットCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

フェラーリ「SF-24」をドライブするシャルル・ルクレール、2024年2月21日F1プレシーズンテスト初日バーレーン・インターナショナル・サーキット

フェラーリは兎に角、他を引き離して2番手につけるだろう。素晴らしいテストだった。昨年末に見せた予選最速マシンとしての速さがあり、1ラップペースは依然としてかなり良さそうだ。

2日目と3日目はカルロス・サインツとシャルル・ルクレールがトップタイムを記録した。履いていたタイヤが注目されるかもしれない(※レッドブルより1段柔らかいC4を装着)が、昨年の今頃よりもクルマは遥かに安定しているように見えるし、レースペースは良くなっている可能性がある。

様々なヨー角(※前進方向に対して車体がどれだけ回転しているかを示す角度)を通してより安定した走りができるようになり、風の影響を受けにくくなったし、ダウンフォースが増えた事でリヤエンドは安定していて、フロントエンドも良さそうだ。

予選ペース、レースベースはレッドブルに挑むのに十分だろうか? どうなるかは分からないが、12か月前の時点よりは良い位置にいると思うし、シーズンを通して楽観的な見通しを持てると思う。

1位:レッドブル

バーレーン・インターナショナル・サーキットを周回するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2024年2月23日F1プレシーズンテスト3日目Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

バーレーン・インターナショナル・サーキットを周回するマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、2024年2月23日F1プレシーズンテスト3日目

1位はもちろんレッドブルだ。昨年のマージンを考えれば、これは大きな驚きではないだろうけど、クルマ的にはどちらに転んでもおかしくなかった。

新車発表で如何に過激なデザインを採用したのかを目にした時、やってしまったのだろうか? 行き過ぎてしまったのか? それともマジックなのか? と思わされた。

結果的にはマジックのように見える。特にマックス・フェルスタッペンの手にかかるとね。クルマは初日の段階からキマっているように見えたし、リアエンドも良い感じだった。

フロントエンドはマックス好みの本当にシャープなものだし、実際、チェコよりもマックスの方がクルマの中で気持ちよくドライブしているように見えた。

来週末のレースの大本命はまたも彼になると思う。でもシーズンは長い。夏までにはすべてが漠然としてしまう可能性だってある。

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