夕暮れを背景にバーレーン・インターナショナル・サーキットを周回する角田裕毅(ビザ・キャッシュアップRB)、2024年2月23日F1プレシーズンテスト3日目
Courtesy Of Red Bull Content Pool

2024年F1プレシーズンテスト《最終日》総合結果と各チームの概要:ルクレール最速、角田裕毅はトップ5

  • Published:

2024年のF1プレシーズンテスト最終3日目のセッションが2月23日(金)に行われ、シャルル・ルクレール(フェラーリ)が1分30秒322を刻んでタイムシートのトップに立った。これにて開幕前テストの全日程が終了した。

2番手には1000分の46秒という僅差でジョージ・ラッセル(メルセデス)が続き、ステイクF1ことザウバーの周冠宇がコンマ3秒とやや遅れて3番手につけた。トップ3はいずれもC4コンパウンドでのアタックだった。

順位、タイムとギャップ、周回数

Pos Driver Team Time Gap Laps Tyre
1 シャルル・ルクレール フェラーリ 1:30.322 0.000 74 C4
2 ジョージ・ラッセル メルセデス 1:30.368 0.046 67 C4
3 周冠宇 ザウバー 1:30.647 0.325 84 C4
4 マックス・フェルスタッペン レッドブル・ホンダRBPT 1:30.755 0.433 65 C3
5 角田裕毅 RB ホンダRBPT 1:30.775 0.453 52 C4
6 アレックス・アルボン ウィリアムズ・メルセデス 1:30.984 0.662 120 C4
7 オスカー・ピアストリ マクラーレン・メルセデス 1:31.030 0.708 90 C3
8 フェルナンド・アロンソ アストンマーチン・メルセデス 1:31.159 0.837 74 C3
9 カルロス・サインツ フェラーリ 1:31.247 0.925 71 C3
10 セルジオ・ペレス レッドブル・ホンダRBPT 1:31.483 1.161 53 C3
11 ニコ・ヒュルケンベルグ ハース・フェラーリ 1:31.686 1.364 87 C3
12 ルイス・ハミルトン メルセデス 1:31.999 1.677 49 C5
13 ランス・ストロール アストンマーチン・メルセデス 1:32.038 1.716 46 C3
14 ランド・ノリス マクラーレン・メルセデス 1:32.108 1.786 20 C3
15 ピエール・ガスリー アルピーヌ・ルノー 1:32.149 1.827 47 C3
16 ケビン・マグヌッセン ハース・フェラーリ 1:33.053 2.731 80 C3
17 エステバン・オコン アルピーヌ・ルノー 1:33.079 2.757 55 C3
18 バルテリ・ボッタス ザウバー 1:33.528 3.206 28 C3
19 ダニエル・リカルド RB ホンダRBPT 1:37.015 6.693 70 C1

概要と各チームの走行内容

2日連続となる排水カバーの破損と、約75分間に渡る赤旗中断というドラマティックな展開によりランチブレイクは中止となり、テスト最終日はノンストップで最後までセッションが続行される事となった。

前日と比べて風向きが変わり、少し強まった影響だろうか。低速コーナーでロックアップしたり、ワイドに膨らむドライバーが何名か見られた。

レッドブル

レッドブルRB20をドライブするセルジオ・ペレス、2024年2月23日F1プレシーズンテスト最終日 バーレーン・インターナショナル・サーキットにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

レッドブルRB20をドライブするセルジオ・ペレス、2024年2月23日F1プレシーズンテスト最終日 バーレーン・インターナショナル・サーキットにて

C3コンパウンドでの最上位は4番手につけたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)だった。ルクレールとの差はコンマ4秒。ピレリの推計によればC3とC4間のタイム差はコンマ6秒で、補正するとフェルスタッペンがタイムシートのトップに立つ計算だ。

シングルラップもさることながら、ロングランでもフェラーリに1周辺りコンマ2秒程度の差をつけた。やはりRB20は驚異的な存在に見える。

前半を担当したセルジオ・ペレスはターン11脇の排水カバーが外れた際にリプレイ映像に映っていたが、幸いにも車体へのダメージはなく、53周を重ねて10番手タイムをマークした。

RB

ビザ・キャッシュアップRBは後半を担当した角田裕毅が最終盤にC4で5番手を刻んだ。同じタイヤで3番手につけた周冠宇とはコンマ1秒の差だった。僚友ダニエル・リカルドはハードタイヤを使ってのロングランに重点的に取り組み、C1で19番手タイムを記録した。

初日を経てレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、VCARB 01にはトップ5相当の競争力が期待できるとの認識を示した。ロングランペースではザウバーやアルピーヌを抑え、アストンマーチンと共に5番目を争うレベルの速さを見せた。

フェラーリ

レッドブルと比べるとまだ力不足のようにも思われるが、2日目に続いて再び強力なロングランペースを発揮し、課題としていたデグラデーションの面で着実に成果を上げた印象を受けた。

シングルラップに関しては先代同様に力強く、2日目以降はカルロス・サインツとシャルル・ルクレールがタイムシートをリードする結果となった。

メルセデス

ジョージ・ラッセルのメルセデスW15のピットストップ作業に取り組むクルー、2024年2月23日(金) F1プレシーズンテスト3日目Courtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ジョージ・ラッセルのメルセデスW15のピットストップ作業に取り組むクルー、2024年2月23日(金) F1プレシーズンテスト3日目

チームは3日目に向けてフロントサスペンションに変更を加えた。アッパーウィッシュボーンの後ろ脚を更に低い位置に取り付け、アンチダイブ(前傾防止)特性を強めた。

ルイス・ハミルトンは最も柔らかいC5コンパウンドをテストしたが、最初の計測はターン1でロックアップ。ラップ全体を通してまとまりがなく、バランスが全く取れていないように見えた。同じ時間帯でのタイムシートでは3番手に留まり、最終12番手でテストを終えた。

後半を担当したラッセルは最終的に2番手を刻み、ロングランではフェラーリと張り合うパフォーマンスを見せた。

ハース

深刻なデグラデーションへの対処としてまず必要なのはデータ取り、との明確な方針を掲げてテストに臨む小松礼雄新体制下のハースは、ケビン・マグヌッセンが80周、ニコ・ヒュルケンベルグが87周と精力的に走り込み、初日に続いて全チーム最多となる167周をカバーした。

ウィリアムズ

バーレーン・インターナショナル・サーキットでウィリアムズFW46をドライブするローガン・サージェント、2024年2月22日F1プレシーズンテスト2日目Courtesy Of Williams

バーレーン・インターナショナル・サーキットでウィリアムズFW46をドライブするローガン・サージェント、2024年2月22日F1プレシーズンテスト2日目

初日こそ燃料ポンプとドライブシャフトの相次ぐトラブルにより躓いたが、以降は順調にプログラムを消化。最終日は「少し過激なセットアップ」にした事で思いも寄らず良い方向に進んだようで、終日に渡ってFW46をドライブしたアレックス・アルボンは120周を走り込んで4番手タイムを残した。

ザウバー

ザウバーは何か問題を抱えたようで、セッション前半にフロアを外しての作業を行った。チームによると「予防的チェック」との事で詳しい内容は明らかにされていない。これによりバルテリ・ボッタスはトータル28周に留まり、チームとしても合計112周に終わった。だが、マクラーレンは更に少ない。

マクラーレン

ガレージ前でジャッキアップされるランド・ノリス(マクラーレン)、2024年2月23日F1プレシーズンテスト最終日 バーレーン・インターナショナル・サーキットにてCourtesy Of Pirelli & C. S.p.A.

ガレージ前でジャッキアップされるランド・ノリス(マクラーレン)、2024年2月23日F1プレシーズンテスト最終日 バーレーン・インターナショナル・サーキットにて

前半を担当したランド・ノリスはクラッチに問題を抱えたようでガレージから出る事ができず、周回数は19名中最小の20周に留まった。マクラーレンは前日も燃料システムのトラブルに見舞われ唯一、3桁に届かなかった。決して良い展開とは言えない。

信頼性の問題を除けば決して悪いわけではなく、オスカー・ピアストリは同じC3を履いたフェルスタッペンにコンマ3秒差の7番手を刻み、トップ3には届かなかったものの、ロングランペースでも4番目の速さを見せた。

アストンマーチン

アストンマーチンは昨年のプレシーズンテストで”ダークホース”との評価を受けシーズン序盤に驚きの活躍を残したが、今季は3日間を通してあまり目立っていない。フェルナンド・アロンソのベストラップはC3での8番手タイムだった。ただ、ロングランではRBと共にトップ5を争う付近のペースを刻んでおり、悪すぎるという事はなさそうだ。

アルピーヌ

心配なのはアルピーヌだ。車体コンセプトの大幅変更により、そのポテンシャルを引き出すには時間がかかるとしていたが、それでもピエール・ガスリーが15番手、エステバン・オコンが17番手、周回数としても全チーム最小の102周というのは、他チームよりも準備という点で遅れを取っている事をうかがわせものであり、ロングランペースも中団下位争いが懸念されるほど、全く素晴らしいものではなかった。