人工照明に照らされたバーレーン・インターナショナル・サーキットを走行するメルセデスのバルテリ・ボッタス、2021年3月13日F1バーレーン2日目
Courtesy Of Daimler AG

2021年 F1プレシーズンテスト”三味線”ランキング:メルセデスはどの程度手の内を隠していたのか?

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プレシーズンテストから始まり、バーレーンGPの2日目、予選前最後のフリー走行まで、誰もが「手の内を隠しているはずだ」としてメルセデスのラップタイムに疑いの目を向けていたが、彼らはどの程度”三味線を弾いていた”のだろうか?

テストではチーム毎に搭載燃料やエンジンモードが異なるため、一様に各車のパフォーマンスを比較する事は難しい。今シーズンをほぼ諦めていると言っても過言ではないハースやグリッド後方のチームを除き、誰もがライバルを牽制するインセンティブを持つものの、特にメルセデスは、伝統的に重めの燃料で走行を行い本番まで爪を隠す傾向がある。

これまでファンは幾度となくメルセデスに翻弄されてきた。

V6時代の絶対王者は過去に幾度となく「苦戦している」「課題がある」と口にしながらも、肝心の週末までにこれを乗り越え、最終的にライバルを下してきた。そのため2021年の開幕前テストでのパフォーマンスも、エンジニアリングディレクターを務めるアンドリュー・ショブリンの「レッドブル・ホンダに遅れを取っている」との発言も、程度の差こそあれ疑いの目を以て受け止められていた。

バーレーンGPの予選データが出揃った事で各チームの真の実力が明らかとなった。そこで、同じバーレーン・インターナショナル・サーキットで行われたプレシーズンテストと予選でのファステストラップを比較し、各チームがどれだけタイムを伸ばしてたのかを振り返ってみたい。

なおプレシーズンテストでは、週末に投入されたコンパウンド(C2~C4)より柔らかいC5タイヤが供給されていた。そこでC5とC4とのパフォーマンスギャップを0.3秒として補正した上で集計し、変動率を基準にラップタイムの変化が大きいものから昇順に並べた。

チーム テスト時タイム バーレーンGPタイム 変動
メルセデス 1:30.325 1:29.385 -0.940秒
98.96%
アルファタウリ 1:29.353 1:29.053 -0.300秒
99.66%
マクラーレン 1:30.144 1:29.927 -0.217秒
99.76%
アストンマーチン 1:30.760 1:30.601 -0.159秒
99.82%
アルピーヌ 1:30.318 1:30.249 -0.069秒
99.92%
レッドブル 1:28.960 1:28.997 +0.037秒
100.04%
フェラーリ 1:29.611 1:29.678 +0.067秒
100.07%
アルファロメオ 1:30.066 1:30.708 +0.642秒
100.71%
ウィリアムズ 1:30.417 1:31.316 +0.899秒
100.99%
ハース 1:31.531 1:32.449 +0.918秒
101.00%

全10チームの中で最もタイムを縮めたのはブラフ扱いされていたメルセデスで、約1秒を削った。

アップデートやセットアップなど、クルマそのものの違いもある事から一概には言えず、またクルマの挙動を見る限り改善による影響が大きいとは思われるものの、2番目にタイムを縮めたアルファタウリ・ホンダの0.3秒と比較しても1チームだけ突出しており、やはり少なくないものをポケットに隠し持っていたと言えそうだ。

ターン4に導入されたトラックリミットによる影響だろうか。テスト及びバーレーンGP予選で共に最速を刻んだレッドブル・ホンダを含む5チームがタイムを落とした。中でもアルファロメオ、ウィリアムズ、ハースの後退幅は大きく、テストでの計測ラップが偽りのない全開走行であった事を仄めかしている。