2021年F1開発競争ランキング:空力規制に上手く対応し成功を収めたのは…意外な勝者? 予想通りの敗者?
2021年シーズンのチャンピオンシップに向けて、開発競争で成功を収めライバルに先行するパフォーマンスを手にしたのはどのチームなのか? 後退したのはどのチームなのか?
COVID-19パンデミックへの財政対策の一環として、今季に向けてはマシン開発に制限が課され、基本的に昨年型のシャシーが持ち越された形だが、エアロダイナミクスに関する開発はその殆どが許可され、パワーユニットのアップグレードも可能だ。
故に、持ち越しとは言えパフォーマンス改善に向けた開発は可能なのだが、その一方でコーナリングスピードの低下に繋がるレギュレーション変更が施行された。
18インチタイヤの導入を2022年に控え、実質的に開発を進める事ができない現行13インチタイヤへの負荷を抑えるため、F1と国際自動車連盟(FIA)はダウンフォースの低減を目的にフロア、ディフューザー・ストレーキ、ブレーキダクトに変更を加えた。
2021年の開幕バーレーンGP予選が終わった事で、今シーズンに向けての開発競争並びに、空力関連のルール変更における勝者と敗者について、ある程度の傾向を読み解く事が可能となった。
以下に、昨年11月に行われた2020年のバーレーンGP予選および、今年のバーレーンGP予選における各チームの最速タイムを集計。変動幅が少ないチームから順に並べた。
各チームは規約変更による損失を最小限に抑えるべく開発を進めてきたが、当初の見積もり通り、レギュレーション変更によるマイナス影響が改善幅を大きく上回る事が明らかとなった。昨年より速くなったチームはいない。
順位 | チーム | 2020年 | 2021年 | 変動 |
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1 | フェラーリ | 1:29.137 | 1:29.678 | + 0.541秒 |
2 | アルファロメオ | 1:29.491 | 1:30.708 | + 1.217秒 |
3 | レッドブル | 1:27.678 | 1:28.997 | + 1.319秒 |
4 | アルファタウリ | 1:28.448 | 1:29.809 | + 1.361秒 |
5 | マクラーレン | 1:28.542 | 1:29.927 | + 1.385秒 |
6 | アルピーヌ | 1:28.417 | 1:30.249 | + 1.832秒 |
7 | ウィリアムズ | 1:29.294 | 1:31.316 | + 2.022秒 |
8 | メルセデス | 1:27.264 | 1:29.385 | + 2.121秒 |
9 | アストンマーチン | 1:28.322 | 1:30.601 | + 2.279秒 |
10 | ハース | 1:30.111 | 1:32.449 | + 2.338秒 |
平均してプラス1.64秒と全チームがラップタイムを大きく落としたが、レギュレーション変更による純粋な損失はこれよりも更に大きい2秒強程度と考えられる。
2019年比でプラス2.338秒と、10チームの中で最も大きくパフォーマンスが低下したハースは、新世代シャシーが導入される2022年以降への注力を理由に、今季に向けてはマシン開発を殆ど行っておらず、これを読み解くための基準とするに最も相応しい。
ドライバーはベテランのケビン・マグヌッセン、ロマン・グロージャンからミック・シューマッハ、ニキータ・マゼピンという新人コンビに変更されており、これもタイム低下の一因と考えられるが、搭載するフェラーリ製パワーユニットの改善を考慮に入れて相殺とし、ひとまずここでは規制変更による純粋な損失を2秒として話を進めていく。
この数字を元にすると、レギュレーションに上手く対処できなかった、つまり規約変更による損失分を少しもカバーできなかったのはウィリアムズ、メルセデス、そしてアストンマーチンのメルセデスエンジン勢にハースを加えた4チームという事になる。
フロントが低くリアが高い、所謂”ハイ・レーキ”哲学を貫くレッドブル及びアルファタウリの損失が各々約1.3秒と小さい事から、アストンマーチン及びメルセデスの”ロー・レーキ”組が規約変更による大打撃を受けたとの見方もできるが、ルノーから載せ替えたばかりのマクラーレンを除く全てのメルセデスPU勢が後退しているところを見ると、パワーユニットの性能にも注目すべきだろう。
バーレーン・インターナショナル・サーキットはパワーセンシティビティが高く、エンジンパワーがラップタイムに及ぼす影響が大きい。ホンダやフェラーリら他のマニュファクチャラー達と比べて、メルセデスPUの改善幅が限定的という可能性がある。
対照的にスクーデリア・フェラーリはラップタイムの損失を僅か0.541秒に抑え、頭ひとつ飛び抜けて競争力を改善させた。昨季の跳馬は車体・パワーユニット双方で大きく劣っていただけに、改善の余地もその分だけ大きい。
2番目に続いたのはアルファロメオで、これもフェラーリ製PUの大幅改善を裏付けるものと言えそうだ。