ガスリー、“予選15分前のチェス”から始まった衝撃初ポール「どん底から世界の頂点へ」アルピーヌの進化とライバルの誤算

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予選開始のおよそ15分前、ピエール・ガスリー(アルピーヌ)はオンラインチェスでジョージ・ラッセル(メルセデス)を打ち負かしていた。そしてコース上でも、再びラッセルにチェックメイトを宣告した。

9月5日(土)にモンツァ・サーキットで行われた2026年F1第13戦イタリアGPの公式予選。ガスリーはQ3最後のアタックで1分21秒786を記録し、ラッセルをわずか0.060秒差で退けてキャリア初のポールポジションを獲得した。

F1参戦190戦目にしてようやく手にした初ポールだった。初ポールまでの出走数としては、2022年のサウジアラビアGPで215戦目に達成したセルジオ・ペレスに次いでF1史上2番目に長い。ラッセルが圧倒的な本命と目される中での劇的な結末だった。

キャリア初のポールポジション獲得を喜び、チームメイトのフランコ・コラピントと抱き合うピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)Courtesy Of Alpine Racing

キャリア初のポールポジション獲得を喜び、チームメイトのフランコ・コラピントと抱き合うピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)

予選15分前のチェス対局、コース外でもラッセルを撃破

予選に先立ちガスリーは、ラッセルとのオンラインチェスを楽しんでいた。その前日のドライバーズ・ブリーフィングで、互いにチェスにハマっていることが分かったのだという。この対局はパフォーマンスコーチのベン・ソーンが見守る中で行われた。

「予選が始まる前から、かなり自信があったんだ。次々にジョージの駒を取っていたからね」

その様子を見ていたソーンから「ここではジョージに勝ってるけど、数分後にはやられるぞ」と言われたガスリーは、思わず「ふざけんなよ」と悪態をついたという。

「でも結果的にはうまくいった。楽しかったよ。僕らはかなり負けず嫌いだからね。コース上でもコース外でも、できるところでは何かしら勝負をつけたくなるんだ」

一方のラッセルも、「チェスでは彼に負けたから、『予選では僕が勝つだろう』って思ってたんだけど、御覧の通り、またしても彼にやられてしまった」と笑顔を見せた。

誰もが予想しなかったポールと歓喜

この日のガスリーのポールポジションを予想していた者は、控えめに言ってもパドックの中にはいなかったことだろう。実際、ガスリー自身も、アルピーヌもそうだった。チームの当初の目標は、あくまでもQ3進出だった。

だが、ガスリーはQ1をトップタイムで通過すると、Q2でも4番手を記録し、Q3最初のアタックでも3番手をマーク。そこで初めてガスリーの中で“可能性”が現実味を帯び始めた。

「みんな知っての通り、モンツァは少し特殊なサーキットだけど、それでも間違いなく今日の結果は僕らの予想を超えていた」とガスリーは振り返る。

「ペースは今朝の段階から良くなっていたんだ。FP3から予選にかけて、周りの連中より上手く前進できたと思う」

「それでも、Q1でトップに立ったのには少し驚いたよ。目標はQ3だったからね。でもQ2で4番手、Q3最初のアタックでも3番手になって、そこで『これは本当にチャンスだ』って思ったんだ」

キャリア初のポールポジションを獲得し、マシンの上で人差し指を掲げるピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)Courtesy Of Alpine Racing

キャリア初のポールポジションを獲得し、マシンの上で人差し指を掲げるピエール・ガスリー(アルピーヌ)、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)

最終アタックでは、アスカリ・シケインから最終アルボレート・コーナーにかけて文字通り限界まで攻め切った。各セクターで全体ベストを記録したわけではなかったが、1周を見事にまとめ上げた。

「多分、『本当にチャンスだ』って感じたのは今回が初めてだったと思う。持てるものを全て出し尽くそうと思った」

「もう、ほとんど何も残っていなかったと思う。フィニッシュラインを越えた時、報われるラップになるとは思っていたけど、まさかポールにまで手が届くなんてね!」

荒れた天候を背景に、予選で大番狂わせが起きることは少なくない。だがコンストラクターズ選手権6位と苦戦するアルピーヌとガスリーが、この日のモンツァで成し遂げたのは、真っ向勝負の末のポールポジションだった。

驚愕ポールの背景:ライバル自滅の中で光った完成度

アルピーヌA526は週末を通してストレートで高い競争力を発揮していた。車体後方に搭載されているのは、昨年までのルノー製パワーユニット(PU)ではなく、フィールド最強と評価されているメルセデス製PUだ。

低ダウンフォース寄りの空力特性を持つA526はモンツァとの相性が良く、前戦オランダGPで投入したアップグレードによってベース・パフォーマンスも向上していた。

チーム側も見事な戦略的判断を下し、そしてそれを完璧に遂行した。ポールを決するQ3の最終アタックでガスリーは、全10台が連なる隊列の後方から2番目という、トウの効果を最大化するうえで有利な位置につけていた。

モンツァ・サーキットの縁石沿いを走行するピエール・ガスリー(アルピーヌ)のA526、2026年9月 F1イタリアGPフリー走行Courtesy Of Alpine Racing

モンツァ・サーキットの縁石沿いを走行するピエール・ガスリー(アルピーヌ)のA526、2026年9月 F1イタリアGPフリー走行

一方、ライバル勢が最終アタックをまとめ切れなかったことも大きい。

ラッセルはチームメイトのアンドレア・キミ・アントネッリからトウを受ける予定だったものの、アウトラップ終盤のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)を交えた位置取りによって、その目論見は崩れ去り、フェルスタッペンから約1.5秒後方でアタックを開始する羽目になった。

ラッセルはこれを「理想的じゃなかった」と振り返り、フェルスタッペンとの一件に不満を示したが、同時に「それでピエールが成し遂げたことの価値が下がるわけじゃない。彼らはずっと速かった。だからピエールのことは嬉しく思っている」と素直に称賛した。

フェラーリ勢もQ3で、シャルル・ルクレールが先行してコースインした一方、ルイス・ハミルトンはまだタイヤを装着しておらず、トウを活用するうえで理想的な位置を確保できなかった。

また、マクラーレンのマシンは空力効率という点で弱点を抱えており、さらにはリアム・ローソン(レッドブル)への“不可避の妨害”により、オスカー・ピアストリはグリッド降格ペナルティを受けた。

ランド・ノリスは最終アタックでピアストリのトウを受ける予定だったが、ピアストリは第1シケインでロックアップ。ノリスの走行を妨げただけでなく、トウを与えることもできなかった。

「どん底から世界の頂点へ」 表彰台剥奪の失望を越えて

アルピーヌにとって今週末は、感情が大きく揺れ動いた数日間でもあった。

イベント初日の金曜日には、6月のモナコGPでガスリーに科された2件の5秒ペナルティがFIA国際控訴裁判所(ICA)の裁定により復活。ガスリーは一度は取り戻していた3位表彰台を再び失った。

アルピーヌのマネージングディレクターを務めるスティーブ・ニールセンはこう語る。

「2、3日前、我々はどん底にいた。それがわずか2日で世界の頂点に立ったんだ。本当に驚くべきことだ。この瞬間をしっかり味わい、最大限生かさなければならない」

「ピエールは一流だ。マシンを与えれば、必ず結果を出す。我々は昨年、何度かそれができなかった」

「今年も常に競争力のあるマシンを与えられてきたわけではないが、与えられた時には結果を出してきた。特にシーズン序盤はそうだった」

「チームが立ち直り、彼がよく知るコースで結果を出す姿を見ることができて本当に嬉しい。彼はこの近くのミラノ在住だからね。本当に素晴らしかった」

ピエール・ガスリーの初ポールポジション獲得にガレージで拳を突き上げて歓喜するアルピーヌのチームスタッフ、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)Courtesy Of Alpine Racing

ピエール・ガスリーの初ポールポジション獲得にガレージで拳を突き上げて歓喜するアルピーヌのチームスタッフ、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)

2連勝で臨む決勝、初優勝の地でキャリア2勝目へ

ガスリーにとってモンツァは、2020年にF1キャリア唯一にして初めて優勝を飾った場所でもある。6年後、その同じ舞台で今度は初ポールを手にした。

フランス人ドライバーのポールとしては、1997年イタリアGPでのジャン・アレジ以来の快挙であり、アルピーヌにとっても初のポールとなった。エンストンを本拠とするこのチームの前身まで遡っても、2009年ハンガリーGPでのフェルナンド・アロンソ以来となるポールだった。

14番手で終えた初日の段階からガスリーは強気だった。だが、決勝に向けては現実的だ。金曜日のロングランでアルピーヌは、トップチームと争えるだけのレースペースを示すことができていない。

「もちろん、周りの連中と同じレースペースがあるわけじゃない。でも、昨日から今日にかけてはさらにペースを引き出せたように思う」とガスリーは語る。

「だからもちろん、全力を尽くして、そのうえでどうなるかだね」

キャリア2勝目を目指すガスリーの後方には、2番グリッドのラッセルに加え、2列目に繰り上がったフェラーリ勢も控える。

予選前のチェスから始まったガスリーとラッセルの勝負は、ガスリーの2連勝で幕を閉じた。日曜のモンツァでの3度目の勝負の行方に注目が集まる。

記念盾と共に初ポールポジションを喜ぶルノーCEOのフランソワ・プロヴォ、アルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーを務めるフラビオ・ブリアトーレ、ピエール・ガスリー、フランコ・コラピント、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)Courtesy Of Alpine Racing

記念盾と共に初ポールポジションを喜ぶルノーCEOのフランソワ・プロヴォ、アルピーヌのエグゼクティブ・アドバイザーを務めるフラビオ・ブリアトーレ、ピエール・ガスリー、フランコ・コラピント、2026年9月5日(土) F1イタリアGP予選(モンツァ・サーキット)


2026年F1イタリアGP予選ではピエール・ガスリー(アルピーヌ)が驚愕のポールポジションを獲得。2番手ジョージ・ラッセル(メルセデス)を0.060秒差で退けた。角田裕毅(レーシング・ブルズ)はQ1敗退に終わった。

決勝レースは日本時間9月6日(日)22時にフォーメーションラップが開始され、1周5793mのモンツァ・サーキットを53周する事でチャンピオンシップを争う。レースの模様はフジテレビNEXTで生配信・生中継される。

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