主役は俺たちだ―サインツ、F1中継を批判「セレブやカノジョばかり」─見過ごされた怒涛のオーバーテイクショー

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カルロス・サインツ(ウィリアムズ)が、現在のF1中継の在り方を批判。コース上で繰り広げられる激しいバトルが、セレブリティやドライバーの恋人たちのリアクションショットに埋もれているとして、現状の演出方針に異を唱えた。

映されなかった「怒涛の追撃劇」

前戦シンガポールGPでサインツは、DRS規定違反に伴う予選失格により最後尾スタートを余儀なくされたものの、レース終盤に見事なオーバーテイクショーを見せ、10位入賞を果たした。だが、この劇的な追撃劇を視聴者がライブで目にすることはなかった。

さらに、フェルナンド・アロンソ(アストンマーチン)も残り2周でルイス・ハミルトン(フェラーリ)との40秒差を0.3秒にまで詰めるという緊迫のバトルを繰り広げていたが、こちらも中継では一切映されなかった。

国際映像は、すでに順位が固まりつつあったマックス・フェルスタッペン(レッドブル)とランド・ノリス(マクラーレン)の2位争い──オーバーテイクの可能性がほとんどない展開──に長い時間を割き続けた。結果、スリリングな攻防は画面外で終りを迎えた。

国際映像「時代遅れのアプローチ」

F1放送では、各国の放送局がセッション前後やスタジオパートを独自に制作する一方、コース上の映像はフォーミュラ・ワン・マネジメント(FOM)が一元的に制作している。つまり、日本でもヨーロッパでもアメリカでも、世界中のF1ファンが同じ映像を見ている。

このFOM制作の国際映像には、レース中にガレージで観戦するドライバーのガールフレンドや家族、パドックを訪れたセレブリティのリアクションショットがしばしば挿入される。新規ファン層の獲得を狙う演出とみられるが、サインツはそれが時に過剰だと指摘し、”時代遅れのアプローチ”と断じる。

本質からの乖離「主役はセレブや恋人じゃない」

サインツはスペインのスポーツラジオ番組『El Partidazo de COPE』に対し、「そういう映像があっても構わないけど、大事なことを見失っちゃダメだと思う。僕に言わせれば、セレブやガールフレンドたちを映しすぎだ。昔はそういうのが面白いと感じられた時代があったんだろうけどね」と語った。

「過去にうまくいった経験があるのであれば、オーバーテイクシーンやレースの緊張感が高まっている瞬間にリアクション映像を入れたくなる気持ちは理解できる。でも、それは“競技そのものを尊重した上で”、重要な場面を常に映している場合にのみ許されるべきだ」

「でも先週末は、終盤に僕が決めた4回か5回のオーバーテイクのどれもが映ってなかった。フェルナンドがルイスを追い詰めた場面も同じだ。多くのシーンが見逃されていた」

サインツの言葉には、プロフェッショナルとしての矜持が滲む。命を懸けて戦うドライバーこそが主役であり、その攻防こそがF1の本質だという信念がある。

また、パドックの現状についても言及した。

「最近はパドックにVIPが多すぎて、歩くことすらできないときがある。だから僕らは自転車やスクーターで移動しているんだ。そうしないと人混みで動けなくなってしまうからね」

商業的成功とエンターテインメント性の追求は確かに新しいファン層を呼び込んだ。だが、それはモータースポーツ本来の価値を損ねていないだろうか――このサインツの問いかけは、華やかさの裏に埋もれつつあるF1の“本質”を、今こそ見つめ直すべきだという警鐘と言える。

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